恋雨空

西野たくみ

前編

誰かの歌にこんな歌詞があった。


いつもの夏と違うんだ

君は気づいていないけど…。





俺、西野一哉は父親が海外に赴任したため

東京の親戚の家に居候する予定だった。

しかし、親戚の家との連絡がついておらず

急な話でも困るということで…

急遽俺は一人暮らしをすることになった。

俺は前の学校の制服を身にまとい

新しく通う若杉第三高校の事務室に向かっていた。

事務室で転校してきた西野ですと伝えた。

数分後…担任の先生となる佐々木先生という先生が

事務室にやってきた。


佐々木『あなたが西野一哉君?』

一哉『はい』

佐々木『あなたは今日から2年B組だよ。

私は担任の佐々木葉月…よろしくね』

一哉『はい…よろしくお願いします』

佐々木『もう少しで朝のチャイムが鳴って読書の時間になるからね。その読書が終わったらSHRだから、

そこであなたを皆に紹介します』

一哉『わかりました』

佐々木『あなたは…部活なにかやってた?』

一哉『まあ…陸上を少し…短距離ですけど』

佐々木『あら、陸上部?…よかった。うちのクラスにも陸上部が2人いるから…まあ女の子だけど、

仲良くなれたらそっちの方がいいに決まってるから

仲良くできるよう頑張ってね?2人とも明るい性格だし…大丈夫だと思うけど』

一哉『わかりました…声をあと出掛けてみます』

俺がそう言ったところでチャイムが鳴った。

佐々木『あ、鳴ったわね…読書が始まったから行こうか。君は教室の前で待機しててね』

一哉『わかりました』

俺は佐々木先生に連れられ2年B組の教室の前まで

やって来た。

しかし窓もあるため見えてしまうということで

階段の踊り場で待機することになった。

『(2度目のチャイムがなったら…呼ばれるんだよな)』

そう思っているとチャイムが鳴った。

チャイムが鳴ってしばらくすると…

佐々木『西野君?入ってきて?』

俺は呼ばれたので…少し緊張しながら教室へ入っていった。

佐々木先生が黒板に名前を書きはじめる。

生徒A『え、めっちゃ背が高い!』

生徒B『なんか雰囲気優しくない…?』

生徒C『ちぇ…男子かよー』

生徒A『女子じゃなくて残念だったね!』

という声を聞きながら、先生の指示を待っていた。

佐々木『今日からこのB組の仲間になる西野一哉君です…西野君、

自己紹介をしてくれる?』

一哉『兵庫の星稜高校から来ました、西野一哉です。

部活は陸上部でした。…これからよろしくお願いします』

軽く拍手が起こる。

生徒A『先生!少し質問タイムいいですか?』

佐々木『だそうだけど…どう?西野君?』

一哉『全然大丈夫です』

??『はい!陸上部って…本当ですか?』

一哉『ずっとやってたわけじゃないけど…短距離をやってました』

??『え!本当に?私も!短距離なんだ~!』

??『おい、七海!質問タイムなんだからその話あとでよくね?』

七海『うるさいなぁ~優翔…じゃあ、優翔も質問すれば?』

優翔『あ、そうだな!じゃあ…西野君は部活なにやるつもり??』

一哉『部活はまだ決めてません』

優翔『じゃあ!サッカー部おいでよ!!』

七海『優翔だって質問じゃないじゃん!!』

優翔『あ…そうだった~』

優翔と呼ばれる男がそう言うと小さな笑いが起きた。

佐々木『はいはい…そこまで。1限目の授業が始まるから、準備をしてね…西野君の席どこにしようかな?』

七海『はーい先生!私の隣空いてます!』

佐々木『あら、そうだったね…じゃあ、西野君はあそこの席ね』

窓際の一番後ろの席を指差された。

一哉『はい』

七海『こっちの席こっち!!』

俺は七海と呼ばれる女子生徒に手招きをされながら席に向かった。

七海『私、櫻井七海!!よろしくね!!』

一哉『よろしく…お願いします』

佐々木『はいはい、無駄話はあとでね』

七海『あ!すいません!』

一哉『(この人は…クラスのムードメーカーのようだ)』

佐々木『じゃあ、日直?号令かけて』

日直『起立!礼!』

佐々木先生は教室を出ていった。

するとすぐに七海が声をかけてきた

七海『ねぇねぇ!何て呼んだらいいかな?』

一哉『何でもいいよ…一哉でも』

七海『じゃあ、一哉って呼ぶね!』

そんな話をしていると先程の男子生徒もやってきた。

優翔『俺、サッカー部の北野優翔!優翔ってよんでくれ!

俺も一哉って呼ばせてもらっていいかな?』

一哉『うん…もちろん』

優翔『よろしくな!!』

七海『あ、待って!………玲香!!こっちきて!』

玲香『七海?どうしたの?……ってかあんただれ?』

一哉『え…あの…』

七海『さっきの話聞いてなかったの?』

玲香『あー…昨日夜遅くまでイメトレしてたら…眠くて…寝てた』

七海『新しく転校してきた西野一哉君だよ!陸上部だったんだって!』

玲香『え!まじで!…私も陸上部なんだ~!なにやってたの?』

一哉『短距離を少し…』

玲香『え!私と七海と一緒じゃん!!陸上部入るの?』

一哉『まだ部活は決めてなくて…』

優翔『いやいや!一哉はサッカー部がもらう!』

玲香『何言ってんの!優翔!』

一哉『今日、2つとも見学行っていいですか?』

七海『もちろん!っていうかタメ口でいいから!』

優翔『そうだぜ!タメで話そうぜ!せっかく同じクラスになったんだから!

一哉『わかった。ありがとう…じゃあ、今日の放課後見学行かせてもらうよ』

優翔 七海『待ってる!』

一哉『(なんとかこのクラスに馴染んでいけそうだなと思った)』

しかし、七海は…授業中も明るくクラスを盛り上げていて

本当にムードメーカーのようだった。



午前授業が一通り終わり、昼休み…俺はコンビニで買ったパンを

食べていた。

優翔『一哉!!!俺達と食べようぜ?玲香!七海!いいよな?』

玲香『当たり前だよ!』

七海『もちろん!!』

一哉『あ、あぁ…ありがとう』

俺は優翔に呼ばれて3人と昼飯をとった。

優翔『てか、一哉なんでコンビニなの?』

一哉『あぁ……俺、1人暮らしだからさ…』

七海『えー!お母さんは?』

一哉『小さい頃…死んだ。…父親は海外に赴任しててさ』

優翔『え、まじかよ!』

七海『なんか…ごめんね』

玲香『め、めずらしい!七海が謝った!』

七海『珍しいって何よー!私だって謝ることぐらいある!』

優翔『悪りぃな…一哉…こいつらいつもこんなのだから…』

七海&玲香『こんなのって言うな!』

俺は思わず笑ってしまった。

七海『あ!やっと笑った!緊張してるのかずっと暗い顔してたから心配したんだよ!』

玲香『根暗だったらどうしようと思ったよ…』

優翔『笑ってれば一哉イケメンじゃね?』

七海『あ!わかる!』

一哉『そんなことないよ…』

玲香『またまた~謙遜しちゃって!彼女いるの?』

一哉『いたことない…かな』

七海『え!何で今溜めたの!?いるの!?』

一哉『まあ…秘密』

俺たちはそんな話をしながら昼飯を食べた。


ー放課後ー

優翔『じゃあ、先にサッカー部行こうぜ!陸部、今日

ミーティングで最初練習しないからさ!』

七海『あ、たしかにそうだね…一哉、サッカー部行ってきなよ!』

玲香『じゃ、あとで私が迎えにいくよ』

一哉『わかった…優翔どこでやってるの?』

優翔『こっちこっち!…七海!玲香!また明日な!』

七海『うん!…一哉、また明日!』

玲香『じゃあねー!』

俺は一旦、2人のとわかれて優翔に連れられサッカー部の練習を

見に行った。

優翔は練習に参加するため付き添ってはいない

一哉『優翔…エースなんだな…』

?『見学?1年生?』

一哉『あ…転校してきて…優翔に誘われて見学に』

?『あ、本当に?じゃあ、入るの?経験者?』

一哉『いや…まだ迷ってます…やったことはないです』

?『そっかー、入ったらよろしくね…あ、私の名前は山下真冬!

