二十四之剣 「砂埃」

 エンゲツの持つ銃から、放たれた弾丸は、ソラの後頭部に確かに向かっていた。

 完璧な角度と方向で、ベストなタイミングで弾丸は確かに放たれていました。

 並みの人間なら、死角からの攻撃で命を失っているでしょう。

 ただ。

 ソラは、カゲツとの戦いの中でも、エンゲツへの警戒も怠ってはいません。軽やかに弾丸をかわしてみせる。エンゲツの弾丸は、周りの大木に直撃し、木っ端みじんに破壊します。

 その様子を見て、エンゲツは意外と驚く様子を見せず何発か銃を打ち始めます。

 自暴自棄になるエンゲツ。何発か打てば、当たるんじゃないのか。そんな考えを抱く男には見えませんが。

 当然ながら、ソラはすべての弾丸をほぼ動かずに回避します。やはり、やけになった攻撃は、ソラには通用しない。


 当たらない。そう、思っていたよ。俺はお前と対峙し、純粋な銃撃だけではお前を倒すことは不可能だと推測していた。だから、今回は......。


 “氷”


 お前の動きを封じることに専念した。


 なんだ、足が動かない。


 ソラの足元には、いつの間にか氷がへばりついている。これでは、身動きを取ることができません。

 どうやら、ソラを撃ち取ることが狙いではなく、回避されることを前提に、氷の魔力を込めた弾丸で、ソラの身動きを封じることが狙いだったようです。

 エンゲツが敵の動きを封じ、カゲツが力を持って敵を粉砕する。これこそが、二人の戦闘スタイルです。


「エンゲツ、よくやった!!あとは、俺がこいつをぶん殴って、倒す」


 カゲツは、高笑いしながら言った。

カゲツの片腕は、地面にぶつけた衝撃で元の大きさに戻っていましたが、岩が再び、へばりついていき、巨大化していく。

 ソラは、足元が氷ついて、身動きが取れない状況。カゲツは、ついに、ソラに強烈な一撃を加えるのか。

 余裕な表情を浮かべながら、カゲツは、ソラの方に歩いていき、攻撃を加えようとしています。

 絶対絶滅の窮地の中、ソラは、背中の剣を抜く。そして、剣撃で地面の土を勢いよく巻き上げます。

 目に、土が入り、カゲツは慌てて、目を閉じ、両手で顔をふさぐ。


 くそ、何しやがる!!いきなり!!奴がいない......。


 辺りは、強烈なソラの剣撃で、大量の砂が巻き上げられ、砂埃が舞っています。周りの様子が全くと言っていいほど見えません。

 この時、カゲツは、察する。


 奴は、死角からのエンゲツの攻撃を回避していたことから、魔力を感じ取ることに長けている。

 だとしたら、この状況はヤバい。見ずとも、魔力を感じて動ける奴に有利。

 それに、風が今は、全く吹いていない。しばらく、砂埃は消えないだろう。まさか、この状況を、意図的に、作り出したのか、あいつはーー。

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