第56話 鬱の波は突然

今日、しばらくぶりに「ああ、死にたい」って思った。


なんの理由もなく、なんの脈絡もなく、なんの苦しみもなく。


鬱ってそういうことなのだ。


「死にたい」


そう思うことからすべてが始まり、生きているすべてが辛くなる。


辛いから死にたい、という認識は逆なのだ。


死にたいから理由を探すのだ。


だから生きるすべてが死の理由になるのだ。生きるすべてが辛くなる。


生きていることと死ぬことはひとつなのだ。


みな産まれ、みな死ぬのだ。たったひとつ約束された平等。

生きるものはみな死ぬのだ。


だから。


特別な君になる方法を教えよう。


死にいく生き物だけが知りえる真理を。


君だけが出来る死に様を教えよう。




生きろ。


君の命が尽きるまで。死にたいと呪文のように唱えながら。


死ぬまで生きろ。

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