あなたと同じ2年生でサッカー部のマネージャーだよ!』

一哉『そうなんですか…優翔はエースなんですよね?』

真冬『そーだよ~うちのサッカー部は優翔の調子によって試合結果が左右しちゃうの…本当はそれじゃだめなんだけどね』

一哉『そーなんだ…』

俺はそこから30分ほど練習を見ていた。

練習を見ている途中で玲香が約束通り迎えに来た。

玲香『一哉~!練習始まるよ!……あれ?真冬?なにやってんの?…まさか一哉…口説いてた?』

一哉『違う違う…!』

真冬『そう!口説かれちゃった~』

一哉『ちょ!真冬さん!?』

真冬『うそうそ(笑)、サッカー部のこと教えてたんだよ』

玲香『なぁんだ~…じゃあ一哉行こうか!』

真冬『じゃ、入るならいつでも待ってるからね~』

一哉『わかりました。ありがとうございました』

俺は玲香と一緒に陸上部の練習を見に行った。

玲香『一哉は本当に真冬を口説いてないの~?』

一哉『だから…説明聞いてただけ…』

玲香『かわいいなぁと思った?』

一哉『まあ思ったけど口説いてないから…』

玲香『真冬は彼氏いるから狙っても無駄だよ~………あ!丁度七海が短距離練習やってるじゃん!』

玲香が指差す方を見ると、確かに七海が走っていた。

一哉『はや…』

玲香『知らないかもしれないけど…七海はうちのエースだよ?

インターハイベスト4にも残ってるし』

一哉『ベスト4!?うっそ!?』

玲香『速いでしょ~』

一哉『玲香さんは?』

玲香『優翔と七海みたいに玲香でいいって…私は普通かな?』

一哉『そうなんだ…懐かしいなぁ陸上部』

玲香『一哉、走ってみる?』

一哉『いや…もう1年近くやってないし…』

玲香『いいからいいから!……七海!』

玲香に呼ばれて七海がこちらに気づいた。

七海『あ!玲香!!一哉も!』

玲香『やっほー!一哉が七海に惚れてたよ~』

一哉『違うから!』

七海『え、嬉しいなぁ~………んで?玲香…何?』

玲香『一哉が走りたいんだって…短距離の男子と1回走らせてみてよ』

七海『あ、わかった!じゃあ…男子の俊足…好一!!』

好一と呼ばれる男がこちらに近づいてくる。

好一『どうしたの?櫻井先輩?』

七海『この人が走りたいんだって!少し相手してあげてよ』

好一『いいですけど…この人は?』

玲香『転校してきた西野一哉!同じ短距離やってたんだってさ』

好一『へぇ…成宮光好一です。じゃあ…やりましょうか』

俺はやるとも言っていないのに勝手にやることになってしまった。

七海『じゃあ、行くよ?………よーい…ドン!』

俺は言われるがままに走る…その結果…。

玲香『か、一哉…速くない!?!?』

七海『は、速い…』

一哉『…そうでもないよ…』

好一『あの…失礼ながらどこの高校ですか?』

一哉『星稜』

好一『せ、星稜高校!?兵庫のですか!?』

一哉『そうだけど…』

七海『なに、好一知ってるの?』

好一『いやいや知ってるも何も!陸部男子の名門高校ですよ!』

七海『え、うっそ!…インターハイ出場何人いた…?』

一哉『俺と…友達2人と女子が3人』

玲香『一哉出てたの!?』

七海『じゃあ、もう陸上部入りなよ!!名門の生徒が入れば

うちの陸上部強くなるし!…お願い!』

玲香『私からも頼む!!んね!!』

好一『お願いします!』

一哉『………わかったよ…入るよ』

俺がそう言うと…陸上部のメンバーたちが大喜びで俺を囲んでくる。

部員A『すげぇ!星稜の選手が仲間になった!』

好一『んな!すげぇよな!』

一哉『とりあえず…俺は今日はここで…』

七海『あ、まって!一緒に帰ろうよ!』

好一『えぇ!?櫻井先輩…練習は!?』

七海『一哉の入部祝いで終わり!』

玲香『勝手に決めて…まあいいけど…終わりでいいよ…解散!』

陸上部一同『やったぁ!お疲れ様でした!』


その後…俺は2人と一緒に帰ることになった。


七海『いやぁ、まさか一哉があんなに速いなんて…』

玲香『七海見てビックリしてたのが嘘みたい…』

一哉『だから…そんな速くな…』

2人『あの速さで速くないって言われたらうちらどーなんのよ!』

一哉『ごめん…』

玲香『まあ…いいよ。入部が決まったし…あ、部長私だからよろしくね』

七海『そうだね!明日から楽しみ!』

一哉『うん…まあがんばります…』

玲香『………あ、私こっちだから…じゃあね』

七海『ばいばーい!』

玲香『じゃあね!』

玲香は俺達とは反対の道へゆっくりと消えていった。


七海『なんかごめんねー、今日は振り回しちゃって』

一哉『いや…全然いいよ…むしろ嬉しかったし』

七海『そっかぁ…ならよかった!』

一哉『七海……さんは…』

七海『何で玲香がいたときは呼び捨てできてたのに

2人だとさん付けな訳?…………あ!本当に惚れてくれたの!?』

一哉『惚れてるとかじゃなくて…』

七海『じゃあなに~?……まあいっか』

一哉『七海はさ?なんで陸上やってるの?』

七海『あ、やっと呼んでくれた。………んー風を切る感じが楽しい!風との一体感が気持ちよくてさ!!』

俺はその言葉を聞いた瞬間…あることを思い出した。


過去

??『私は風を切って走るのが楽しいの!一体感というか…風が私に話しかけてくるみたいで!』

一哉『なんだそれ…変なの…』

??『変なのって言うなよー!とりやぁ!』

俺は、彼女に鞄で叩かれた。

一哉『なにするんだよ…』


七海『…や………一哉!!!』

俺は、呼ばれる声に我に返った。


一哉『あ…ごめん…ど、どうしたの?』

七海『私の理由はそれだけど…一哉はなんで走ってるの?

