VRにて最強

霜花 桔梗

第1話

 夏の始めのことである、夏休みも近いこの季節なのに、今日は転校生が来るらしい。こんな時期に転校してくるなんて訳ありかな?

 黒髪にロング、長い脚に白い肌の少女であった。

 なにより目立つのが右手に黒いアザが多数あり、俺はその美しさと孤独な感じに呆然とするだけだった。


「えー皆さん、転校生を紹介する。名前は『藤野(ふじの) 京子(きょうこ)』さんだ、これから仲良くするように」


 担任の先生がお決まりのセリフで少女を紹介する、実に機械的であった。


「藤野ですよろしく」

 少し愛想が無い感じ……俺の心ざわついた。

 担任の指示で藤野さんは少し離れた場所に座る。

 やはり、彼女に目を奪われ不思議な感覚だ。

 そう、まるで、物語に出てくる魔法をかけられる前の地味な主人公の様だ。

 そして、一日はすぐに過ぎて行き、いつの様に帰宅してから夜中まで仮想オンラインゲーム『レオナルド』をやっていた。

 今日はこれくらいで……。

 少し、腹がすいたな、何か買いにいくか。

 俺は近くのコンビニに足を運ぶと偶然にも藤野さんが居た。


「藤野さん?」


それは迷いなど無く、思わす声をかける事ができた。


「あなた誰?」


そうか、転校初日なら分からなくて仕方ないか。

「同じ、クラスの『高崎 慶』です。」


「そう……で、何の用?」

「それを言われると厳しいな、同じクラス同士のだから、仲良くやろうよ」

「そうね、社交辞令も必要ね」


 う……なかなか、強敵だ。

 社交辞令とまではっきり言われると。

 しかし、このコンビ二に居るということは家が近いのかな。

 突然、帽にマスクの、二人組の強盗があらわれる。

 まじか、どうしよう。

 ゲーム内ならこんな雑魚、一撃で倒せるのだが、やはりリアルはクソゲーか……。


「大人しくしていろ」

 

 一人は店員に、もう一人は、唯一の客の俺たちに刃物を突きつける。

 クゥ……無力だ、怖くてないも出来ない。

 そんな時、藤村さんが素早く、右手で強盗の胸をつかみ、吊るし上げる。

 さらに、棚に叩きつけると強盗はピクリともしなくなる。

 それを見て、もう一人が、藤村さんに襲いかかる。

 藤村さんは躊躇することなく、右手の正拳突きがきまる。

 強盗は吹っ飛び。あっけなく、倒されてしまう。

 そして、藤村さんは何事も無かったように、立ち去る。

 自分を帰ろう……ここにいると厄介なことになりそうだ。

 店員に一言かけ、俺も立ち去る。

 家に着くとようやく落ち着きを取り戻す。

 つまらない目にあった。

 ストレス解消にもう一度『レオナルド』にログインしよう。

 パソコンを起動しゴーグルをつけ、ログインする。

 俺のジョブは『聖騎士』守る者も無いのに、このジョブ……分かっていた……。

 本当は何かを守りたいからだと。

 でも、俺はソロの道を選んだ。

 誰かと関わるより一人で居たかった。

 もうあんな思いをするのは嫌だから。

 それだけだった。


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