第19話 B店長vs声優ちゃん


 新人の声優ちゃんがきた。


 ノリちゃんのひとつ下。最年少。声優の学校を出たらしいが、とくに声優として活動している風ではない。色白の美少女で、お嬢様だという噂。ただ、……ちょいとコミュ障。でも、声はでかい。声優だけに……。


 ちなみに名前はクドー(仮名)。以前いた人妻クドーさんとおんなじ苗字。


雲江「よかったじゃないですか。今度はクドーって呼んで、返事してくれますよ」


B店長「……」




 で、この声優ちゃん改め、クドーちゃんなんだが……。


 とにかく喋らない。分からないことも聞かないし、返事もしない。だもんだから、周囲の評判はありまよくなかった。

 仕事を教えていたトシちゃんも、まったく無反応なんで、一緒は嫌だと言っていたらしい。


 そのうち、彼女が持ってくるカバンに謎のアイテムがぶら下がりはじめる。何に使うのか分からないが、明らかに「セーラームーン」(正確には、セーラーヴィーナス)の小物である。

 で日を追うごとにアイテムが増えた。



 が、ぼくが一緒に入ったとき、無口ながらも必要な会話はしてきていた。


 それを見ていたB店長。


B店長「雲江さんとは、話すみたいね」


雲江「仲間だと思ってるんじゃないですか」






 とにかくクドーちゃんがコミュ障気味なのだが、そんなことはお構いなしのB店長。いつもの調子でまくしたてている。



B店長「休み、いつにするの!」


クドー「……いつでもいいです」


B店長「いつでもいいなんて、そんな日本語ないのよっ! YESor NO! YESorNO!」


雲江「いや、それ英語ですよね」





 が、その数日後、ある事件があって、B店長はクドーちゃんが大好きになってしまう。


 その事件が以下。



 死ぬ前に食べるなら何がいい?という話題で盛り上がり、クドーちゃんも小声で解答したらしいのだが、その解答がB店長の💗を射止めたようだ。



「死ぬ前に食べたいものは何?」

 その質問にたいするクドーちゃんの解答。



クドー「……唐揚げ」




 その後もB店長の熱血指導は続いている。


B店長「あたしたち販売員は、いわば舞台に立った役者なのよっ!」


クドー「……」


 ま、あなたが役者なら、そうとうなコメディアンですけどね。





 ただクドーちゃんも少し慣れてきたみたいで、無口なままだが、ときおり笑顔もみせるようになった。


 このまえ、レジに立って接客している姿をみたら、いつもより大きく見えた。


 うーん、成長したなぁ……。


 と、思ってよく見たら、背が低いから背伸びしているだけだったけど……。






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