国立魔法研究所第6番支部アーロン研究班日報

晴野

第1話 魔法使いの庭

「アーロン先生!」

一人の少年が国立魔法研究所第6支部の中を軽やかに走る。

「アーロン先生!私、魔研第6のアーロン研究班へ配属になりました!!」

少年はアーロン研究室ガーデンの扉を壊れるぐらいの勢いで開き、アーロンと呼ばれる師の元へ向かった。

「やあ。ノル君じゃないか。また学校ハイスクールをサボって来たのかい?」

アーロンは呆れた表情でノルを見た。

「だーかーら!本日付でアーロン研究班に配属になったんです!特例ですけどね。」

ノルも呆れた表情をアーロンに返し、やれやれと言ったように説明を始めた。

学校アカデミーを昨日卒業してきました。先週末に卒業試験を受けたので、昨日が卒業式だったんです。そのあと、メルシド先生に手続きしてもらってここに来ました。」

数秒間、沈黙があった。アーロンは少年を見つめ、ゆっくりと、そしてハッキリと一言呟いた。

「私は1聞かされてない。」

アーロンは早々にマントを羽織りノルの肩に手を置いた。

「ノル君。メルシド《阿呆》の研究室に行く。付いてこい。」

「どうぞご自由に連行して下さい。アーロン先生。」

アーロンはノルを連れ、研究室ガーデンを出た。


「やぁやぁ、メルシド《引きこもり》教授。年端もいかない少年を私の研究班に入れるとはどういった見解かね?」

アーロンはメルシドの研究室大書庫の扉を開け、本で埋もれた机に座るメルシドにノルを突き出した。

「ノル君は学生の牢屋アカデミーで5年分の成績を修めてここにやって来た。君と同じじゃないか。」

メルシドは嬉々とした表情で答える。

「そうじゃない。なぜ、彼が──……。」

アーロンは言葉を詰まらせた。

無能ノーカラーがどうやってアカデミーに入って、何故2年で卒業試験に合格したかって聞きたいんだろ。」

アーロンはメルシドの言葉を聞いてさらに顔を曇らせた。

「ノル君は無能ノーカラーじゃなかったんだ。詳しくは本人から聞いてくれ。それじゃあ、私は講義に行かなくてはならないからね。」

「メルシド先生!どうしても私から説明しなければならないんですか?」

この話をアーロンにしたら研究室を追い出されるかもしれないと思ってメルシド教授に助けを求めたはずが、協力者本人によって台無しにされてしまった。

「君たちは魔法使いだ。ましてや旧知の仲だろ?真実を求めようじゃないか。」

メルシドはそう言ってアーロンとノルを研究室大書庫からつまみ出した。

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