回答編(3)

 そうなると……。


「普通に考えて、勉強するとか……? 再試験が数日後になれば、その時間を勉強に充てる……ことが出来る、とか」


 いや、これは……。


「つまらないこと言うね、ケン」


「ああ、つまらない」


 何だコイツら。二人して。


「仕方ないね。時間切れみたいだ。再試験までは辿り着いたし、どうだろう。後の事は任せてしまうってのは」


 お手上げ、というジェスチャーをして首を横に振る水野。

 任せる? 誰に?


「ケン、聞こえない? 推理するまでもないと思うよ」


 聞こえる……音?

 水野じゃないが、両手を耳に当て、神経を研ぎ澄ます。何の意味が有るんだろうな、このポーズ。うわあ! 聞こえやすい! ってなったことないんだが。むしろ手に音が吸収されたりしないんだろうか。


 馬鹿にされそうだから、口にはしない。


 タッタッタッ……。


「あー……」


 よく聞くやつだ。ゴム底がリノリウムを蹴る音。さらにその音は、一回ごとに近付いてきている。


「まあ、行き詰ってたわけじゃないけどな、オレは」


「往生際が悪いね、ケン」


 きゅっ。ブレーキを掛けたみたいだ。

 この後ドアが勢い良く……。


「……」


「……」


「……」


 あれ、来な「ドゴォオオオン!!!」


「前守未咲! ここに参上!」


 やっぱり馬鹿だ。馬鹿が走ってきやがった。なんでフェイント入れたんだよ。

 そしてやっぱりドアは蹴り飛ばされた。


「やあ、前守さん。今日も元気がいいね」


「ふふん。あたしは元気だけが取り柄だからね」


 それはそう。


「僕はそろそろドアが壊れるんじゃないかって震えてるよ」


 小刻みに震える様な仕草をする姫宮。

 それもそう。


 あれ? これ壊れたりしたらオレも金払うの?

 百対零でこいつが悪いのに?


「それでそれで? あたし抜きでどんな面白い話をしてたの?」


 机に手を掛けて、片方ずつ足を上げ下げするものだから、机が揺れに揺れる。いやあ、楽しそうですね。

 あれ……? いや、そもそも。


「お前抜きって、お前が遅れて来たんだろ」


「ごめん! それで何の話?」


 全く、何言っても無駄かよ。


「解答が多いんだとさ」

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