「採点の時間」(9)
スペードの周囲から火柱が上がる。
「……くっ!」
ナナは両手両足を地につけて、文字通り脱兎の如く駆け出すが、そんな体制で速度が出る筈もなく、ゆっくり歩を進めるスペードと、そこかしこから噴出する火柱によって隅にどんどんと追いやられてしまっている。
落ち着け。今できることは何だ。
ナナは言った。魔法服で覆われているところは重火器であっても傷をつけられないと。そうしてこうも言っていた。――そうでないところは消し炭になる。
エリートかなんか知らんが、いくらスペードとはいえ、スターゲイザーを食らって無事で済むはずがない。魔法服で受けたか、燃やしたか、とにかく防御する必要があったはずだ。
……これだけは使いたくなかったが、仕方がない。
「スペード!」
俺はデザートの手を振り払い、二人の元へと駆け寄る。
「あらあら。もうやめてくれとか言いに来たのかしら。人間に心配されるなんてねぇ」
恥ずかしくないのかしら、と言い捨てるスペード。
「言っておくけど、あの偽物の銃はもう通用しないわよ。そこら辺に居るのでしょう、デザート」
スペードは俺の元居た場所へと視線を移す。ナナは首だけ動かして空を眺めている。
それでいい。
「彼女から聞いたからね。それとも、お札でも使ってみる? ワタシに有効かどうか、試してみる?」
やはり。見当違いの事ばかり言っている。
予想通りだ。読心術は二人以上同時に使えない。今、俺と会話をしているように見えるが、読心術はナナに照準を合わせているようだ。慎重というか、徹底している。
ナナは恐らく、何も考えていない。事前にそう言ってあるからだ。しかし、事情を知らないスペードは、諦めて呆けているだけと思うかもしれない。
さあ、頑張っちゃうぞ。
「……使える。俺は魔法が使える」
「何をぶつぶつ言っているの? あまりの不甲斐なさに気でも触れたのかしら。だとしたら……」
「……スペード!」
「はい?」
全身が熱い。スペードの魔法ではないが、まるで体中の血が燃えているかのようだ。
覚悟は、決めた。
「キャスト・オフ!」
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