繋ぎ止めたい想い

プライス

Prorogue

Prorogue Ⅰ

ある夏の夕方、昼間の暑さが嘘のように感じるほど涼しくなった頃、俺は公園にいた。

そこには、3〜4人の中学生あたりの男の子と泣いている女の子がいた。

「おーい化け物女泣いてるぜ。」

「化け物も泣くんだな。」

「人間の真似をするんじゃねぇーよー」

小学生故なのか、包み隠さず悪意を女の子に振りかざす男の子たち。

不謹慎ながらも俺は好奇心に負け、その女の子がどんな子気になり、その姿を見た。

そこには、病的に白い肌にここの付近の地域には、見かけない外国の人のような整った顔。なにより目立っているのは老人でもないのにどこまでも白い髪の毛、そして、見つめていたらどこまでも見透かされているように感じる淡紅色の目を持っていた。

なるほど、確かに確かに男の子たちが化け物と言うのも無理はない。自分もあの事を知らなければそう思っていたであろう。

俺はそこで、医者である父親が話していたことを思い出した。

先天性白皮症または一般的にはアルビノと呼ばれている病気がある。父親が受け持っていた患者さんのなかにこのアルビノを患っている人がいて、俺にその話を聞かせてくれた。何でもその人もその髪と目の影響で少し差別を受けていたため、直したいと思い父親の元に訪れたと言う。

しかし、現在アルビノには治療法がなく、医者ができることは対症療法しかなかった。

そのときのことについて父親はこう言った。

「俺はあのときほど、自分が無力だと感じたことはない。確かに俺は患者全員の病気を直すことができるなどと思っていない。でも目の前に患者が助けを求めているのになにもできないということはなかった。だから悔しかった、でも俺は諦めないからいつか必ず治療法を見つけてやる。」

そういって父親は、医者としての仕事をしながらも、アルビノについての研究を大学の同僚たちと一緒に研究をしている。

そんな話を聞いていたからというのもあるが、やはり男としていじめられているのを黙って見過ごすことなどできないと思い、俺は彼らに話しかけた。

「おい、何してるんだ。」

「ああ?なんだよお前邪魔すんなよ。」

「そうだー、それともお前もこいつになにか言いたいのか?」

「言っちまえって、この化け物ってな」

「「「ぎゃはははーーーーー」」」

女の子はそんな彼らと俺を見てどうしようなく諦めた目でこちらを見ていた。

恐らく女の子は、俺もこいつらと一緒なんだと思われているのだろう。

「ああそうだな、確かに化け物だな」

そういって俺は、女の子に近づいてこう言った。

「ちょっと目を閉じてあと耳も塞いでくれるかな?」

そういった俺に女の子は少し震えながらも、言うとおりにしてくれた。

「おっなんだ!何て言ったんだ?」

そこで男の子の1人が俺に話しかけてきた。

「黙れよ。」

そういって俺は近くにいた男の子を引き寄せ羽交い締めにした。そして俺はそいつの耳元でこう言った。

「知っているか、無知っていうのは1番怖いことなんだ。だからっていって無知っていうのは悪いことじゃないそこからまた新しいことを学ぶことができる。でも、1番悪いのはな」

そういいながら俺は、徐々に腕の力を強めていった。

「無知だと知らずに好き勝手にすることなんだよ!お前らこの子が病気だということも知らずに化け物とか言っていたよな?俺から見れば、そういう風に決めつけていじめて笑っているお前らの方がよっぽど化け物だよ」

「やっ…やめろ……くっくるしい……。」

「おい、こいつやべぇーぞ」

「やめてやれって死ぬぞ!」

母親に習った稽古のお陰か気絶するかしないかの、境界がわかる俺は、気絶する前に羽交い締めをとき、見ていた男の子たちの前に投げた。

「次はこれじゃ済まさない、言葉っていうのは、時には暴力になるんだ。それを知れただけありがたいと思え、もう2度とこんなつまんないことをすんな!わかったらさっさと消えろ」

