第5話出港前夜

1949年 7月31日 厚木飛行場にて


明日いよいよ。北米への出撃がきまったわね。総司令から翌朝0900に横須賀沖にいる空母信濃に向けて移動せよという通知がきたわ。まあ、私たちなでしこ隊は戦闘機部隊になるわね。しかし攻撃隊の隊長があの日高だったとはね。予科練卒というのは伊達じゃあなかったということかしらね。まあ、あの人たちが乗る輝星という攻撃機は複座仕様の音速雷撃機というキャッチフレーズだったけれどね。まあ、実際は音速までは速度が出ない上にその速度で雷撃実験した時に着水の衝撃で魚雷のジャイロがお釈迦になって使い物にならないという実験結果が出た上、敵の対空砲火やレーダー管制による迎撃で雷撃はもはや過去の産物になったわね。で、急降下爆撃での爆弾搭載量では火力不足ということで雷撃と急降下爆撃機が統合されて攻撃機となったわね。で、流星艦攻はロールスロイス社製ターボブロップエンジン6500馬力のエンジンに置き換わって爆弾2トン搭載し30ミリ機銃搭載の攻撃機に生まれ変わったわね。

で、輝星はジェットエンジン搭載の攻撃機ということになるわね。

で、次世代の雷撃として誘導ロケット弾に置き換わったわね。まあ、対潜水艦の戦術もイギリスのヘッジホッグから派生した対潜弾や対潜水艦用短魚雷という兵器も出てきたからね。まあ、私たちが乗る戦闘機の空戦にしてもジェットでの戦闘は機体速度が早すぎるため従来の機関銃の発射速度では撃墜困難という結果となり。その対策として電気モータを使った回転銃身式機関銃が正式採用されて海軍、空軍のジェット戦闘機、攻撃機に搭載されているそうね。そのほかにも熱線誘導型空対空誘導弾やレーダー誘導式誘導弾、ほかにも空対空ロケット弾という武器もそろうことになったね。まあ、鳥を撃ち落とすのにライフルではむりだけど散弾銃なら落とせるの同じ理論になるわね。


それからパイロットの装備では戦略偵察機景雲などに使われている与圧服や攻撃機、戦闘機に使われている耐Gスーツといった以前の戦いではなかった装備が標準的になったわね。

まあ、景雲は高度22000米を約半日飛ぶという神の鳥というキャッチフレーズの機体だからね~。まあ、私も試作のテストで飛ばしたことがあったけれどそのときは高度16000止まりだったけれどね。それでも与圧服を装備していたからね。

なんでも与圧コックピットで酸素マスクしていた状態で高度13500を飛行中に突然与圧が抜ける事故が起こり哀れパイロットは死亡したという事故があったわね。まあ、日本の与圧コックピット技術が遅れていたので苦肉の策として与圧服と与圧面となる物を実用化していたそうね。それからは高度13000を超えるばあいは与圧服と与圧面の装備が義務付けられるようになったわね。まあ、その前に艦載機や戦闘機のばあい若干の与圧が掛かっているけれどそこまで上がる場合はだいたい酸素マスクを着用することが多いわね。まあ、巡航時にはマスクは必要ないけれど戦闘時には必要になるということになるわね。



そして解散した部隊の連中は家族達としばしの別れなどをしているようね。まあ、身寄りのない私は例によってどこも行くあてもないので厚木市内でしばらく食べられなくなりそうな物を腹いっぱい食いに行こうと思ったわね。


外出するために私は愛車陸王のエンジンに火をいれてしばし暖気運転をしていると後ろから意外な人物がやってきたわね。

「お姉さま。これから何処に向かうので」

「ん。そうね。とりあえず厚木の銭湯で垢を落してそれからとりあえず食事して映画見てひきあげるつもりだけどね。あんたたちはどうするのよ。ダージリン」

「聞くだけ野暮でしょ。どこも行くあてもないから。とりあえず基地の外のバーで飲んだくれるつもりよ。まあ、日本のビールは美味しいけれど本国のエールじゃあなくてドイツのラガーだからちょっと厳しいけれどね。まあ、ウィスキーは美味しいけれどね。姉さまもどうかしら」

