03 洗濯機

苦い青春は

まとめて丸めてクシャクシャぽい

スイッチ1つ押すだけ

あとは本を読んで音楽に浸って

甘いものを食べたら

できあがり


とろける幸せな思い出も

たまに一緒に回してしまう

それの最後が途切れたら

あの心地よい記憶もまとめて洗わないと

やってられないから


でも

ふとした瞬間

ものすごい引力で返ってくるんだ

どれだけ大切な時間だったか

あの人はどんな顔して笑っていたか

自分はどれほど夢中になっていたか

甘くて柔らかくて

どうしようもないほど大切な時間

今の自分を形成するひとかけら

大事なかけら


スイッチ押すのは簡単で

見た目はきれいになっても

どこか寂しく残ってたのは知っていた


大丈夫


大丈夫じゃない


今さら止めても何も変わらない

自分が変わるしかない

時間はますます進む

甘くない


せめて、いとおしく思えるように

どうか、大事に抱えられるように

無理に踏み出すことなんてしない

ただただ、向き合えるように

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