というかなんで走るのやめてたの…?』

一哉『理由…か…約束があるからかなぁ…やめたのは…色々あって……』

七海『言えない…?』

一哉は『まあ…色々あってね…いつかは言うよ…』

七海『そっか!なら待ってるよ!』

一哉『七海が走ってる姿かっこよかったよ』

七海『え…あ、ありがと!…努力してきたかいがあった…』

一哉『褒められたの初めてでもあるまいし…』

七海『初めてだよ』

一哉『え!?な、なんで…』

七海『普段のキャラのせいで、明るくて当たり前、七海ならできて当たり前みたいに思われてるとこがあるのかも。

でも…私本当は全然明るくないの。すごい負けず嫌いでネガティブ。試合前なんて震えが止まらないの…でも走ると風が私に話しかけてきてくれる…がんばれ!って…あ、ごめん!急に変な話しちゃって…』

一哉『意外…』

七海『ん?』

一哉『意外…あんなに明るい七海にこんな一面があるなんてさ…

すごい努力家なんだなって感心しちゃった』

七海『努力家…か…それも違うけど…まあいいや!……

あ!私あっちだから…じゃあね!!』

一哉『あ、あぁ?じゃあね…』

七海は駅に向かって走っていった。

俺は1人で帰りながら…七海の言葉を思い出していた。

『(風を切る感じが楽しい!風との一体感が気持ちよくてさ!!か…兵庫にいるあいつは…今頃走ってんのかな…俺が…走るのをやめた理由…か…)』

俺は家に着いてからもずっとそんなことを考えていた。

翌朝…学校へ登校してると優翔と七海に会った。

優翔『おはよ!一哉!!!』

七海『おっはよー!』

一哉『おはよう…』

優翔『一哉!真冬から聞いたけどサッカー部入るんだって!?』

一哉『は!?入るなんていってないし…(あの人勝手なことを…)』

七海『フッフッフ…優翔残念だったね!一哉は私達陸上部がもらったよ!時期エース間違いなし!!』

優翔『えぇ!?真冬…あいつ嘘ついたな…』

七海『一哉はインターハイ出場経験がある凄足の持ち主!』

優翔『えーまじかよー!じゃあ…なんでやめたんだ?全国狙えるのに…』

一哉『単純に疲れただけ…ってことにしとく』

優翔『なんだよそれー…』

七海『いつかしっかりした理由教えてくれるってさ!だから今はそれでいいじゃん?ね?優翔?』

優翔『まあ…それなら!いいよ…(笑)』

俺は転校2日目にしてなんとか友達ができていた。

途中で玲香も合流し、4人で登校するのがその日から

当たり前になっていった。




俺が転校して約3週間が経っていた。

先週はテスト週間でみんなも目が血走っていて怖かったが

テストも無事、みんな赤点にならずにすんだようだった。

テストが終わり…気づけばもうすぐ夏休みだった。

俺はすっかり馴染んだ陸上部で短距離を走っていた。

その時、同じ短距離の玲香と七海が声をかけてきた。

玲香『一哉…あのさ相談あるんだけど?』

七海『お願いだからできるだね了承してほしいな』

一哉『内容によるけど…』

玲香『あのさ…一哉の転校前の学校と夏休み合宿したいんだけど…事前にお願いしといてくれないかな…』

一哉『えっ…』

前の学校…つまり星稜高校とみんなが合宿をしたいと言い出した。

七海『だめかな…?』

一哉『でも…』

玲香『お願い!!』

俺は2人のお願いを断りきれず…合宿のことを事前に頼むことになった。

その日の夜…七海と玲香からLINEがあった。


LINE

七海『一哉!!!連絡してくれたかな?』既読

玲香『できれば今日中に頼みたいんだけど…』既読

一哉『まだ…わかったよ…今から連絡するよ…』既読


俺はそれだけ返信し…

星稜高校の陸上部仲間…里奈に電話を掛けた。


TEL

里奈『もしもし…』

一哉『もしもし…里奈…?』

里奈『一哉…どうしたの…?』

一哉『いや…久しぶりだなって…』

里奈『久しぶり…だね』

一哉『最近走ってる?』

里奈『うん…まあ…最初は一哉が抜けて皆ショック受けてたけど

今はなんとかやってるよ』

一哉『そっか…あのさ…お願いがあって…』

里奈『お願い?』

一哉『うん…顧問の沢木先生に…合宿を頼みたいんだ』

里奈『え、合宿?』

一哉『俺、こっちでも陸上部に入ったんだけど…その仲間が

インターハイ常連高校の星稜と合同でやりたいんだってさ…』

里奈『一哉も来るの?』

一哉『まあ…そりゃ部員だし行くよ』

俺がそう言った途端…里奈のテンションが上がった。

里奈『え!本当!?皆喜ぶよ!わかった!先生に頼んでおく!』

一哉『わかった…でよければ若杉第三高校の番号言うから

そっちに連絡するように頼んでくれる?』

里奈『わかった。番号は?』

一哉『03-××××-××××』

里奈『わかったよー!先生も一哉が来るならOKしてくれると思うから…また連絡するよ』

一哉『悪いね…じゃあ、また』

里奈『うん、じゃあね!』


俺は電話を切って2人にLINEをいれた。


LINE

一哉『まだ…わかったよ…今から連絡するよ…』既読

一哉『今、部活仲間に連絡して顧問に頼んでもらうよう頼んでおきました。恐らくOKもらえるとのことです』既読

七海『ありがとう!』既読

玲香『ありがとうー!!』既読夏休みに俺の転校前の学校、星稜高校との合同合宿3泊4日を

行うことになった若杉第三高校の陸上部。

俺は…正直最初は、あまり気が進まなかったが…昔のメンバーと

会えるのはやはり楽しみだった。

里奈ともあれからちょくちょくと連絡を取るようになり

昨日も電話をしていた。

TEL

里奈『一哉?今年の予選でるの?』

一哉『え、なんで?…出ると思うけど…』

里奈『そっちの予選いつ?』

一哉『合宿の前日』

里奈『嘘!?』

一哉『本当だよ?前日に予選やって…常連高校の星稜と

合同練習をするわけですよ』

里奈『なるほどね…皆、私達のこと知ってるのかな』

一哉『さあね…でも、まあ俺も楽しみにしてるから…』

里奈『一哉…絶対負けないからね…また2人で雄介のところへいこうよ』

一哉『…………あぁそうだな』

里奈『あ、そろそろ寝るね…じゃあ』

一哉『わかった。じゃあ』


その翌日…俺は転校初日に仲良くなって、今では大体一緒に行動をしている、櫻井七海、橋本玲香、北野優翔と今日も昼飯を食べていた。


玲香『一哉のさ?仲間ってどんな人が多いの?』

一哉『んー…一言で言うと…うるさい…かな』

七海『なにそれ!』

優翔『うるさい…か…七海がたくさんいる感じ?』

一哉『あ、そうそう。教室の七海がたくさんいる感じ』

玲香『あらら、それは大変だこと…』

七海『ちょ…皆酷くない!?』

一哉『まあまあ、冗談だよ…でも皆賑やかだよ』

