第25話 「エンシェントリッチ討伐~その3」


 フィーはエクスポロードを放ち、念には念を入れてフィーは当たった瞬間にエンシェントリッチの周りに結界を張り、爆風すら逃がさずに閉じ込め、ダメ押しする。

 その数秒後に結界を解き、様子を見る勇者御一行。

 土煙が舞い、エンシェントリッチの存在が見えないが警戒態勢を維持したまま、土煙を見続ける。


『ハ、ハハハ……!』


 土煙が晴れてきてうっすらエンシェントリッチのシルエットだけが確認される中、笑い声が聞こえた。


『素晴らしい……流石は勇者と言った所か……』


 完全に土煙が晴れ、エンシェントリッチの状態に勇者御一行は驚愕する。


『ここまでやれるとは思ってもいなかったぞ……。お前らは家畜と呼ばず、敬意を評して勇者と呼んでやろう……』

「あれで無傷だと……!?」

『いや? 無傷では無いさ、ダメージは追っている。だが、オートヒーリングのおかげで回復しているだけだ』


 リンが言うとエンシェントリッチは余裕そうに言う。リンは歯をギリッと強く噛む。


「落ち着いて下さい。私の準備が整いました」


 怒りで冷静さを忘れかけたリンにティアが声を掛ける。そして、当初の予定の作戦に移行する。

 ティアは旗を掲げ、


「私の声に聞き、私に続け! 私は勇者ユリティア・フィン・ソイネ! 私達の前に高い壁があっても私達は歩を止めず、前に進む! そして、その頂きを私達は掴むッ!!」


 とティアが言うと、勇者御一行は緑色の光に包まれた。その数秒後、緑色の光は散り、勇者御一行は金色のオーラを身に纏っていた。


『おいおい、ありゃあ希望の旗じゃないか? ダンナ』


 ――は突然目を覚まし、俺に言う。


『知ってんのか?』

『そりゃあな、ありゃあ神器の一つだ。まーさか、こんな所でお目にかかるとはなー。何百年ぶりだ?』

『まさかの神器か。どおりで俺とティア以外持てないわけか』

『まぁな。んで、嬢ちゃんが持てるって事は――』

『選ばれた訳か』


 俺は――と話してからティアの方を見直す。エンシェントリッチはティアの持っている旗を見て驚く。


『フハハ……フアッハッハッハッハッハッハッハッ!!!! 面白い! 面白いぞ!! まさか、神器を持ってくるとはなッ!!』


 それを聞いた勇者御一行も驚く。


「え、この旗って……」

「昔大戦を終わらせた」

「八つの武器の一つ……」

「神器なのか……!」

『なんだ、貴様らも知らなかったのか。だが、好都合だ。貴様らを殺して、その神器を頂き魔王様に献上する!』


 と言ってエンシェントリッチは中級闇魔法のファントムイレイザーを勇者御一行に放つ。黒いビームが勇者御一行に近付く。

 しかし、勇者御一行は避ける事は出来なかった。


『避けられるなら避けてみろ、勇者共!』


 フハハハハ! と笑いながらファントムイレイザーを放ち続ける。

 ファントムイレイザーの通常は細いビームだが、エンシェントリッチが放ったファントムイレイザーは太い。

 それもただ太いでは無く、大きさも段違いであった。もし、勇者御一行が避ければ街の中心の部分は消し飛ぶだろう。


 迫り来るファントムイレイザーにフィーは一歩前に出てから、障壁を展開した。

 それもファントムイレイザーより大きく、何重にも張った障壁を。

 フィーの展開した障壁とファントムイレイザーがぶつかる。

 フィーの展開した障壁がエンシェントリッチの放ったファントムイレイザーによって砕かれて行く。

 杖をファントムイレイザーに向けながら歯を食いしばって障壁を貼り続けるフィー。


「負けない……! 私は……負けないッ!! 勇軌の分も生きるんだからぁあああああああああッ!!!!」

 と叫び、更に先程よりも強力な障壁を何重も展開し、規格外のファントムイレイザーを防ぎきった。

『なッ!? バカな!!』


