第2話(番外編)キララとツクシ

キララだけには、雑誌の対談コーナーもあり、「男女8人シェアハウス物語」について語れる特権があった。


そこでは、いつも「他の女のメンバーには虐められる事もあったり、悪口言われる事もあったみたいですが、それでも私はポジティブだし、皆の事大好きだし!」みたいなデタラメ言ってた。実際は、キララの素行が一番悪かった。


他のメンバーは、彼女からすれば全員ライバルなわけで、「早いうちからの新人潰し」という感覚だったのかもしれない。


また、あることない事も、週刊誌に裏リークして、自分が一番有益になるようにしていた。


キララと、週刊誌記者の誰かが繋がってる・・・。というか、週刊誌記者の年増の親父がキララにお熱らしく、キララは利用していると聞いた。


やがて、シェアハウス物語で共演する高田君という新人イケメン俳優とも、初面会。


想像以上に、クールな雰囲気の涼しげな今時のイケメンだったがチャラチャラしてなくて、何処か影のある人だった。


一目みて、正直タイプだった・・。世の中に、こんなに美しくて澄んだ若者がいたなんて。でも、私の容姿じゃどんなに頑張っても振られ役しか無理よね。


ブスの宿命。それは、イケメンに例え出会えて恋できたとしても報われないことだ。ただ、見てるだけ。憧れてるだけしか出来ないということだ。


どんなに目の前に喉から手が出るようなイケメンが現れても、私のようなブスはキスすることは愚か、抱きしめることも出来ないのだ。


唯一狙えそうなのは、番組の打ち上げで一緒にボーリングでストライク出したら、ちょっとだけイェーイ!ってハイタッチ出来るかもしれない。でも、ほんの。ほんのちょっとだけ・・。


欲を出せば、ガーターとかワザと出したら手取り足取り腰取り教えてくれるかな・・・。って、よからぬ妄想位しかブスには許されないのだ。


いくら役柄とはいえ、一目惚れした高田君に振られつづける役をしなければならないなんて。しかも、台本には私が無理やりパンツやブラを見せて


「高田君!私の何がいけないの!?ブスだから?貧乳ガリ尻だから?ひと夏の思い出として、せめて抱いてよ!一晩!一晩でいいから!」と迫るシーンまである。


キララが、突然ドアを開けてショックで飛び出して、高田君が、「ちょ!待てよ!」と止める。そして、キララを抱きしめるシーンもある。


なんかもう。全力で、ふざけんな。って、感じだった。すでに、高田君が来るなりキララは突然人が変わったかのように、ぶりっ子キャラに。いつものワガママ、スタッフ泣かせのキャラ封印。


「高田くぅーん。私、この台本の文字わかんないんですぅー。」とか言って、甘えてる。私達が台本覚えて来なかったら、無茶苦茶文句言うくせに。


おまえ、覚えて来ないどころか、漢字も読めねーのかよって心で突っ込む。これが、子役時代から売れっ子女優の実力なのだろうか・・。


「男はね。一人で生きていける感を出す女よりも、


自分の力が必要って思った時に初めて守ってあげたいって思うものなのよ。この子は、俺がいないと生きていけないって思わせる。


例え、作り話でもいい。仲良くなりたいと思えば、相談話を持ちかけるの。甘えたい時は、素直に甘えられる女が最終的に得をする。


女としてこの世に生を受けたからには、

女としての特権を、とことん利用しなくっちゃ。」


キララの口癖だった。そうやって、この女は色んな男に媚を売って這い上がってきたのだろう。


例えワタシじゃなくていい。でも、あんな素敵な高田君にキララだけは絶対に渡したくない!

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