玲香『楽しそうじゃん~仲良くなれるかな~』

優翔『いいなぁ…俺も合宿つれてってよ』

玲香『優翔はサッカー部のエースでしょ!(笑)こっち来たら

サッカー部が弱くなっちゃうし…合宿なんか行ったら…

真冬に怒られるよ~』

一哉『え、なんで怒られるの?』

七海『あ、そっか、一哉は知らないんだもんね!優翔はマネージャーの真冬ちゃんと付き合ってるんだよ~』

優翔『いや、わざわざ言わなくていいから!』

一哉『あ、玲香が言ってた彼氏って優翔のことなの!?』

玲香『え、そうだよ?言わなかった?』

一哉『いや…初しりなんですけど…』

優翔『え?何の話?』

玲香『一哉がね、昨日真冬を口説いてたの』

優翔『はぁ?』

一哉『玲香!!だから違うって!』

??『そうだよ~玲香、冗談って言ったでしょ~?』

いつの間にか背後に真冬がいた。

優翔『噂をすればなんとやら…』

一哉『あ、真冬さん…もっと強く玲香に言って下さいよ…』

玲香『真冬、どうしたの?…彼氏に会いに来た?』

真冬『いや、私の目的は西野君だよ。サッカー部のこと考えてくれたかな~?って』

優翔『あ!真冬!お前適当なこと言いやがって…一哉は陸上部入ったんだぞ?』

真冬『え~!そんなぁ!…入ってくれると思ったのに…』

一哉『いや…まあ色々ありまして…』

優翔『一哉はインターハイ出場高校が出身だから、サッカー部には入らなかったんだよ…まったく…』

七海『真冬ちゃん?その手に持ってるものは?』

真冬『あ、入部しないって言われたときは賄賂でも送ろうと思って…優翔から西野君はコンビニですませてるって聞いたからお弁当…

だけど入部済みなら…優翔にあげる』

玲香『いや、普通優翔に作ってくるもんだから!』

一哉『賄賂って…この人なんなんだ…』

優翔『わりぃな…一哉…こいつはこういう性格だから…きにすんな』

七海『あれ?玲香…あれって陸上部の中村美波じゃない?…1年の』

俺達は七海が指差す方を見ると…そこには確かに中村真春がいた。

玲香が真春のところまでいって話を聞いている。

玲香『一哉~真春が話があるんだってよ?』

一哉『え、俺?…なんで?』

俺はそう思いながらも呼ばれたので入口まで歩いていく。

一哉『んで…俺になんか用?』

美波『あの…』

真春『私が代わりに言おうか?真春』

美波は黙ってうなずいた。

玲香『一哉、短距離めちゃ速かったでしょ?』

一哉『いや…だから…』

俺が否定しようとすると玲香に睨まれたので…

一哉『ま、まあ…』

玲香『で、男女じゃ体の作り違うから難しいとこあるかもしれないけど、教えてほしいんだってさ…速くなる方法?みたいなのを…

そうなんだよね?真春?』

真春『はい…』

一哉『え…いいけど…』

玲香『…けど?何?』

一哉『真春ちゃんのフォームを見てると…直すところは結構あるし…結構厳しいこと言うかもしれないけど…それでもやる?』

真春『え………で、でも速くなりたいので…お願いします…』

玲香『だってさ?どうする?一哉』

一哉『まあ…覚悟があるならいいよ…』

俺がそう言うと真春は嬉しそうに

真春『はい!!お願いします!…玲香先輩ありがとうございました!』

真春はそういいながら走り去って言った。…途中でコケながら…。

一哉『まず…あのコケるドジさというか足腰の弱さを何とかしないとね…』

玲香『入部してまだ3週間ぐらいなのに…後輩に頼りにされるなんてやるね…さすが一哉』

一哉『とりあえず…厳しさは抑えるけど…どーなるかな』

俺と玲香はそう話しながら皆のところへ戻った。

優翔『どうしたの?その…真春ちゃん?って子』

玲香『一哉に弟子入りしたいんだってさ。教えてくれって頼みに来てたの』

七海『うわ!3週間ぐらいで弟子ができるって…すごいね…』

優翔『わかったか?真冬…これが一哉の実力』

真冬『むう…わかったよ…でも、いつでも転部まってるからね!』

そこでチャイムが鳴った。

真冬『あ!やばい!次体育だ!…じゃあね!優翔!西野君!』

皆『ばいばーい~』

優翔『俺達も授業の準備しなきゃな~』

俺達は自分の席にもどって授業の準備をした。

七海『あ!!生物の教科書忘れた…』

一哉『いいよ…見せるよ』

七海『さっすが~!一哉ありがとうー!!』

七海は俺にハイタッチを求めてきたので俺はハイタッチで返した。

まあ…いつも通り七海はクラスでは初日の帰りに見せたような

大人っぽいとうか大人しい一面は見せないのであった。

いつかチャンスがあれば聞いてみたい…。



そして…その日の放課後

部活が終わり各自でバラバラに帰っていく部員達。

俺も片付けをしていると…真春が近づいてきた。

真春『あ、あの…西野先輩…』

一哉『ん?あぁ真春ちゃん…やる?』

真春『は、はい!お願いします!』

一哉『ちょ、ちょっと待って?その雑誌はなに…?』

真春『え?雑誌…?…これはノート…あーー!!間違えた!!』

一哉『ね、寝ぼけてたの…?』

真春『恐らく…』

一哉『まあいいよ…じゃ、この紙使いなよ』

俺はそう言いながらノートを破って渡した。

真春『え!いや、でもそれじゃあ…』

七海『真春ちゃん~貰っときなよ?』

振り返るとそこには帰ったはずの七海がいた。

真春『櫻井先輩!?帰ったんじゃ…』

七海『私だって速くなりたいからね…自主練のついでに

一哉に教わろうと思って』

真春『そーなんですか?……じゃあ、西野先輩お願いします!』

七海『頑張ってね?西野…先輩!(笑)』

一哉『じゃあ、とりあえず100m走ってみて?』

真春が言われた通りに100m走る。

真春『先輩!どうでした…キャッ!』

真春が綺麗に転ぶ…。

一哉『だ、大丈夫?』

真春『は、はい…大丈夫です…』

一哉『それが1番遅くなる理由かな…』

真春『え?』

一哉『足腰が弱いんだよね…太股の筋肉というか…』

真春『なるほど…どうすれば…』

一哉『とりあえず…ウェイトトレーニングだよ』

真春『え、それって重量挙げとか…の…ですか?』

一哉『そう。レッグプレスっていうやつとか…』

真春は俺が言うことを真剣に書き留めている。

一哉『これはすぐ慣れるけど…体力がまだ少ないね』

真春『う…はい…』

一哉『まあ、焦っても仕方ないから…トレーニングメニューだけ言うから…できるだけ毎日やってみて?』

真春『わ、わかりました!』

俺は彼女に一通りメニューを伝えた。

一哉『星稜行くと結構厳しいから…体力ないと死ぬよ』

真春『えー!……が、がんばります…』

俺はその日の練習を終えて七海に声をかけた。

一哉『七海?俺達帰るけどどうする?』

七海『え、もう?…じゃあ私も帰ろうかな…あ、待って!

