第7話 秘密の黄色

 驚くほどに基地の内部は、宇宙船宇宙船していた。NASAの十倍、JAXAの二十倍くらい。行ったことないけど。


 でも青い金属製の壁面といい、埋め込まれた電球といい、まさにそれだった。


「お待ちしておりました!」


「ようこそ、我らの秘密基地へ! さあ、こっちへ来るんだ、黄色!」


 黄色って呼ぶのはやめてくれませんか……。


 そんなことよりもだ。歌のお兄さんとお姉さんっぽい二人が基地の司令室? みたいなところで僕を出迎えてくれた。パツパツの制服みたいなのを着た。


「どうかね、家路いえじくん? ここが作戦コンソール室だ。秘密基地の心臓部と言っていい。悪の組織と戦うために、町中のデータがここに集められておる」


 無数のモニターにたくさんのボタン、それにタッチパネル、すごい、本物みたいだ。


「ははは、黄色、びっくりしただろ? 学園内にこんなものがあるとは思ってもいなかっただろ?」


「ふふふ、この表情のために、私達もここで働いていたのかもしれませんね。嬉しいですわ」


「こらこら、二人とも、家路いえじくんが困っているじゃないか。それに、まだ私達の任務もスタート地点に立ったに過ぎないんだぞ」


「おお、そうだったそうだった」


「感慨深くて、つい……。待ちに待った黄色ちゃんですもの」


 大はしゃぎする大人達。


 おおう、何てことだ。まったく話についていけない。


 でも、正直、僕は度肝を抜かれていた。この猫好きオヤジが正気か道楽かどうかはさておき、こんな施設を学園の地下につくっているのだ。しかも常時切り替わるモニター、全部の理解はできないが、この町の詳細な地図や映像ぐらいはわかる。それに警察無線から消防無線、タクシー無線まで。この規模は圧巻だった。


「あ、えーと、ここは、一体?」


 さすがのこの状況を見かねたのか、保健のお姉さんが咳払いをした。あれ、不思議だ? こんな女性すらまともに見えてきた。


「おっつ、すまんすまん。家路いえじくん、ここは君達のための秘密基地だ。君達、戦隊ヒーローの前線基地となる場所だ。紹介しよう。サポート隊員のAさんにBくんだ。君達が満を持して戦えるよう、全力を賭してくれとる」


「よろしくな!」


「初めまして!」


 力強い握手にキラキラとした笑顔。とっても眩しい。


 いや、そんなことじゃなくて。


「AさんもBくんも匿名にしてある。まあ、正社員で社会保障もばっちりとは言え、秘密基地隊員なんて胡散臭いだろう」


「ははは、学長も鋭い!」


「ここみたいなホワイトな勤め先なんてそうそうないですから。怪しいだけで」


 すげえ、アウェーな感じ。親戚の集まりに連れていかれたときのような。こういうときってどうすればいいんだっけ? あ、携帯もないんだった。やべ、どうしよう。


「ところで、Bくん、変わりはないかね?」


「ええ、この町のヒーロー反応は四つです、新しく誕生した黄色ちゃんも含めて。そして学長の計画通り、最後の一つも近づいています」


「こっちも大きな変化はなしと言いたいところだが、黄色の登場に呼応したのか、昨日に較べてエビルサインは突如、増加した模様。町に四人もヒーローが集まったんだ。学長、要注意ですぜ」


「なるほど、早急に戦隊を結成せねばならぬようだな。ヒーロー一人ひとりではまだまだ心もとない。五人揃ってこそ、その真価が発揮される。ならば、私達も急がねばならない。よし、家路いえじくん、休憩室に来たまえ! Bくん、彼に例の飲み物とアイスを持ってきてくれ」


 そ、そんなことじゃないんだけど……もう、いいや、とりあえず、忘れられてなかった。良しとするか。このためにここに来たんだから。

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