Day7  📖【末摘花】口コミで恋すると有り得るわけで……


 皆さま、こんにちは。今日も『源氏』ツアーへのご参加ありがとうございます。今日は物語でも異色? のコメディーパート【末摘花】へのご案内です。お楽しみくださいね。

 前半に出てくる夕顔や六条御息所ろくじょうのみやすどころはどちらも源氏の恋人ですが、夕顔は怨霊に憑りつかれて亡くなってしまいます。空蝉うつせみも元カノ、といったところでしょうか。ちなみに空蝉サンは人妻です。


 それではトリップ出発、です。


 今日も『源氏物語』に行こっ!


✈︎✈︎✈︎

【超訳】源氏物語episode6 雪の朝の衝撃     末摘花


源氏 18~19歳 紫の君 10~11歳


―― 深窓の令嬢? ――

 いつになっても源氏は夕顔を失ったことが残念な様子なの。正室の葵の上はあいかわらず冷たいし、付き合っている六条御息所ろくじょうのみやすどころは疲れるので、一緒にいるのが楽しくて癒し系だった夕顔のことばかり想い出しちゃうのよ。おまけに空蝉のことまで思い出してみたりして未練タラタラのある日のことだったのよね。


 大輔の命婦たゆうのみょうぶという女房(源氏の幼馴染)があるお嬢さまの話をするの。彼女は宮家の娘なので皇族で、大輔の命婦がときどき様子を見に行っても、身分が高いので、対面も御簾みす越しで顔を見たことがないんですって。お父様の宮様は亡くなられていて、特に誰とも付き合うこともなく、琴だけをそばに置いてひっそりと暮らしているっていうの。


「へ――、琴が上手な深窓の令嬢ねぇ」

 いつものクセですぐに女の子に興味を持ってしまう源氏。一回その琴の演奏聞いてみたいな――と大輔の命婦にリクエストするの。

 大輔の命婦がセッティングして源氏をお屋敷に呼んで姫に琴の演奏をしてもらったんだけど、これがそんなには上手じゃなかったのね。下手でもないんだけど、源氏の君のお琴の方がはるかに上手だったから大輔の命婦が機転をきかせて演奏を終わらせちゃったの。

「なんだかあんま聞こえなかったし、あれじゃ上手いかどうかわかんねぇよ」

 源氏は大輔の命婦に文句を言いつつも、ホントのところはもっと近づきたいって煽られちゃったみたい。


―― VS 頭中将 恋の争い ――

 ふと宮家の庭を見ると人影があるのね。誰かと思えば頭中将とうのちゅうじょう。源氏がどんな女子と遊んでいるのか、つけてきたんですって。結局ふたりは頭中将の実家の左大臣家に行くことにしたの。源氏の正妻の葵の上は頭中将の妹で、ふたりは義理の兄弟でもあったのね。


 左大臣家でも葵の上のところではなく、頭中将とついつい話しこむ源氏。

(やばいじゃん、頭中将もあの姫を狙ってんのかよ、早くしないと……)

 頭中将も頭中将で、これだけモテる源氏がここまで入れ込んでるなんて絶対にいいオンナだとばかりにラブレターを出し始めたの。


「ちょっとさ、文なんか送ってみたんだけどさ、もったいつけて返事が来ないんだよ。オマエんとこは?」

 なんて頭中将が源氏に聞いてきたの。やっぱりコイツも狙ってんのかと源氏はニンマリするの。

「本命じゃねぇしな、返事来たんだかどうたか覚えてねぇわ」

 そんな風にはぐらかして頭中将をけん制したの。


 宮中の2大アイドル、光源氏と頭中将から文が届くという有り得ない状況に姫本人はもちろん、大輔の命婦すらビックリ。でも極度の恥ずかしがりで姫はどちらにも返事を出さなかったの。


 いつになっても返事は来ないし、頭中将には取られたくないし、焦った源氏は大輔の命婦を味方にして、会わせてもらえるよう段どってもらうの。

「絶対お部屋には入らないでくださいね。障子越しですからね」

 源氏の性格をよく知っている大輔の命婦が何度も何度も念を押して屋敷へと連れて行ったの。

 障子越しに源氏は会えて嬉しいとか、今までずっと会いたかったんだとかいつも通りに口説くんだけど、まったくレスポンスがないの。

「ちょ、ホントにそこにいる?」

 そんなことを言いながら結局源氏は姫の部屋の中に入っちゃったの。


―― 素顔の姫君 ――

 大輔の命婦との約束も破り、姫の部屋に入ってしまった源氏はそのまま姫と一晩を過ごして、明るくなる前に二条院いえに帰ったの。首をかしげながら。あまりに反応がなかったのね。女の子と一夜を過ごしたってカンジじゃなかったみたい。