一哉400m勝負しようよ!』

一哉『え!?なんでよ…』

七海『星稜の実力体感してみたいの』

真春『あ!じゃあ、私も走りたいです!』

七海『もちろんいいよ!真春ちゃん!じゃ、やるよ!』

一哉『またかよ…』

俺は結局2人にしたがって走った。タイムを測るために1人ずつ。

真春『え!?速…西野先輩…46秒49…櫻井先輩1分10…』

七海『はあ!?速すぎない!?』

一哉『ふう…で、真春ちゃんもやるんだよね?』

真春『はい!』

七海『嘘でしょ……一哉…48秒05…真春ちゃん…1分48』

真春『は、速い…これで全国の力…』

俺達はそのまま一緒に帰ることにした。

七海『まさか…あんなに速いとは…好一もビックリするわけだ…』

一哉『そこまでじゃないって…』

真春『星稜って遅くて何秒なんですか?』

一哉『今はわかんないけど…俺の知ってる限りでは1分20秒くらいかな』

七海『え!?うちの高校で速い方の私と玲香の普通の記録…』

一哉『ちなみに…俺が知ってる中で女子の俊足は57秒53だよ

男子の俊足は…46秒28』

2人『えーー!!!!!一哉(西野先輩)よりも速い人がいる!?』

一哉『あの2人がいまだにやってるかはわかんないけど、

女子はまだやってるらしいから…』

七海『え、えー!!ど、どんな人?』

一哉『うーん……読書好きの大人しい人』

七海『な、なにそれ…文化系なのに速いの?』

一哉『去年インターハイ2位の人だよ?戦わなかった?』

七海『………あ!!!あの人!?髪の長い…』

一哉『あ、多分その人であってるよ』

七海『名前は確か………堀…』

一哉『里奈』

七海『そう!堀里奈!!あの人知り合いなんだ…』

真春『(ハイレベルな会話過ぎてついていけない…)』

一哉『男子の名前は清水雄介』

七海『その人は何位?…一哉は?』

一哉『同じく2位…俺はインターハイ当日怪我で欠場したんだよね』

真春『2位が2人…西野先輩も出れてれば2.3.位…』

七海『私今になって合宿怖くなってきた…』

一哉『まあ、そー言わず……あいつらも楽しみにしてるって言ってたし…』

🎶♪🎶~♪🎶♪🎶♪

そこで俺のスマホが鳴った。

七海『あ…この曲…』

一哉『あ、ごめん……噂をすれば…』


TEL

里奈『もしもし?ごめんね…今大丈夫?』

一哉『うん…大丈夫だよ』

里奈『先生がね?合宿場所は学校でいいか…だって』

一哉『あー、いいんじゃない?』

里奈『あ、ほんと?じゃあ、そうするね…今部活?』

一哉『いや、終わって帰ってるとこ…丁度里奈の話してたとこ』

里奈『は?なにそれ…』

一哉『インターハイ2位の実力者の名前を聞かれたから答えたの』

里奈『あーなるほど』

一哉『あ、ちなみに聞いてる本人は4位だよ』

里奈『え、もしかして…櫻井七海さん?』

一哉『え、なんで知ってるの?』

里奈『そりゃ、ライバルになる人達の名前ぐらい知ってるよ』

一哉『その人達と合宿行くから…楽しみにしてて』

里奈『わかった…じゃ宿舎の件はよろしくね』

俺はそう言いながら電話を切った。


七海『一哉、めっちゃ嬉しそうだし楽しそうに話してたね』

一哉『え、そう?懐かしいからかな』

真春『好きなんですか?…その里奈さんのこと』

一哉『違うよ…それに里奈は雄介と付き合ってるね』

真春『え!?2位カップル!?』

一哉『そういうことになるけど…』

七海『すごいな…私も負けてられない…』

真春『ですね…体力ないなんて論外って言われてしまいそう…』

一哉『よし…頑張ろう。真春ちゃん、明日もしっかりやるよ?』

真春『は、はい!お願いします!…あの…1ついいですか?』

一哉『ん?』

真春『先輩達のなかで2人だけ私に『ちゃん』付けするんですけど…呼び捨てにしてください…』

一哉『あ、そうだっけ?』

七海『確かにちゃん付けちゃうね…』

一哉『まあ…じゃあ…真春で』

七海『そ、そうだね…』

真春『ありがとうございます!!じゃあ、私はここで!』

七海『え!真春ちゃ…真春もここなの!?私もなんだ~!』

真春『本当ですか!?偶然ですね!…西野先輩!お疲れ様でした!』

一哉『おう、真春、七海…じゃあね。』

俺は2人とわかれた。


俺は耳にイヤホンをつけて音楽を聞き始めた。

『(いつもの夏と違うんだ…か……俺も…今年の夏は

いつもと違うんだよな…別の意味で…)』

今年の夏は…転校して…友達増えて…でも…。

音楽をスキップして次の曲を聞く。

『(君は君らしく生きて行け…か……俺は自分らしく生きていけってあいつに言ったのに……なんであいつは…)』

俺は…先ほど1つ小さな嘘をついた。

里奈と雄介が付き合っていると…。

確かに付き合っていた…だけど…実際は……。


『(既読はやいな…まったく…)』



そして、翌日の部活で顧問から、星稜高校との3泊4日の合同合宿が決まったことを知らされた。


俺は…また星稜高校に4日間だけ戻ることになったのだった。




インターハイ予選同日…つまり合宿前日…

朝から若杉第三高校の調子がとことん悪かった。

砲丸投げはいつもより平均5mも短い記録となったり

長距離選手のタイムも1分近く最高記録から離れている

合宿のことを気にしているのか。

それとも緊張をしてしまっているのか…ベストコンディションでないメンバーがほとんどだった。

どんな理由があろうとも…試合に本気で…本来の力で望めない…

それでは…インターハイには通用しない。

俺は…それをよくわかっていた。

第三高校の陸上部員は全部で40人。短距離選手は5人しかいない。

メンバーは俺、櫻井七海、橋本玲香、中村真春、成宮好一…この5人中結果が残ってインターハイに出場したのは4人。

真春以外の4人…俺、七海、玲香、好一…。

短距離メンバーの調子はよかった。

しかし、もう一度言うが…長距離ややり投げ、砲丸投げ、ハードル…その他諸々の

結果はボロボロだった。

正直…若杉第三高校は…星稜高校の練習に…ついていけないだろう。

そう思ってしまうほどだった。

俺達は大会を終えて帰りのバスでそのまま兵庫まで向かうことになっていた。

バスのなかでは…悔し泣きをするメンバーも数人いたがほとんどが

涙を流していなかった。むしろ…言い訳をしながら笑っていた。

俺はそれがはっきり言って我慢できなかったが…星稜で実力の違いを思い知れば少しは…変わるんじゃないか、と思ったからだ。


七海『か、一哉?さっきから…顔が怖いよ…?』

一哉『え、そう?普通にしてるつもりなんだけど…』

真春『いや怖いですよ…先輩…』

玲香『試合結果に不満でもあるの?…優勝したくせに~!』

そう…俺はダントツの速さで200mと400mを軽々優勝をした。

好一『まさか…あんなに速いなんて…』

真春『だから言ったんだよ!先輩めちゃくちゃ速いから気を付けてね!って…!』

好一『いや…まさかあんなに実力の差を感じるとは思わなくて…ついでに文句を言えば初日に走ったとき…本気じゃなかったんですね…』

一哉『そりゃあな?…去年のインターハイ出れなくて

悔しくて辞めてたんだから…しかも、普通のローファーで…

下手にやったらそれこそ怪我するだろ?』

七海『でも…あれで我が陸上部男子短距離唯一の選手で

上位俊足の好一に勝つんだから…』

玲香『本当に恐ろしい選手が入ってきたものだよね…』

七海『でも…その一哉より上位選手がいる学校へこれから行くんだよね?』

一哉『そーだよ?…ビートランニングとか基礎練習ひたすら

繰り返す練習だけどね』

七海『ビートランニングをたくさん?…1回で多くやっても

変わらないんじゃ…』

一哉『もちろん。だから毎日同じ量をやるんだよ30分2セット…まあだから1時間だね』

玲香『1時間!?』

一哉『悪いんだけど…星稜の練習はそんなのばっかりだよ?』