そう言うと彼らは怯えながらも公園から逃げるように去っていった。

「はー、こりゃ母さんに報告したら絶対拳骨だよなー。」

そう思った俺は、この後にあるであろう不幸に思わずため息を吐くのだった。

「もういいぞ、あいつらは帰った。」

そういって改めてその女の子を見た。

「もういいの?」

そういって女の子いや、彼女は泣いたあとのせいか、少し赤くなった目を俺に向けた。

なんと言うかホントに不謹慎ながらも俺はそんな彼女の姿に少しドキッとしてしまった。

いつか父親がいっていた、女の泣いたあと上目遣いは最強と言うっていたことが正しいのであったのだと、改めて認識した。

「おっおう、大丈夫か?ほらこれ使え」

といって俺はポケットのなかにはいってあった、ポケットティッシュを彼女に渡した。

それを受け取った彼女は、ゆっくりと受け取り目もとを綺麗にした。うん、女の子の泣いている姿はいつまでも見るべきではい。俺はまた一つ大人になったような気がした。

「ほら、立てるか。」

そういって俺は、彼女に手を差し出した。その手を彼女は安心したのかすぐに握り立とうとした。

「ありがとう助けてくれて。」

「いや別にいいよ、ただ見ていられなかっただけだしね。」

「ううん、それでも助かった。でもあまり私に関わらない方がいい。」

「それって、やっぱりその目と髪が関係しているのか?」

「うん、お父さんに病気なんだって言われて私は納得したんだけど、私の周りのみんなはいくら私が言っても病気だって信じてくれない、そして化け物とか言われたり、話したら呪われるとか言われてるから。だから、あまり関わらない方がいい。」

そういって彼女は、また泣きそうな目をしながらうつむき始めた。

「それがどうした?」

「えっ?」

「自分が納得してるんだから別にいいじゃないか、他の連中が化け物とか呪いだのいってるようだが、そいつらは、なにも知らないただのバカだ。そんなやつ放っておけ、気にするな。それにな」

そういって俺は彼女の髪を傷つけないように、触った。

「こんな可愛くて、きれいな髪を持ってる女の子が化け物な訳ないだろ?」

俺は、笑いながらそう言った。

「ふぇ?………えっえーと、あっありがとう」

そう言うと彼女の頬のその白い肌が赤くなっていった。

「おう、だから自信をもっていいと思うぞ。」

「うん、わかった。」

「でもそうだな、今のままじゃ少し心配だな。夏休み中は俺と遊ばないか?」

「えっ?いいの?」

「ああ、いいぞ俺も女の子と遊べるから嬉しいしな。」

「うれしい、ありがとう!」

そういって彼女は何の曇りのない笑顔を俺に向けてくれた。

「うん、やっぱり笑ってる顔の方が似合ってるよ」

「そっそう?えへへ、だったらこれから意識していくね?」

うん、やっぱり可愛い。

「さて、今日は帰るか、疲れたし、じゃあ明日昼にこの公園にな」

「うん、わかった!」

その返事を聞いた俺は、家に帰ろうとした。公園の出口に歩こうとすると、俺の服の裾を引っ張られた。

「ん?なんだ」

「えーと、名前を教えてほしいかも?」

「ははっ、何で疑問系なんだよ、俺の名前は如月 真人だ。真実の真に人って書いて真人だ。」

「如月 真人君。」

「そうだ。」

「真人君って呼んでもいい?」

「おういいぞ、俺の幼馴染もそう呼んでるしな。」

「へぇー真人君、幼馴染がいるの?男の子?」

「いや、女だ。またあいつもかわいくてな、いつも一緒だったんだ。まあでも今日はあいつは家の手伝いとかで来れなかったんだがな。明日紹介するぞ?」

「へぇー、そっか女の子か、可愛いんだ。………私にモカワイイッテ言っテくれたの二。」

「ん?最後なんて言ったんだ?小さくて聞こえなかったんだが。」

「別に何でもないよ?あっ、私の名前は、今井 莉乃っていうの。改めてよろしくね真人君!」

「おうよろしくな莉乃」

そういって俺達は1度お互いに笑いあってから、公園を去った。



「……ゼッタイニワタサナイ…」

そう言ってさきほどの笑顔とはまるで違うものを、俺の後ろ姿が視界から消えるまで向け続けていたことに、俺は気づくことはなかった。


続く

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