第8話

今日は貿易都市『イスタ』

この都市は海上貿易と漁業で発展したとの設定である。

情報屋からクエスト『人魚の涙』を調査の為である。

このクエストは簡単、声を失った人魚姫を近くのダンジョンで見つける。

クエストで手に入れるアクアマリンをあげると声が戻り、はれて王子さまと結婚できる簡単なストーリー。

情報屋の話によると、この都市で三泊すると人魚姫は海に帰り、泡と消える。

たいていのユーザーは、街に置かれたヒントでアクアマリンを手にして、普通にクリアするらしい。

俺たちはあえて街で三泊してみた。

街の近くにある崖に行ってみると、立札があり。

『人魚姫ここで永遠の想い果てに』と書いてある。

さらに情報屋のヒントから。

俺たちは城に行き王子さまと会う。

NPCなので答えは『今は幸せです』しか帰ってこない。

途方にくれていると、あるプレイヤーが話かけてくる。

「何で、君たちは、人魚姫を逝かせる。選択をしたのだい?こんな簡単なクエストを落すなんて?」

「いや、訳ありでね。ただ簡単にクリアではなくて。このクエストは裏クエストがあると聞いてね」

「私の名前は『ズイ』いいます『紅の騎士団』で諜報担当もしています。ジョブは見てのとおり『中級騎士』をやっています」

「俺の名は『アズラエル』、こっちは『ルシファー』だ、裏イベントの調査ですか?」

これは不味いかもしれない『紅の騎士団』の諜報員と鉢合わせになるとは……

向こうからわざわざ、身分を明かしてきている。しかも諜報担当とまで開示するとは。

どう、考えるのが普通だ?

これは警官などと似ていると考えるのが、一番可能性が高いか。

つまり、警官が制服を着ているのは自分が力を持った存在だと回りに伝える為とも言える。

それと同じで力のある『紅の騎士団』の諜報部員と名乗ることで、相手を威嚇、表の情報を引き出す為か。

おそらく本物の諜報部隊がいる証拠。

やはり、五星クラスになると力の入れ方が違うな。

とにかく、あまり敵対しない方が得策。

「そうだね、マイナーだが確かにあるらしい、クリア報酬も無くバットエンドの終わり方だから、報酬のある、表しかクリアする人しかいないけれどね」

「どうすれば裏クエストをクリアできますか?」

「裏クエストはこれから魔女に会いに行くと良いはず」

「ありがとう」

俺がソロで有名なことを知りながら、素直に情報を教えて、立ち去るとは……。

どうする、罠か?違う、俺を泳がしていて本物の諜報部隊が情報を得ると考えるのが自然か……。

ここは素直にその情報を信じてみよう。

そして、

俺たちは魔女に会いに行くために郊外の洞窟に入った。

いかにも魔女が居そうな、洞窟である。

奥に進むと、光が見えてくる。

そこには魔女らしきおばあさんがいた。

「おばさん、あなたが魔女ですか?」

「おや、珍しい、ここに来たということは、裏クエストルートかい?」

「そうだ、で何をすればよい?」

「簡単だよ、王子様にこの声を失う薬を飲ませて、人魚姫を復活させるだけだよ」

「分かった」

俺たちは薬をもらい、城へと向かう。

NPCの王子様に人魚姫の話をすると、イベント発生。

王子様は人魚姫の消えた崖に行き、薬を飲む。

すると、立札から人魚姫が現れる。

足は無く薬を飲む前の状態である。

人魚姫は驚き海に帰っていく。

これでクエストクリア?と首をかしげていると、イベントは進行、声を失った王子様は、その地位を失い旅にでることとなった。

そして、俺たちは明日、クエストの調査のため宿に泊まっていると。

外から声が……。

窓を開けてみると、そこには人魚姫がいた。

「少し、良いですか?」

「はい」

「私は恋に破れ、海の泡と消えたはずなのに何故、王子様は私を救ってくれたのでしょうか?」

「きっと、自分を救ってくれた、あなたに恩返しをしたかったのだよ」

「はい、でも。王子様はあまりにも大きな代償を支払ってまで、私を救ってくれた。せめて、この髪飾りを渡してもらえませんか?」

「はい、喜んでやります」

髪飾りを受け取ると何時の間にか人魚姫は消えていた。

翌朝、旅に出ようとしている、王子様に髪飾りを渡すと。

NPCである王子様は何かこのクエストとは関係ないことを喋り出す。

『私は愛されていた―――せめて、このゲームの中にその証を残そう……私のすべてをこの『ブルーバイブル』に残そう』

王子様はそう言い残すと去っていった。

『ブルーバイブル』???以外なとこからヒントが得られた。

おかしい―――いくら、裏クエストとはいえ、こんなに簡単に『ブルーバイブル』のヒントが得られるなんて……。

やはりクエストの改訂されているようだ。

『デスゲーム』に『運命の選択』同時進行で調査が出来そうだ。これは予想だがこの二つのクエストはかなり関係が深いと思われる。

問題は『紅の騎士団』何故、俺に『ブルーバイブル』のヒントになる情報をくれたのか?

すると、一人のプレイヤーが現れる。

ジョブは聖僧侶、一般的に言う回復系ジョブだ。

「はじめまして、私は『サンザエル』、『紅の騎士団』の総参謀長をやっています。

総参謀長?『紅の騎士団』の大幹部ではないか。

「それで、サンザエルさん、私に何か用ですか?」

「あなた方が『運命の選択』をクリアしたと聞きましてね」

う、何故それを情報屋が漏らしたか?イヤ違うあの情報屋は金には汚いが無断で約束を破らない。

あの爺さんはプライドを持ってやっている、陣の様な特殊な奴以外に情報を漏らすようなことは絶対にしないはず。

だとすればどこから?

どうする―――一回しらを切ってみるか。

「何のことですか?」

サンザイルは余裕の表情でニコニコしている。

「私はリアルでは『レオナルド』の開発担当の責任者の一人でね。会社には内緒で『紅の騎士団』で一プレイヤーとして遊んでましね。あなた方が会社に来たと聞きこうして会いに来たのです」

開発担当?GMよりこの『レオナルド』事を知っているはず、『紅の騎士団』が目立つわけだ。

うーん―――仕方な、ここは認めて向こうの真意を確かめよう。

「はい、このルシファーさんがクリアしました」

「ほーう、一転素直に認める、アズラエルさんには駆け引きで勝てる気がしませんね」

「それは褒め言葉としてとりますね」

「やはり、駆け引きではかないそうもないですね。あえて私の目的を教えておきます。私はゲーム内の地位などには興味が無く、この『レオナルド』を使い、リアルで少しお金儲けがしたいだけです」

この人かなり頭が切れる、自分をあえて低評価させ油断を誘っている。

だが、おそらくお金目当ては本当だろう。

どうやらとんでもないのに目をつけられたかな。

「そうですか。で、どうします?」

「今日は挨拶に来ました、私が参戦したことを教えて、緊張感をもってプレイして欲しかっただけです」

「そうですか、ありがとうございます」

ヤバいなこの人、本気だ。

下手に敵対すれば、確実にやられる。言動に注意せねば。

「では、ごきげんよう」

「はい、さようなら」

そして、サンザエルは去って行った。

くぅ……不味い、あの人は五星の一つの『紅の騎士団』でさえ利用している。

どうゆうかたちであれ、あの人とは一戦交えなければならないだろう。

本当に油断できないことになった。

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