玲香『う、嘘でしょ…私達の練習は実践練習ばかりなのに…』

一哉『まあ…星稜の練習は、ただただ疲れるし…筋肉をいじめる練習ばっかりだよ…明日からの練習は気を付けた方がいい…

特に堀里奈。あいつが部長になってから練習は余計にきつくなったって昨日LINEで仲間に聞いた』

好一『インターハイ2位の実力者…』

七海『あとどれぐらいで着くかな?』

一哉『んー…今が静岡だから…あと2時間もしないんじゃない?』

好一『あ、その前にトイレ休憩ですね』

バスがそこで止まり、メンバー達が降りていく。

七海『一哉?降りないの?』

一哉『まあ、トイレ行きたくないし…』

🎶♪🎶♪~🎶♪🎶♪🎶~俺のスマホが鳴った。

七海『その音楽好きなの?アーティスト?』

一哉『うん…このアーティストの曲…応援ソングになるものが多くて好きなんだよ』


俺はそう言いながらも電話に出た。

電話の相手はもちろん里奈。

TEL

一哉『どうしたの?里奈?今俺達静岡についたところ…休憩中だけど』

里奈『あと1時間~2時間ぐらい…かな?』

一哉『うん、多分ね』

里奈『電話した理由わかるよね?』

一哉『………あ、結果?』

里奈『うん。そうだよ?で若…なんちゃら高校の結果は?』

一哉『若杉第三高校ね…インターハイ出場は4人…しかも全員短距離だよ…里奈と同じね』

里奈『え!?4人!?…一哉は?』

一哉『もちろん優勝。インターハイ出るよ』

里奈『おーさすが…じゃ、インターハイの会場でまた会えるね』

一哉『里奈がマークしてた櫻井七海も出るよ』

里奈『さすがだね。合同練習でお手並み拝見…私…楽しみにしてるから…一哉が帰ってきて私達とまた練習してくれるなんて思ってもなかったから…』

一哉『…まあ、今度はライバルとして行くんだけどね…

ていうか里奈…昨日…祥也に聞いたら…里奈が部長になってから

余計に練習きつくなったて聞いたぞ…』

里奈『祥也…余計なことを…変わらないよ。本当に…でも、きつくなったとしたら一哉のせいだよ…怪我って言う理由だけでやめてさ…』

一哉『…ごめん。まあ許してよ…また戻ってきたんだからさ?』

里奈『なまってたら…許さないからね?……あ、コーチが呼んでるから切るね?…じゃ、待ってるよ』

里奈が電話を切ったので俺もスマホをポケットにしまった。

七海『里奈さん…?』

気づくと…いつの間にか皆が戻ってきていた。

一哉『聞いてたの?』

七海『まあ、少しだけ』

玲香『え、里奈さん?って誰?…七海の知り合い?』

一哉『まあ、去年のインターハイ決勝で戦ってるからね』

玲香『あ、インターハイ2位の人?』

七海『そうそう…そのひとに会うの緊張するんだよね』

一哉『大丈夫。インターハイに七海もでるって言ったら

さすがだねって言ってたよ?しかも、七海のこと

マークしてるって言ってたし』

七海『そ、そんな…恐れ多い…』

真春『櫻井先輩すごい!!!!』

俺達はバスのなかで喋ることが止まることなく延々と話していた。


ー2時間後ー

ついに…俺の元高校…星稜高校へ到着した。

結局ついた時間は18時半。

一哉『(懐かしい…1ヶ月いなかっただけでこんなに感覚懐かしく思うんだなぁ…)』

七海『(ここが…一哉の故郷…元通ってた高校…)』

玲香『一哉?どこにいけばいいの?』

一哉『まあ…皆練習場にいると思うよ…練習場はこっちだよ。(やばいな…練習場にいくのは…1年半ぶり…かな…いや…あのときもきたから…1年ぶりか…)』

俺は皆をつれて陸上部の練習場へと向かった。

すると…前方に見覚えのある顔が何人かいた。

……陸上部のメンバー達が基礎連をしていた…。

俺は陸上部のメンバーに声をかけた。

一哉『東京都立若杉第三高校陸上部です!明日からお世話になります!!!!』

俺がそう言うと…陸上部のメンバーが一斉にこちらを見る。

部員A『あ!!!西野!!!』

部員B『なつかしいー!!』

部員A『里奈から聞いてたけど本当にまた始めてたなんてな!』

一哉『あぁ…久しぶりだな…』

祥也『一哉、ひさしぶり』

一哉『あ、祥也……あの…皆が固まってるけど…』

祥也『あ、おいお前ら!こいつは…一応元星稜のエース3人のうちのもう一人…西野一哉だよ』

祥也が固まってるメンバーにそう言うと…

一同『お疲れ様です!!!』

どうやら…今年入った新入生達のようだ。

俺は今年に入ってから部活に顔を出したことがないので

俺が知られていないのも無理はない。

??『一哉…』

俺が振り返ると…そこにいたのは………例の堀里奈だった。

一哉『里奈…』

里奈『お帰り…というかようこそ?なのかな…とりあえず挨拶しなきゃね…顧問の先生呼ぶからさ体育館行っててよ』

一哉『あぁ、わかった…皆、体育館にいけだってさ』

玲香『わ、わかった…でどこ?』

一哉『こっちだよついてきて?』

俺は皆をつれて体育館までの道を歩いた。

七海『里奈さん…だよね?…』

一哉『そうだよ…相変わらず変わってなかったけど』

七海『でも、一哉…こっちでも大人気じゃん?』

一哉『そうなのかな…そうでもないよ…特に里奈は…』

俺はそこまで言って口をつぐんだ。

玲香『里奈さんと何かあったの?』

一哉『…なにもないよ…さあ、ここだよ…中で待ってればいいと思うから、適当に荷物を置いて中央に待機してて』

玲香『………わかった。皆!入るよ!』

俺達は体育館の中へ入り…星稜の皆が来るのを待った。

……

10分後、皆がやって来た。

前に里奈が立つ。

里奈『若杉第三高校の皆さん、お疲れさまです

私が兵庫県立星稜高校陸上部の部長をやってます…堀里奈です』

玲香『若杉第三高校陸上部部長の橋本玲香です…

今回は合宿を承諾していただきありがとうございます』

里奈『こちらこそ…私達と合同練習を願っていただけて光栄です…では私達の顧問から挨拶があるのでお聞きください』

沢木『えー…若杉第三高校の皆さん…遠いところをわざわざお越しくださいましてありがとうございます

私が星稜陸上部の顧問をやってます、沢木です

今日の練習はもう終わりましたので、明日からの練習…よろしくお願いします。宿舎はこの校舎なんですが、部屋は部長の堀から

案内がありますのでそちらにしたがってください…

では今日から3泊4日間よろしくお願いします』

里奈『ということなので…よろしくお願いします!』

星稜『お願いします!!!』

玲香『よろしくお願いします!』

若杉『よ、よろしくお願いします!』

一哉『(揃わない…)…で、里奈…部屋どこ?荷物を置きたいからさ』

里奈『うん、今から案内する…けど、一哉はまず沢木先生のとこいってきて…呼んでたから』

一哉『え…わかった。じゃあ…皆の案内よろしく』

俺は皆とその場で分かれ体育館のステージにいる沢木先生のもとへ行った。

沢木『西野…久しぶりだな』

一哉『はい…その節はお世話になりました』

沢木『お前が…また陸上を始めたなんて驚きだよ』

一哉『まあ…今の仲間に誘われて…』

沢木『…新しい場所だから…清水のことを思い出さなくて済むから…できるのかもな』

一哉『…』

沢木『……おっと…悪い…まあ…今日から…また短い間だけどよろしくな』

一哉『…はい』

俺は沢木先生に軽く礼をして体育館を後にした。

一哉『(俺も…先月までここにいたんだよな…)ハァ…懐かしいな…』

里奈『なにひとりで黄昏てるの?』

一哉『り、里奈…』

里奈『怖いものを見るような顔しないでよ…久しぶりに会ったのに』

一哉『あ…ごめん。でも…懐かしいな』

里奈『だね…行こう、部屋に案内するよ』

一哉『部屋って教室だろ?』

里奈『そうだよ?私達が練習前に必死に掃除と片付けしたの』

一哉『なんかごめん…』

里奈『まったく…まあ…変わってなくてよかった』

一哉『そういえば…インターハイ出場おめでとう』

