土砂降りの女

 律子は雨女だと言われている。


 確かに彼女がイベントに参加すると、高確率で雨だ。


 しかも冬は雪。スキーに行くと吹雪。


 噂は真実味を増し、彼女はいつしか誰からもお誘いを受けなくなってしまった。


「ああ。今、私の心の中に土砂降りの雨が降っているよ」


 律子はそう呟き、机に突っ伏した。


「でもさ、この前友達の結婚式に出た時、雨降らなかったじゃん?」


 夫が言う。


「あ!」


 ハッとする律子。そして彼女の中だけで謎は解けた。


「よく考えてみたら、雨に降られたり吹雪に遭ったりしたのって全部あんたが一緒の時じゃないの!」


「ええ? 俺のせい?」


 仰天する夫である。律子は憤然として、


「あんたが雨男だったのよ! どうしてくれるの、私の交友関係!?」


「おいおい……」


 激怒し始める律子に呆れる夫。


「じゃあ、離婚する?」


 脅かす夫。律子は真っ青になって、


「何でそんな事で離婚するのよ!」


 ベタ惚れで結婚した年下のダーリンと別れられるはずもない律子である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る