第17話 魔導具コフルチミ

パーティ編成についての話が終わったアルベルト達はこれからの冒険の参考にと促されカウンターの上に堂々と置いてある、金具で美しく装飾された透明な球体の前に立っていた。


「こちらは魔導具コフルチミと言われてですね古代遺跡から見つかった物なんです、まあ、あくまでそれの複製品なんですけど機能はさほど変わりません」

「へぇー、それでこの、魔導具コフルチミ? は何をする道具なんだ?」


ハルマが質問をしながら手元にある魔導具コフルチミ、と言われている球体に触れる。すると魔導具に触れた瞬間その球体は青白くまたたかせながら魔導文(ディサスペル)でハルマを包み込むように空中に刻まれている。


「うおっ、なんだこれ!」

「安心してください、この魔導具は触れた者の身体データ、いわゆるステータスを調べるための物なんです」


ハルマは興味津々に自分の体を包んでいる魔法文(ディサスペル)を眺める。アルベルトは真剣に魔導具とハルマを眺めている、ミネアはというと真剣な姿のアルベルトをじっと見つめている。


(これはまさに絶景です!!)


そして魔導具に触れてから少しの時間が経ちハルマを包み込んでいた光と魔法文(ディサスペル)はようやく消える。そして魔導具は重々しい音を奏で自身の上に理解不能な文字を並ばせていく。それを見た三人は不思議そうにその文字列を見る。そしてアルベルトはチラチラと魔導具の上に描かれた文字列を見ながら紙に何かを書いている受付嬢に質問をする。


「この文字は一体なんですか? 見たところ魔法文(ディサスペル)に似たような文字ですが……」


アルベルトがそう質問すると受付嬢はよしっ、と言い、筆を立てかけて手元にある紙を三人に見せる。


「この文字はアルベルト様がおっしゃった通り、魔法文(ディサスペル)の文字体なんです、そして私が今書いたこの紙がハルマ様のステータスです、どうぞご覧ください」

「どれどれ、俺の最強のステータスはどんなかなー」

「どうせ見る価値のないものでしょうけど、参考に見てあげますわ」

「チッ、俺の最強かつ無敵を見て失神すんなよ、このヘビ女」

「おい、周りに迷惑だぞ、ちょっと静かにしろ」


アルベルトが注意をすると二人は互いに小さく言い合いながらハルマのステータスを見る。そしてアルベルトもそれを見る。


・攻撃力ー204

・対抗力ー42

・俊敏ー29

・魔法耐性ー14

・魔法攻撃ー1

・魔力許量ー10


「うおぉ!! なんか凄そう!」

「フフッ、でも魔法攻撃は1ですよ?」

「なっ、魔法なんて使わねーし!」

「負け犬にぴったりな言葉ですね」

「静かにしろハルマ、ミネア、ミネアもいちいちハルマを構うな」

「すいません、アル様……」

「へっ、ざまあー……ヒッ!」


アルベルトを見るアルベルトは殺気を含んだ目でハルマを黙らそうと睨みつけている。ミネアはというとニヤリと笑いながらハルマに向かって何かの魔法を放とうとしていた。


「すいません、図に乗りました」


アルベルトの殺気とミネアの魔法はこれにて一件落着したところでミネアが魔導具コフルチミに手を触れる、そして受付嬢がそれを紙に綴る。魔導具で出たステータスを三人は見る。


・攻撃力ー47

・対抗力ー29

・俊敏ー148

・魔法耐性ー79

・魔法攻撃ー174

・魔法許量ー287


「あ! ミネア様は攻撃力を除いてほとんどが平均以上ですね! 特に魔法系統のステータスはずば抜けて高いです!」

「すごいな、ミネア」

「あ、ありがとうございます! アル様!! ……ハルマさん? どうかされましたか?」

「えっ? 何も?……」


ミネアはハルマに勝ち誇った顔で見下す。その行動にハルマは口笛を吹いて気を紛らわしている。

アルベルトはそんなことを気にせず魔導具に手をかざす。そして出てきた魔法文(デイサスペル)を見て受付嬢は少し戸惑いながらも紙に書き、それが書き忘れ終わるとその紙を申し訳なさそうに三人に見せる。


「すいません、魔導具の故障が原因だと思うんですけど……」

「いや、大丈夫だ」

「それよりも、早く見せてくれよー」

「アル様の全てが知りたい……フフ」


そしてアルベルト達はアルベルトのステータスを見る。


・攻撃力ー159

・対抗力ー31

・俊敏ー57

・魔法耐性ー0000

・魔法攻撃ー0000

・魔法許量ー00000


「魔法系統のステータスが表示されなくて……」

「ブフッ!! アル、まさか魔法に嫌われていたりしてな」

「そんなわけありません!! アル様は、もっと……」

「ありがとうミネア、気遣ってくれて……ハルマの言うとおり俺は魔法に嫌われているようだ、なら剣術を磨くしかないな」

「アル様……」


アルベルトがそう言うとミネアはなぜか後ろを向きもぞもぞしていた。


(アル様!! 超カッコいいんですけど!)


ミネアがそうやっている時ハルマはアルベルトに、悪りぃ、と謝る。


「でもなぜでしょう、今まで正常だったのに……まさか、そんなはずは……」


受付嬢がそう呟くとアルベルトは他の二人に邪魔になっているから、と言い受付口から離れる。


「そうだ、これからは長旅になるからそれぞれで準備をしてから明日の朝ここで会おう」

「ふわぁーあ、そだなー俺は……寝るか」

「そうですわね……」


そしてアルベルト達はそれぞれ別れる。しかしアルベルトが自室に戻ろうとした時後ろから声をかけられる、振り返るとそこにはミネアがいた。顔を赤くしながら彼女は照れ隠しに髪や長いスカートを忙しなく触っている。そして切れそうな糸のように声を振り絞る。


「アル様……わたくしと……そのぉ、一緒にた、旅の準備に……行きません、か?」


ん? 旅の準備ということは買い物を一緒にしよう……ということか? 俺は別にいいが、なんでそんなに恥ずかしそうに言うんだ? アルベルトは疑問を頭に浮かべる。しかし次の瞬間——

ミネアはアルベルトにゆっくりと詰め寄っていく。


「ダメ……でしょうか?」

「えっ、いや俺は大丈夫だが……その、少し離れてくれないか?」

「はわっ、す、すいませんアル様!」


ミネアはたどたどしく腕をブンブンと振り回して謝る。


「大丈夫だ……それじゃあ、行くか」

「は、はい!! アル様!」


そしてアルベルトとミネアは屋外に出る


「 わたくし、お金を忘れてしまいましたので先に行っててもらえませんか?」

「ああ、別にいいぞ」

「ありがとうございます!!」


そしてアルベルトが先に行くのを確認してミネアは猛ダッシュで街中を走り出す。そして大きな声で叫ぶ——


「アル様とデートきたぁぁぁあぁ!!」


ミネアのその声に少なからず倒れたであろう老人と泣き叫ぶ子供を放っておいてミネアはそれでも走り続けるのであった。

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