里奈『あぁ…ありがとう…一哉も…ね』

俺達の間にしばらく沈黙が流れた。

里奈『一哉の…部屋は14HR…1回だよ』

一哉『わかった…部屋が一緒なのは?』

里奈『私』

一哉『!!!!』

里奈『悪い?幼なじみなんだし…いいじゃん』

一哉『いや…悪くはないけど…でも…男女だし…』

里奈『小さい頃から一緒にいるし…今ごろ気にする?それ』

一哉『わかったよ…じゃあ行こうよ』

里奈『うん…』

俺達は1-4の教室にやってきた。

一哉『おー、しっかり掃除されてるじゃん』

里奈『でしょ?各メンバーが自分が泊まる部屋を掃除したの』

一哉『は!?つまり一人でここを!?』

里奈『祥也が手伝ってくれたけどほぼ…ね』

一哉『そっか…』

里奈『じゃ、荷物おいたら食事だよ…屋上いくよ』

俺は里奈につれられ屋上へ行った。

七海『あ、一哉~!遅いよ!……あ、里奈さん…』

里奈『櫻井七海さんだよね?』

七海『は、はい!』

里奈『同級生なんだからタメ口でいいよ?一哉にするみたいにさ』

七海『えっと…いや…あの…』

玲香『七海…あんた緊張しすぎ…』

七海『だって…あの里奈さんだよ?』

一哉『七海はずっと里奈さん…里奈さんって言ってたんだよ』

里奈『そんな大袈裟な…』

真春『あ…あの…り、里奈さん!』

里奈『あなたは…?』

一哉『あ、1年の中村真春…短距離選手だよ』

里奈『あ、そうなんだ…よろしくね真春ちゃん』

真春『はい!よろしくお願いします!…あの…』

里奈『ん?』

真春『…清水雄介さんという方はどちらですか?』

里奈『!!!』

一哉『!!…………ま、真春…雄介は…今留学中でいないんだ…』

真春『え、そーなんですか……インターハイ2位カップルみてみたかったのに…』

里奈『…残念だね…ごめんね』

一哉『また今度…な』

俺と里奈は少し気まずい雰囲気になってしまった。

しかし、楽しい食事のおかげで多少気まずさが柔らかくなった。

食事を終えてシャワー室を順番に使って…

部屋に戻ると丁度シャワーから出てきた里奈と鉢合わせた。

里奈『…』

一哉『…』

俺達は気まずいまま部屋にも入った。

長期休みの学校には泥棒や不法侵入者などが入ることがあるため

各部屋用が済んだら鍵を閉めて簡易的なカーテンで入り口の窓を閉めることになっている…らしい。

里奈『…もう外出ることない?』

一哉『多分ね…』

里奈『ねぇ、一哉…』

一哉『…ん?』

里奈『部屋抜け出してさ…雄介のところ行こうよ…』

一哉『!!!』

里奈『真春ちゃんが言ってたように…2位カップルと一哉…

3人揃わないと…陸上部じゃないよ…行こ?』

一哉『…わかった』

俺達は学校をこっそりと抜け出し…

雄介の……墓へとやってきた。

里奈『雄介…一哉が帰ってきたよ…』

一哉『……』

里奈『やっと…3人揃った…』

一哉『…だな…俺はあの日以来…部活に顔を出さなくなったし

学校もしばらく休んでたから…ね』

里奈『雄介は…ずっと待ってたのに…』

一哉『俺は……』


それ以上…俺は言うことをためらってしまった。






私は一哉に用があって…一哉と里奈さんが泊まるという

1-4の教室に向かっていた。

七海『(あの2人…夕食のときの様子がおかしかった…

一哉が走るのをやめた理由がわかるかもしれない…)』

私がなぜこんなに理由が知りたいか…それは単純な理由だった。

七海『(あんなに速くて…あんなに楽しそうに部活をやるのに

なんで…この星稜にいた時に走るのをやめてしまったんだろう……)』

私はいつもの一哉の練習の様子を思い出す。



七海『一哉!インターハイ間でもう少しだね!』

一哉『うん…久しぶりだけど勝てるかな(笑)』…


七海『私が走る理由はそれだけど…一哉は?』

一哉『なんだろうね…いつか教えるよ』


…何度思い出しても…部活を楽しんでた一哉と

過去の話をするときの一哉は真逆の顔をしている。

インターハイ1位2位のレベルの一哉がやめるなんて…

清水雄介という…里奈さんの彼氏がなにか…

一哉の過去を知る鍵を握ってる…私はそう思っていた。


私は迷いながらも1-4の教室にやって来た。

しかし…鍵もかかっていて返事もない…寝てるか…いないか…。

七海『(もしかして…どこかに抜け出した…?)』

私は…抜け出す訳にもいかず…明日の練習終わりに

一哉に聞いてみよう…と私は思った。




私は寝ようとしたが…環境が違うせいで中々寝付けず…

屋上へ出た。






俺達は…学校を抜け出して

清水雄介の墓へとやってきていた。


里奈『やっと…3人揃った…』

一哉『……里奈…』

里奈『…雄介はずっと待ってたのに…一哉は来てくれなかった…』

一哉『…ごめん…』

里奈『なんで…来てくれなかったの…?』

一哉『仕方ないんだ……いや…怖かった…ごめん』

里奈『私だって怖かったけど…行ったんだよ…それで…雄介が本当に死んでて…』

一哉『…』

里奈『私…一哉が待っててっていったから…霊安室の前で…ずっと…』

一哉『…ごめん…本当にごめん…』

里奈『…なにがあったの…』

一哉『!』

里奈『一哉が嘘ついてるぐらいわかるよ…』

一哉『……』

里奈『教えてくれないの…?』

一哉『今は…教えれない…必ず時が来たら言うから…』

里奈『…約束だからね……………………ハァ…帰ろうか…』

一哉『ごめん……そう…だね』

俺は里奈を連れて学校へ戻る道を歩いていた。

里奈『……明日からの練習覚悟してよ』

一哉『…あまり激しくやらないであげてくれよ…特に真春とか…』

里奈『真春ちゃんのことすきなの?一哉は』

一哉『バカなこと言うなよ…俺はずっと…』

里奈『ずっと…?』

一哉『いや…なんでもない』

里奈『そっか…それも必ず教えてもらうからね』

一哉『…約束…するよ』

里奈『うん…』

俺はまっすぐ…学校までの道を歩いていた。

しかし、里奈は立ち止まってしまった。

一哉『里奈?』

里奈『疲れた。おんぶして』

一哉『はぁ!?里奈…あなた仮にも陸上部のエース兼部長でしょ…これくらいで疲れてどーすん…』

俺があきれてそう言っているのに里奈が遮るように俺に言った。

里奈『じゃあ…雄介のことか今言いかけたことをおしえて』

一哉『え…』

里奈『私だって…疲れてなんかないよ。部長兼エースだから

これくらいで疲れるわけがない…でも…教えてほしいから…』

一哉『…それで…俺が教えると思う?』

里奈『ハァ…たよね…でも、じゃあ、おんぶして』

一哉『なんでだよ…疲れてないって今…』

里奈は俺の背中をバシン!と叩いた、

一哉『いってぇ…』

里奈『男ならはっきりどっちの選択肢にするか決めて』

一哉『そう言えばいいじゃん…なのになんで叩く必要があるの…』

俺は文句を言いながらも背中を差し出した。

里奈『…そんなに言いたくないんだね』

一哉『…まあね…』

俺は里奈をおんぶしながら、歩みを進めた。

一哉『う…なんか重くなったような…いてっ!!』

里奈が…俺の背中に拳を入れた。

里奈『なんか言った?』

一哉『なんでもないです…』

里奈『重くなったんじゃない。筋肉ついたの』

一哉『やっぱり重くなったんじゃ…痛って!』

里奈は再び俺の背中に拳を入れた。

里奈『そんなんだから…モテないんだよ…』

一哉『うるさい…余計なお世話…』

その後俺達はしばらく無言のままいた。

一哉『里奈?』

里奈『zzz…』

一哉『(寝てるし……好きな人…ね……)言えるわけないじゃん…』

俺はそう思いながらも学校につき、部屋に里奈を寝かせた。






私は一哉が何を隠しているのか…知りたい。

知りたいのに一哉は…時期がきたら…と教えてくれない。

普段の私なら絶対に言わない甘えた部分を見せて

おんぶか言うか選べと言ったのに…教えてくれない。