「ん~。それもいいけれど、海外に行くからしばらく白いご飯と新鮮なお魚が食い納めになりそうだから久々に寿司屋に行こうと思うがあんたたちも行くか。まあ、生魚だから厳しいかもしれないが」

それを聞いたローズヒップが言う。

「わたしは是非ともご一緒させてもらいますわ。ダージリン様はどうします」

「それはいいアイディアね」

「そうか。じゃあ一緒に乗るかい」

という感じでダージリンとローズヒップのふたりは陸王に乗り込んできたんだなぁ。

まあ、ローズヒップがどさくさに紛れてあたしの胸をまさぐったりするのを感じて一言釘刺したわね。

「まさぐるのは結構だけど。あの世に行きたいなら止めませんぜ」

それを聞いた彼女はすぐにまともになってベルト掴んでいたけれどね。


そんな感じで厚木市内の銭湯に女三人が入ってきたのはいいけれど番台のオヤジも驚いていたろうね~。なんせ長身の大女と金髪美女の3人組が女湯に入ってくるんだからね~。

「親父さん。3人ね。風呂代は置いとくよ」

「毎度~。嬢ちゃんも随分とでかいね。で、その格好から見ると軍人さんかい」

「そうだよ。これから航海に出るからしばし広い風呂ともおさらばというわけさ。んじゃあそういうことで」

そんな感じでわたしは手馴れた手つきで背負いの雑嚢から手ぬぐい3つと石鹸を彼女たちに渡して脱衣カゴに脱いだ服を入れていた。

で、ダージリンたちも多数の目の中で脱ぐのが少し抵抗があったようね。まあ、ローズヒップは嬉々としてぬいでスッポンポンになっていたわね。

「ダージリン様。こうなったら覚悟を決めましょうよ。べつに男の目があるわけでもないし皆同性の方々ですよ。まあ、男がいてもどうせ子供だからべつに襲われるわけでもないしそれにダージリンだってバージンってわけでもないんだからさ~」

「ローズ。それは内緒よ」

そんな会話を聞いたわたしは違った意味で興味津々になったわね。

「ふーん。ダージリンも殿方とのまぐわったわけですか。で、どうだった殿方との目交いと女子の貝合わせとどっちがよかったのかしらね」

「それは・・・。どちらも良かったですわ。どちらもそれぞれに良さがありましてね。ですが私が捧げた殿方は呆気なく天に召されてしまいましたわ。結婚の約束までしていたのですが、どうも神々はそのような若者を気に入って自分のものにしたがるということですわね~」

それを聞いた私はこういう。

「なんと。それはざんねんだったわね。私の方はその~。なんだ。相変わらずの男知らずなんだよな。うん。年増なのは十分承知しているんだがあたしの経歴知った男たちが皆尻込みして逃げ出す始末なんだ。あたしは生き延びるためにあの英国本土を戦い抜いただけなんだけれどね~。どうも、死神と見えるようでね」

「そうでしたか。それはなんとも・・・」

そんな会話をしつつ私たちは銭湯の洗い場で体をきれいに磨き上げてきれいにしてから浴槽に身を投じて日々の疲れを癒していたわね。

で、風呂上がりに番台に座っていた婆さんからラムネを3本買ってダージリンたちに渡していたわね。

まあ、彼女たちも日本の艦船に乗っていたからラムネを知っていたようで手馴れた手つきで玉瓶の蓋を開けて豪快にラムネを飲んでいたわね。まあ、その姿を見ていたオバさんたちは驚いていたりでしょうがね。で、着替えた私たちはその足で商店街へと足をむけていたわね。

まあ、そこでいろいろと美味しい物を食したわけだよ。


そして明朝私たちは新たな戦場へと向かうことになったわね。





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