東直子の短歌の時間

 ワタクシの場合、短歌結社に所属していないし、歌会などに参加する機会も持てず、短歌仲間も近くにいない。よってひたすら他人の短歌を読むか、投稿先で採用された短歌の選評を読むことが自分にとっての短歌修行になっている。選評、ということに関しては、新聞歌壇の場合たいがい良かった作品一首か二首しか付かないので、自信作が落ちた場合、またあまりいいと思えない作品が選ばれている場合、ひたすら「なぜだ……!」と頭を抱え、考え込むことになってしまう。

 「公募ガイド」という、色んなジャンルの公募情報を集めた雑誌があるのだが、これに歌人の東直子さんの短歌コーナーが連載されている。ここでは毎回、違ったテーマごとに集められた短歌十五首が掲載される。上から特選、秀逸、佳作、選外佳作と続き、佳作までの九首に選評が付く。そのため、選者が一体どこを見て作品を評価しているのか学ぶには、とても参考になる。

 そして、五月号。テーマ「波」の回に、「選外佳作」で掲載されたワタクシの短歌がこれ。


草笛を吹くかのようにピィピィとさざ波立てて辛い酒飲む


 ワタクシ、自分の作品が印刷されて人に読んでもらえることが嬉しいので、一番下の選外佳作でも紙面に掲載されて、十分満足だった。……のだが……。

 ちょっぴりショッキングなことがあった。「波」というお題に対し、「さざ波」という言葉を入れて詠んだ作品が他に二首あったのだ。そしてそのうち一首は、ワタクシの作品と同じく、お酒(多分)を飲むシーンを詠んでいる。そしてそのもう一首の方は、ワタクシのより上の佳作。ナ、ナゼダ~!!

 選評を読んで、なんとなく納得がいった。佳作の方の作品で評価されている点が、確かに私の作品には欠けている。ちょっぴり悔しい、という思いが込み上げてきた。

 このコーナーでの、ワタクシのこれまでの掲載作は三首。


アルバムを開けば無数の今がありこちらの今に笑いかけてる

(テーマ「今」・秀逸)


中国と四国の間クッキーの破片みたいな島が散らばる

(テーマ「島」・選外佳作)


 このコーナー、これまで自分の中では自信作だと思って投稿した作品も相当落ちており、載るのはかなりハード、という印象がある。一方で毎回のように掲載される人もいる。そしてその常連さん達はとてもうまい。実力の差を感じさせられるばかりである。



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