第45話 『見えた』んです



 ロック先輩(アラサー女子)は、いつも笑顔の明るい人である。


 が、小さいころは、『見えた』んだそうである。ええ、あれです。幽とか、霊とかが。




雲江「いまも見えるの?」


ロック先輩「むかし飼っていたネコが死んでから、見えなくなったんですよ。可愛がっていたネコだったから、きっと死ぬときにその力を持っていってくれたんだなぁ、って思っているんです」



 『見えた』ことは、あまりいい思い出ではないらしい。ぼくとしては興味津々なのだが、それ以上はあまり聞けなかった。





 先日、うちのお店に、ちっちゃい男の子が駆け込んできた。


 5歳くらいだろうか。リュックをしょって、ご機嫌にダッシュしてきた。あとからお母さんも来た。



雲江「ものすごい勢いで走って来たね」


ロック先輩「あれは、『見え』ていい子ですね」


雲江「え! 『見え』ちゃいけない子がいるの!?」


ロック先輩「あははははは、だいじょうぶですよ。ここにはいないから」



 その言い方が一番怖い。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る