第33話 あ、抜けたな

先ほど、思ったのです。

「あ、今、抜けたな」

と。


「私にしか出来ないことをしたい」


そう思ったのです。


今までは


「人とは違うことがしたい」


「私が特別になれることがしたい」


そう思ってきたのです。

肥大した自己顕示欲。

大層くるしかったのです。


自己肯定感の欠如。

そんな言葉を知っていても理解なんか出来やしなかったのです。

でも、さっき抜けたのです。


「私にしか出来ないことがしたい」


人生も折り返し地点を過ぎました。

誕生日が来るたびに終わりまでの時間を目測する年になりました。


間に合うだろうか。

私はずいぶんと学ぶのが遅かったから。


間に合うだろうか。

私がすべきことは、私にしか出来ないこと。


誰でも出来ることは他の人にまかせればいい。

有名になることとか、ちやほやされることとか、人を見下すこととか、自分が世界で一番偉いと思うこととか。

みんな他の誰かにまかせればいい。


私は、私にしか出来ないことをしようと思う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る