里奈『(そんなに隠したいこと…なんなんだろ…)』

一哉はデリカシーの欠片もない。

だけど…部活をやっているときは楽しかった。

私と一哉と雄介がいつも競っていて…。

インターハイ前日までは…楽しかったのに…なんで…。

インターハイが終わって帰りの学校で

私は雄介に告白された。

私は…迷いながらもOKをして雄介と付き合っていた。

しかし…あの事件が起きて…雄介はいなくなってしまった。

私は一哉に電話して『助けて…』と訴えた。

一哉『霊安室の前で待ってて』たしかにそう言った…

なのに…来てくれなかった。

結局…私は雄介が霊柩車に連れていかれる雄介を見送って

家に帰った。家に帰ってからも何回も一哉に電話した…。

なのに…出てくれなかった。

それ以来…一哉とは連絡がつかなかった。


しかし…3週間ほど前、一哉から連絡があって

やっと話してくれるのかなっておもったのに

合宿の申し込みで…でも、陸上をまた始めたということ

一哉が来るということを知って…私は合宿中に必ず真実を聞き出すことを決めていた。

でも…初日に聞いても結局ダメだった…。

私は一哉の背中でずっとなんでなのかを考えているうちに…

眠くなってしまい微睡みのなかにいた。

その時…

一哉『言えるわけないじゃん…』

そうつぶやく一哉の言葉が聞こえた。

私は…なんでそんなに言いたくないのかを聞きたかった。

しかし…寝たふりをしていたせいで…きけなかった。









俺は里奈を部屋に寝かせてから…

澄んだ空気を吸うために屋上へ向かった。

屋上の扉を開けると…そこには…七海がいた。

七海『あれ…一哉…』

一哉『七海…なにしてんの?』

七海『環境が違うせいで寝れなくて…』

一哉『俺も…今日はインターハイで疲れてるはずなのにな(笑)』

七海『あ、そっか…今日がインターハイだったんだよね』

一哉『そうだよ…』

一時の沈黙が流れる。

七海『一哉…聞きたいことがあるんだけど…』

一哉『ん?何?』

七海『雄介さんとのこと…』

一哉『…』

七海『さっき…真春に聞かれたとき、2人とも様子がおかしかったから…なんかあったのかなって…』

一哉『…まあ色々…ね』

七海『なにがあったの…?……なんで一哉は過去の話をしないの?』

一哉『ごめん…これは言えないんだ…自分の罪が消えるまで…

言うわけには…いかないんだ…』

七海『罪…?』

一哉『俺は……雄介を…………』

七海『…』

一哉『ごめん…やっぱり言えない』

七海『そっか………(一哉のこんな顔…初めてみた…)』

一哉『どうした?』

七海『あ、ううん!なんでもない!はぁーなんか全然眠くならないや…』

七海がそういった時、屋上の扉が開いた。

玲香『あれ?…2人とも…なにしてんの?』

七海『それ私達の台詞だから!』

玲香『私は…眠れなくて…』

玲香がそういった時…またもや扉が開いた。

真春『え!あ、あれ!?皆さん…なんでここ…』

3人『だなら、こっちの台詞だから!』

真春『そ、そんな怒らなくても……』

玲香『ごめんごめん…私は今来たとこだけど、同じこと言ってたから…つい便乗しちゃった』

七海『みんな眠れないんだね…』

一哉『少し話そっか?』

七海『いいね!ガールズトーク!』

真春『七海さん…西野先輩…男ですよ……』

七海『あ!………まあいいじゃんいいじゃん!小さいこと気にせず

一哉も今日は女ってことで!』

一哉『はあ?…なんで俺が…合わせるんだよ』

玲香『簡単だよ…男子1、女子3…さあどちらに合わせるのが妥当でしょう』

真春『はい!女子です!』

玲香『真春正解~!ってことです』

一哉『合わせないけど…話は聞くよ』

七海『明日の練習が私は楽しみだな』

一哉『あ…里奈がさっき明日バシバシやるって言ってたよ』

真春『えー…そ、そんな…』

玲香『いいじゃん?やるだけやってみればさ』

一哉『まあ…そう笑っていられるのも今のうち…』

真春『私聞きたいことがあるんですけど!』

一哉『ん?どした?』

真春『皆さんは好きな人いますか!?』

3人『!?………ノーコメント』

真春『そんな口を揃えて言わなくても…』

七海『そういうのは本当のガールズトーク!のときにね…』

真春『まあ…女子の好きな人なんていえませんよね……じゃ、一哉先輩だけ答えてください』

七海『あ!それナイスアイデア!』

玲香『答えて!……やっぱ真冬?』

一哉『だから…なんで玲香は真冬さんを推すんだよ…優翔の彼女だろ……』

玲香『彼女じゃなかったら好きになるの?』

七海『え!真冬ちゃんが好きなの!?』

一哉『…いや違うから!』

真春『あ、い、いま!間が空きましたよ!?』

七海『やっぱり…?』

一哉『本当に真冬さんは違うよ』

七海『真冬さん…は?ってことはいるの?』

俺は観念して

一哉『…いるよ…』と伝えた。

3人『キャー!!!!』

一哉『静かに!夜!…』

七海『いるんだ!(……)』

玲香『へぇ…で、誰?』

真春『七海先輩ですか?』

一哉『あのなぁ…』

玲香『あ!初日に、本当に惚れてた感じ!?』

七海『え、そ、そんなぁ…急に言われても…』

一哉『言ってないから!』

七海『(そんなに強く否定しなくても…)』

一哉『いるけど…それは俺の秘密に繋がるから…言わない』

玲香『ふーん…(里奈さん…だな…七海…元気ない…)』

真春『え、でも…じゃあ…玲香さん?』

玲香『ひぇ!?』

七海『玲香どうしたの(笑)』

一哉『ノーコメント…ただし違う』

玲香『ですよね…(笑)』

真春『あとだれだろう…あ!!』

真春が言おうとした瞬間…扉が勢いよく開いた。

沢木『お前ら…何時だと思ってるんた…?西野…星稜の練習をなめてるんじゃないか?こんなに夜遅くまで起きてて…倒れても知らんぞ!!早く寝なさい!!!』

沢木先生は扉を勢いよく閉めて戻っていった。

一哉『だってさ…部屋に帰るよ…じゃあね』

俺達はバラバラに自分の部屋に戻っていった。

部屋を開けると…そこには里奈が眠っていた。

一哉『(好きな人…か…里奈…ごめんな…言ってやれなくて…)』

俺は…そう思いながら眠りについた。













翌日…9時から星稜と第三高校の合同練習がはじまった

予想通り…真春は…開始30分で疲れはじめている…。

まだ七海や玲香は無事のようだが…このままだとおそらくもたないだろう。

今回のビートランニングは各種10×2を8種類

里奈『ビートランニング…軸!2セット目開始!』

一同『はい!』

有名な男性アーティストグループの曲が流れる。


1時間後…

里奈『ビートランニング…最大振幅!1セット目開始!』

一同『はい!』

と…そこで…真春が倒れた。

沢木『第三高校!休むな~!まだ始まって100分だぞ!』

真春『…は、はい…』

一哉『(真春…)真春…無理しなくていいから…自分のペースでおととってやってごらん』

俺は真春に耳打ちしてビートランニングをつづけた。


50分後……

里奈『ビートランニング加速!2セット目開始!』

一同『は、はい!!』

秋葉のような音楽が鳴り響く

そこで…好一と真春がついに倒れた…。

沢木『第三高校…大丈夫なのか…もういい、休んでろ』

沢木さんにそう言われ、俺と玲香で2人を運んで

俺達はまたビートランニングに戻った。



里奈『そこまで!各自ゆっくりと歩きながら集合してください』

沢木『午前中はここまで。午後は各種目ごとの練習を行う…以上』

里奈『ありがとうございました!』

一同『ありがとうございました!』


午前中はビートランニングで練習が終わった…

初日から2人が倒れたか…あと2日…大丈夫かな…。

そう思うおれだった。

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