43.没入感の作り方

今日のテーマは没入感の作り方です。が、吾輩がそのコツを伝授してしんぜよう、みたいな回ではないです。つーか僕が教えてほしいくらいだ。


どちらかというと、わからないなりに色々整理してみよう、みたいな回です。そんなんでよければ続きをどーぞ。


で、没入感。


小説が賞賛されるときに時々用いられる言葉です。読み手がその世界に本当に入り込んでいるかのように感じる、あるいは登場するキャラクターに相当に感情移入したり同調したりするように感じるやつですね。


没入感があるかどうか、の評価はわりと小説全体の評価と連動しているようにも思えます。没入感があるけどつまらなかった、みたいな評価はあまり聞きません。没入感があった、と評されればもうその時点でその作品は面白かったと言われているようなものです。


逆に、文章は綺麗なんだけど、キャラは好きなんだけど、ストーリーはまとまってるんだけど、この小説はつまらなかった、みたいなのは表現としてそんなに違和感はないです。


つまりですよ、没入感を醸し出すテクニックを身につけることこそが、自分の作品を面白くさせる最上の近道かもしれないわけです。異論は認めます。


じゃあどうやったら没入感は増すのか。……これがわからない。


試しに「没入感」で検索してみたのですが、VR機器の購入をオススメされてしまうだけでした。なんとかそのテクニックを説明するページを見つけたと思ったら、


「シーンをうまく描くことによって、読み手を物語の中へ引きずり込む」


としか書かれてなくて、うん、もうあれだね、その記事を東京湾に沈めてやりたいと思ったね。こっちはその方法を訊いているんじゃい、と。


しょうがないのでカクヨムに載っている作品を手当たり次第に読んでみました。そしたらやっぱり感触が作品ごとに違うわけですよ。あ、この作品は潜りやすいな、とか、うーん、入っていけんな、みたいな感触が。


もちろんここら辺はかなり読み手の感覚に依存するものだという気もします。大人と子供で没入できる文章は違うでしょうし、ラブコメ好きとホラー好きでも同様でしょう。


ただ、その理由を努めて言語化しようとメモってみたところ、ジャンルや嗜好に関係なく普遍的と言ってよさそうな内容も幾つか残りました。以下、そういった仮説達になります。(あくまでも仮説です。)ちなみに変な先入観が邪魔しないように、フォロー外の完全新規の作品ばかりで試しています。


【ストーリー構造に関すること】

◆主人公がはっきりしていると没入感増

・一番大きいのはこれかも。3話目とか序盤で視点が変わるとかなり引きはがされた感あり。


◆主人公の目的(課題)がはっきりしていると没入感増

・自分だったらどう対処するだろう、と読者に考えさせることが没入感の正体として一番近い表現かもしれない。

・早めに主人公の向かう先を把握したい。(魔王を倒すのか、誰かと結ばれるのか、危機を脱するのか、犯人を捕まえるのか。)

・途中でそれが変わるのはあんまり問題ない気がする。(あるいは大目的があって、それに小目的が幾つかぶら下がってると話が展開しやすい?)


◆主人公の対処に納得いかないと没入感減

・課題の対処が予想と違ってても、納得できれば没入感は維持される(たぶん)。納得できないと減る。

・納得いかない理由は大抵この3つか。

1.提示する材料不足

2.導き出された対処が論理的でない

3.対処法が読み手の嗜好に合ってない(これはしょうがない)

⇒1、2は書き手側で工夫できる余地があり。

・課題が勝手に解消されてしまうパターンもあるが、これも読者の考えが無駄になるので没入感は減りそう。


【文章に関すること】

◆必要以上に文章に凝る(特に課題や材料提示の段階で)と没入感減

・ルビ芸とか盛り盛りの比喩とか

⇒「自分ならどうしよう」と考えさせることが没入感の正体だとすると、課題がわかる、ということがまず最初に必要なわけで、文を必要以上に高度化させるとそれが阻害されかねない。


◆状況描写がなされていると没入感増

例えば主人公が空腹で困っていたとして、

1.飢えの苦しみ、唾液の分泌に至るまでの詳細な描写(視覚などの五感の描写)

2.どうして空腹に陥ったのか、周りに食べられそうなものはあるか(状況描写)

大きく2種類の描写があると思います。

・課題が一度提示された後は後者の材料提示が欲しい。

・前者がずっと続いていると(課題だけが延々と書かれていると)解決の想像ができなくてつらい。


※ここら辺は賛否両論ありそう。登場人物の息遣いが隣で感じられるほど詳細な描写が欲しい、という声も聞いたりしますし。


◆主語は短く、文の先に来たほうがよい?

・今から読む文が、主人公に関することなのか、他のことなのかがすぐにわかるって何気に重要な気がする。特に入り込みかけの序盤。

・主語がめっちゃ修飾されて長くなってたり、そもそも書かれてなかったりするとき、意味がぼやけてややストレスを感じるときもあり。

⇒迷ったら主語はシンプルに明示する方向が無難か。


◆読者の思考を先読みする

・上手い人の文では意識的に読者の反応をコントロールしてる感あり。

例:未知のものが主人公の前に現れる⇒主人公が驚いたり、不思議がったりする

例:相対するキャラが反感を買うような言動をする⇒主人公が反発したり、悔しがったりする

みたいに、この情報を出したら読者がこう思うだろうな、という反応を主人公が次のタイミングでしっかりやってくれる。⇒主人公との同調率が増し増し。


【まとめ】

ちょっと長くなりましたが、

・自分だったらどう対処するだろう、と読者に考えさせること

これが僕なりの没入感の正体としてしっくりくるまとめかな、と思います。


なので、課題をわかりやすく提示して、その後に解決につながりそうな、もしくはそううまくはいかないぞ、と追加材料を提示してあげるのが必要と。これを綺麗にできたら没入感は付いてくるのかなと思います。


……自作を振り返ってみて、それができてたかというと、そうでもないよなぁ。ま、次から意識してみようと思います。(そんで、こういうことばかり考えてるから、キャラづくりとかが薄くなるんだよなぁ、とも思ったり。)


みなさんで没入感を醸し出すために気を付けていることは何でしょうか。よかったらコメントとかで教えてください。


ではまた。

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