第12話 『電脳戦記バーチャロン2 オラトリオ・タングラム』前編

 


 電脳戦記バーチャロン2! 俺たちはタングラム!


 なーんて冗談をいいつつ、『機動戦士ガンダム 第08ゼロハチMS小隊』をもじってオレタチ小隊を編成して戦っていたのは、いつの頃だろうか?

 『電脳戦記バーチャロン2 オラトリオ・タングラム』は、1998年3月にアーケード版が稼働開始したらしい。20年以上まえになりますか。苦笑しか出ない(笑)。


 その後、家庭用として、ドリームキャスト版が1999年12月。世界が破滅するはずの7月から半年近く経ったころだ。


 当時、1作目の『バーチャロン』は、もしかするとオタクっぽい方々(って、ぼく自身も含まれるが)には大人気だったが、ロボット物であるとか、あの操縦桿で操作する部分とかが、もしかすると世間一般の人々には取っ付きにくかったのかもしれない。

 当時は、一般大衆のすべてがゲームをしていた時代で、ごく普通のOLさんとかがゲーセン行ってマラカスとか振っていた時代です。でも、初代の『バーチャロン』は、もしかしたら取っ付きにくかったのかもしれないです。マニアックな印象がありました。


 が、『電脳戦記バーチャロン2 オラトリオ・タングラム』はちがった!


 とにかく取っ付きやすかった。ロボットのデザインが洗練され、操作も単純化され、そしてなんといっても、グラフィックが美しかった。『バーチャロン』から一段進化した映像は、観ているだけでも十分楽しめたんじゃないかと思うんです。


 ただし、反面、一部のコアなプレイヤーからは、格闘がもっさりしてスピード感が落ちたとの評価もあり、「前の方が良かった」という声もあったみたいです。

 たしかに、ガード・リバーサルがなくなって、あの目の覚めるような超高速打撃は無くなったんですけど、でもそれで普通のプレイヤーでも気軽に遊べる雰囲気が得られた部分もあるんじゃないでしょうか?



 とにかく特筆すべきは、バーチャロイド全機のデザインの一新と、システム、演出の進化。これに尽きると思います。

 各機体のボディーがブラッシュ・アップされ、機体によってはまったく新しい物に進化していました。

 ベルグドルはグリス・ボックになって、頭でっかちなドラグナー3号機のできそこないから、『超時空要塞マクロス』のモンスターみたいに格好良くなるし、足がなかったバル・バス・バウは、バルバドスとして『ウルトラマン』や『エヴァ4号機』みたいなスタイルの抜群の機体に変わっていました。

 また、システムも、各機体に必殺技的な攻撃が増え、その分演出もど派手に進化。近接攻撃にもターボ近接が加わって、相手のガードをブレイクできるようになったりと、本当に贅沢なロボット格闘ゲームでした。

 あれはもう、史上最高傑作といっても差し支えないのではないでしょうか?


 ぼくの愛機でもあるアファームドも、アファームド・ザ・バトラーとアファームド・ザ・ストライカーの2機種に増え、近接攻撃の好きなぼくは、従来のトンファーを使うバトラーの方を使用しました。


 アファームド・ザ・バトラーは、右手武器のショットガンが変更され、イングラム・タイプの短機関銃、それを両手に持つ武装に変更されました。また、必殺技として飛び蹴りが加わり、ターボ近接やジャンプ攻撃、特殊な蹴り技やトンファーによる昇竜拳なんかも増えて、ほんと戦い方にバリエーションが増えました。


 また地味なシステム変更なんですが、Vアーマーというものが導入され、これのゲージが高いと、ある程度敵の弾を弾くという演出もありました。

 いやー、ぼくが撃ったバトラーの機銃弾が、ライデンの胸部装甲にあたってピン! ピン!って弾かれたときは、悲しくなりましたよ。画的には格好いいんですけどねっ!


 オラタンはほんと、プレイしていて楽しかった。強い人には全然歯が立たなくて、うまいバルバドスのパイロットなんかに当たると、気づいたらビームでつくられたピラミッドの中に閉じ込められてたり、ブラックホールが頭上にあったりと、ぼっこぼっこにやられてましたけど、それでも楽しかった。



 そして、そんな『バーチャロン2』が、なんと家庭用ゲーム機に移植されます。セガのハード、ドリームキャスト版、1999年12月に発売。しかも、ツインスティックも同時発売!

 これ、みんなして買って、友達の家に集まって対戦しました。画面分割でも対戦できたと思うんですが、テレビ2台、ドリームキャスト2台をつないでの対戦もできたんですよ。もちろんツイン・スティックも2台用意しました。

 いまでは夢のような話だ。っていっても、いまならネット対戦なんですが。


 で、ですね。当時としては革新的だったんですが、なんとネット対戦もできたんです。ただし、悪名高いKDDI回線で、です。

 悪名高いというと聞こえが悪いんですが、実はこの回線、通信料がすごく高かったんですよ。当時はブロードバンドの常時接続がまだなくて、接続は電話回線。そこにさらになにやら料金が加算されて、ネット対戦するための料金が1プレイ100円とか200円とか。つまり、ゲーセン行って対戦するのと変わらなかった。

 いまと違って、ゲーセン行けば、対戦相手には困らなかった時代。当時は家庭用でやるということは、『安い』ことが絶対だったわけであり、この『ゲーセンと同じ値段』で家でわざわざプレイする方々をぼくらは、『強者つわもの』と呼んでました。



 美しいグラフィックと演出。バランスの取れたリズムのいい対戦。ゲームセンターにいけば、いつもあった機体とコックピット、そして対戦相手。

 素晴らしいゲームが日常的にそこにあって、たった100円でプレイできたあのころ。


 『バーチャロン2 オラトリオ・タングラム』は、素敵な思い出と時間をぼくたちに与えてくれた名作ゲームでした。

 が、やがて時は流れ、新作の『バーチャロン・フォース』が発売され、徐々にその人気は失われていきます。

 ですが、断言できます。『オラタン』は、ロボットゲームの最高傑作であり、あれを超えるものはもちろん、あれに比肩するものすら、絶対にもう作られないだろうと。


 そんな、思い出の中に消えてゆく名作ゲームたち。そのなかでひときわ輝く一等星。それが『バーチャロン2 オラトリオ・タングラム』でありました。






 ……が、じつは『オラタン』の物語、ここでは終わらなかったのです。


 ということで、後編につづきます。


 題して、『バーチャロン2 オラトリオ・タングラム ~俺んち戦記』!


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