『うきうき音楽詩編集』

やましん(テンパー)

第1話 「組曲カレリア」~間奏曲・行進曲風に シベリウス

 「うつうつ」音楽の大巨匠であるシベ先生の作品の中では、非常に珍しい底抜けに明るくて開放的な音楽です。

 むかしNHKテレビの音楽番組で(当時、我が家はまだ白黒だったと思いますが)、組曲第1曲目の『間奏曲』の背後に、空から写したフィンランドの雄大な風景や、シベ先生の貴重な映像が重ねて流されたことがあったという記憶があるのですが、まったくそう言う感じの「大きな」音楽です。


 第3曲の『行進曲風に』は、とりわけ有名で人気もありますが、これは実際、よく出来た音楽です。

 聞きながら、いつも一緒に行進したり、『エア指揮』したりしてしてしまいますが、もう体が自動的に動かずにはいられない『うきうき』音楽です。


 カレリア地方は、例によって大国ロシア(ソビエト)とスウェーデンに挟まれてフィンランドとの間で取ったり取られたりしながら、結局現在はロシアに編入されておりますが、シベ先生は新婚旅行にここを選んでいまして、フィンランドの偉大な民族叙事詩「カレワラ」などの民族遺産が豊富に伝承されてきていた地方でもあります。


 まあ、なにしろ、新婚旅行の生んだ産物だとすれば、それはまあ、「うきうき」になるのは当然の成り行きと、言うべきでしょうか。

 ただし、もともとは、これもあの、「交響詩フィンランディア」と同じように、劇音楽だったものであります。カレリア地方の歴史と伝統を伝えようとした教育用の劇の付随音楽として作曲されたものです。



 そこで、現在よく聞かれるのは、3曲からなる『組曲』版ですが、もしチャンスがあれば、もとの形に復元して録音された『劇音楽版CD』もお聞きください。(フィンランドONDINE ODE913-2 CD)


 劇音楽なので、音楽だけ聞くと、ちょっと不自然なところも感じるかもしれませんが、民族音楽がとりこまれた、なかなか興味深く面白いものです。


 例えば、『組曲』の第2曲目の、『バラード』ですが、なるほど、後半部分には、もとは歌がちゃんとついていたんだなあ、ということがわかりますし、音楽的になんとなく、長年しっくりこないでいた理由が、すっきりわかる気がいたします。


 またまた蛇足ですが、2003年だったかに発表された映画「シベリウス」という作品がございます。日本人はシベ先生大好き民族なのですが、この映画は日本では一般公開されなかったんじゃないかと思いますし、日本版のDVDもないと思います。


 そこをなんとか手に入れまして、見てみたわけですが、例のガレン・カレラさまの有名な絵画・・・シベ先生やカヤヌス先生やメリカント先生などが、大酒を飲んで大いに酔っぱらっている、あの危ない絵ですが・・・の場面がしっかり映像化されていたり、またシベ先生とアイノさまのラブ・シーンとか・・・「おおお、これが、あの有名な場面か・・・」とシベ様ファンはひたすら感激する場面も多いわけなのですが、興味のない方が見ると、短いシーンの単なる、つなぎ合わせだけに見えてしまうかもしれません。


 そこに音楽を乗せるのは、また非常に難しいのも分かりますが、ちょっと前半生の大衆的に有名な曲に偏ってしまったのは、まあ、しかたがないかなあ、と、思いました。とはいえ、あまり巷では普段聞かない小曲も含まれております。(ちなみに、映画に使われた曲の『CD盤』は日本でも発売されました。)


 ロシアの官憲さんが、「フィンランディア」を演奏しているのではないか! と(この曲、実際にロシアから演奏禁止にされていたのですが・・)ホールに踏み込んできた場面で、実際、別の曲の題を付けて演奏しようとしていたわけですが、そこで、「フィンランディア賛歌」を、オケも合唱団も聴衆も一緒に高らかに歌い上げて、官憲さんたちを追い出してしまうという場面などは、フィンランド人にとっては、実に誇らしい場面なのでしょう。


 ただ、その場の人々による混合合唱にしては、あまりに上手すぎたのが、かえって映画としては不自然に感じられたことも事実です。映画というのは難しいですね。


 老齢期になった、シベ先生とアイノ夫人の様子などには、ぼくなどはもう「うるうる」状態でしたが・・・。これも、機会がありましたら、ご覧ください。(やましんには、ほぼ理解不能なのですが、英語の画面対訳はついておりました。)



  ************ うき 💐♡💐 うき ************ 



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る