 一応、一夜を過ごした女の子に贈る後朝きぬぎぬの歌も贈るんだけど、やっと届いた返事の字も上手くなく、和歌の出来もイマイチで「やっちまったかな」と源氏は滅入ったの。


 まだ少女だけど愛くるしい紫の君と遊んであげたりしていると、彼女の所に通うのもぶっちゃけ面倒くさいんだけど、まぁ手は出してしまったので、時々は通うことにするみたい。

 ある雪の降った朝、戸を開けて降り積もった雪に反射する太陽の光のもと、源氏は初めて姫の顔を見てボーゼンとするの。可愛くなかったのよ。特に鼻が高いんだけど、先が曲がっていて赤かったの。おまけに着物の上に毛皮を羽織っていたのもおばあさんみたいに見えたの。


「あああ、朝日で軒のつららは解けたのに、ど、ど、どうして氷(キミ)は溶けないんだろう……」

 そんな歌を源氏は詠むんだけど、姫君はとっさに返歌ができなくて困っていて、見ているのもツラくて家に帰るの。


 美人じゃないけどフツー程度なら源氏もここまでの衝撃は受けなかったんだけど、普通でもない容姿に可哀想になっちゃったみたいなの。でもここからが源氏の優しいところなんだけど、美人じゃないから、なかったことにして知らん顔ということはしないのよ。そこはきっちり責任をとって生活の面倒を見てあげるの。もう色恋はなしで付き合っていこうぜというカンジかしらね。

 元々が皇族の姫でスレていない素直な性格だから、源氏も「ま、いっか?」ってことになったみたい。


 そんな源氏に姫もようやく心を開き始めて、お正月の支度にと源氏に和歌と衣装を届けるの。


~ からころも 君が心の つらければ

  たもとはかくぞ そぼちつつのみ ~

(あなたが冷たいからわたしのたもとはこんなに濡れちゃってるの)


 上手でない和歌と野暮ったい衣装の贈り物に源氏はこんな歌を詠んだのよね。


~ なつかしき 色ともなしに 何にこの 末摘花を 袖にふれけむ ~ 

(大して好きでもないのに、なんであの子と付き合っちゃったんだ?)


 これ以来、宮家の姫のことを末摘花の君と呼ぶことにしたの。末摘花というのは紅花のことなのね。紅花=赤い鼻ってことね。



―― 可愛い紫の君 ――

 紫の君とは兄妹のような仲の良い関係だったの。まだ紫の君が幼いからさすがに結婚はしてないの。人形遊びをしているときに源氏はわざと紅を自分の鼻に塗ってふざけるの。


 紫の君が源氏の鼻が赤いままだったらどうしようと焦っているの。源氏も紅がとれないと言って紫の君をからかうの。心が癒されて和むひとときを源氏は満喫していたのね。




~ なつかしき 色ともなしに 何にこの 末摘花を 袖にふれけむ ~ 

源氏宰相の中将が末摘花の君のことを想って詠んだ歌


第六帖 末摘花




✈︎✈︎✈︎


 源氏物語で最も微笑ましい巻でしょうね。この頃の恋愛形式だと充分に起こりうることです。会ったこともない人を好きになって、気持ちだけ盛り上がって、暗い夜に暗いお部屋でデートして、明るくなってからあらビックリっていうね。

 対照的に幼くても可愛らしい紫の君が源氏の癒しになってきています。こちらは幼いうちに自宅に連れてきているから(略奪まがいだったけれど)、最初から顔を見ていますね。そのお顔はあの憧れの藤壺の宮さまとそっくりなんですもんね。こちらがこの時代では珍しいパターンでしょうね。というか、こんな犯罪めいたこと許されていたのかしらね? まあ、フィクションですけれどね。

 

 明日は第7帖「紅葉賀」の【超訳】です。微笑ましい6帖とは対照的に切なさの極致のお話です。お楽しみに。


 明日も『源氏物語』への旅をぜひご一緒に。


『源氏ツアー』Day7に来てくださり、どうもありがとうございます。


✨明日の予定

Day8 【紅葉賀】秘めた想い

集合時間、集合場所:皆さまのご自由でオッケーです。

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