 まさかの出来事に驚きを隠せず口に出すエンシェントリッチ。力を出し切ったのか、フィーは糸が切れる様にその場に倒れ込もうとした。


「あ、とは……頼、んだ……わ、よ……」


 と言ってからフィーはその場に倒れた。その横をリンとルキナが駆け抜ける。


「フィー、頑張った」

「今度は私達の出番だッ」


 と言いながら二人はエンシェントリッチに近付く。


『ほざけッ!!』


 エンシェントリッチは無数のファイアアローを発動させて、二人火矢の雨を降らせた。

 その瞬間にルキナは魔眼を使うと同時に一瞬でリンに近付いて持ち上げた。

 そして無数の火矢の雨の中をルキナはリンを持ちながらも全て躱しながらエンシェントリッチに近付く。


「ル、ルキナ。く、苦しいぞ……」


 肩に担がれているリンが零す様に言う。

 それもそうだろう、無数の火矢の雨を左右にステップしながら躱したり、前宙とかして全て躱しきっているんだから。と思う俺。


『ク、クソォオオオオ!!』


 有り得ない事が続いて動揺している様に見えるエンシェントリッチは叫ぶ。


「リン、ここなら行ける?」


 とルキナがリンに聞くと、リンは後ろを見て距離を確認し、ニッと笑う。


「あぁ、十分だッ」

「分かった、いってらっしゃい」


 すると、ルキナは片足を軸にして半回転してからリンの足の裏に手をつける。

 リンはルキナの手を足場にして強く踏み込み、ルキナはそれと同時にエンシェントリッチに向かって投げる。

 投げられたリンは一瞬でエンシェントリッチの目の前まで到達し、


「アサヒ玄人流……!」

『――!?』


 エンシェントリッチはリンが近付いてくる速度が速すぎて反応が遅れ、


「風花雪月!!!!」


 と言った瞬間、風の刃がエンシェントリッチの身体を数箇所を切り裂いた。


『ぬぅあああああああああああああ!!!!』


 完全にエンシェントリッチを捉え手応えを感じたリン。エンシェントリッチは余りのダメージに膝を地面に着ける。


「退いてくださいッ!」


 と言ったティアが言った瞬間、フッと鼻で笑うリンはそのままバク宙する。

 すると同時にティアはスピリット・ブレイブを使い、旗が大きな槍となる。

 それを投げ、エンシェントリッチの腹部に突き刺さり、突き刺さったエンシェントリッチはくの字で後ろに飛ばされる。


『ぐぅおおおおおおおおおお!!』


 叫びながら飛ばされたエンシェントリッチは後ろにあった大岩に旗ごと突き刺さり、ぐったりと倒れ込む様に前屈みになる。

 エンシェントリッチはそのまま動かなくなり、勇者御一行は一箇所に集まる。


「倒した……?」

「分からない」

「さぁ……どう、なのかしら……?」

「とりあえず、旗を回収しに行こう」


 ティアはフィーに肩を貸しながら勇者御一行はエンシェントリッチの元へ行く。

 目の前まで近付いた所でリンがフィーに肩を貸し、ティアはエンシェントリッチに刺さっている旗を抜く。

 抜くとエンシェントリッチの体は灰になり、崩れ落ちた。

 それを見た勇者御一行は呆然とし、お互いの顔を見る。


「勝っ……た」

「勝った……」

「勝った、わね……」

「勝ったな……」


 と言ってから全員が黙り、


「「「「勝ったぁあああああああああああああああ!!!!」」」」


 と空に向けて叫んだ。勇者御一行はお互いに抱き合い、その場でぴょんぴょん飛び跳ねる。

 ティアは涙を流し、ルキナは満面笑みで笑い、フィーは疲れが見えるが笑顔で、リンも一緒になって跳ねていた。

 遠目で双眼鏡で状況を確認していた冒険者もその光景を見て、


「倒したぞおおおおおおおお」

「やるじゃねぇか!!」

「今日はお祭りだッ!!!!」


 街中お祭り気分で騒いでいた。

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