私、動揺しています。

目付きの鋭い執事とつり目気味のメイドが入ってきた。

ハリーと私はテーブルの下に隠れた。


「決行は今夜だ。準備は大丈夫だろうな?」

「はいセバス様のお持ちになった薬品、きちんとスープ皿に塗り込んでありますわ」

「屋敷の家族にとって、今夜は最後の晩餐というわけだな」

「そうなりますわね、うふふふ……」

「ワハハハ……」


メイドが部屋の奥に歩いて行く。

サイドテーブルの引出しを開けてごそごそ探り始める。


「その癖はもう止めんか! ガブリエル様のお屋敷に抱えられたらおまえはメイド長に抜擢されるのだぞ!」

「うふふ、そういうセバス様も好待遇で迎えられるとか……」

「それも今日の晩餐で一家がうまく全滅すればの話だ」

「前菜の次にスープ。3人が同時に口にすることが肝要……ですわね」

「薬品の効果はじわりと効くように薄めているからその心配もない」

「まあっ、さすがセバス様だわ! あっ、このペン素敵ね」

「だから盗み癖は直さんか!」

「うふふ、どのみちこのお屋敷自体が不要物。良いではないですか」


2人は高笑いしながら出ていった。

私はハリーの顔を見上げる。


「ニャーゴ(やっと出ていったな。さあ、部屋にもどろう)!」

「ピィー(ええっ)!?」


彼はきょとんとした表情で私を見る。

あんなに恐ろしい会話を聞いて、その反応って……


「ピィー(今の話を聞いてあなたは動揺しないの)?」

「ニャー(話って、なんの)?」

「ピィー(さっきのあの2人の会話よ)!」


私は彼に対してイラついていた。

飼い主の危機を放っておくつもりなの?


しかし、その後の彼の返答に……

私は、衝撃を受けた。



――三代目はオレ様の言葉だけでなく、人間の言葉まで分かるのかい?―― 

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