第7話 時

「なにこれ」

少女は鉄の塊を眺める。

とても大きく、とても長い。

(電車だね。乗り物だよ)

相変わらずふわふわしている少女をよそに、電車と呼ばれるものを見渡す。

「こんな大きなものが動くの?私が押してもびくともしないよ?」

少女は首を傾げる。

(電気を使って動かすんだよ)

「でんきってなに?」

(それを説明すると長くなるんだけど...)

「じゃあいいや」

自由な少女は小走りで電車の周りを行ったり来たり。

電車の中は、長い年月が経っているせいか砂が積もっていた。

(やっぱり何もなさそうだね)

少女は頭の後ろで腕を組む。

「どうしてこうなっちゃったの?」

少女は積もった砂をいじる。

(しょうがないんだよ。時間は戻せないからね)

少女は腕を組んだままクルクルと。

「この世界には人間はいるのかな?」

少女は立ち上がり、鉄の箱から出る。

(まだわからない)

一言だけを差し伸べる。

「いこっか」

少女は再び歩き出す。

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