第13話 血糖値



 この前の健康診断、ぼくはB店長と一緒だった。正直一緒はいやなのだが。



 健康診断というのは、何か一つくらい、誰でも苦手な検査項目がある。


 ぼくは昔、ひどい貧血を起こしたことがあって、そのときの診察時に採血されて目の前が真っ暗になったトラウマから、採血がどうにも苦手だ。ちょっと気分が悪くなる。



 B店長は、胃の検査が苦手みたいで、毎回バリウムは飲まず、胃カメラを呑んでいる。


 当人の話だと、どうにもあの炭酸のゲップをおさえることができず、「若い男の先生の前でゲ〇吐いちゃったのよ!」と叫んでいたが、いやそれ、ゲ〇じゃなくてバリウムだろ。

 まあ、なんにしろ、それで嫌になっちゃったらしい。


 で、以来、バリウムではなく、胃カメラで診察してもらっているそうだ。当人は毎年胃が綺麗だと言われると自慢していた。


 が、胃カメラは、麻酔使うし、有料。結構なお値段がする。


 だもんだから、去年あたりから変なマイルール作っちゃって、胃の検査は二年に一回ということにしちゃったらしい。で、「今年はやらないの」とか自慢げに言っていた。

 ちゃんと受けろよ、もう。




 で、健康診断の前日。


 ぼくとB店長は二人とも、遅番だった。

 遅番だと仕事が終わるのが、9時をちょっと過ぎる。でも、健康診断当日は、朝食は摂れないし、水もダメ。前の晩は夜9時までに食事を済まさなければならない。が、仕事は9時過ぎまで。


 明日の昼くらいまで何も食べないのはきついので、二人しておにぎりを食べた。9時15分くらいだったかな。



 で、翌日。

 うちからは遠いが、B店長の家からは近い病院まで朝早くから行って、健康診断。


 今年から、血液検査の結果が当日のうちに出るから、それまで少し待っていてくれと、受付で言われた。


 ぼくの方がB店長より先に終わったので、そのまま帰宅。ぼくは血液検査の精神的ダメージがデカイので、毎年健康診断の日は休日にしてもらっている。


 逆にB店長は、健康診断で休みが1日潰れるのがいやだから、そのあと出勤。



 ぼくの結果は、まあそう酷いこともなく、尿酸値と肝機能がD判定でした。そして、血糖値も少し高めでD判定。




 翌日出勤したら、B店長に「どうだった?」と聞かれた。



雲江「血糖値が高かったですね」


B店長「あたしは、血糖値、要治療(E判定)だったわよ!」


雲江「あー、やっぱあの、9時過ぎにおにぎり食べたのが悪かったですかね」


B店長「あたし、胃の検査ないと思ったから、あのあと帰ってからパンも食べたのよ!」


 いやそれ、ダメでしょ。なにその、マイルール。



 そして山ほどのお菓子を取り出して、「血糖値、血糖値」と言いながら、みんなに配りだす。


B店長「もう、あたし血糖値がダメだから、家のお菓子、全部処分することにしたわ!」


 いや、問題点がすこしズレてないか? 血糖値が高いのは……。


 と思ったが、ただでお菓子が食べれるのだから黙っておこう。


 遠慮なくいただくことにした。



B店長「もう血糖値がダメだから、お菓子食べられないわよ!」


雲江「一緒にしないでください!!」







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る