第31話幸せを見せてやりたい奴が居る

更に2年後2032年某日。

今から1ヶ月程前から俺は華と同棲を始めていた。

今日は仕事が休みなのも有り実家に残りの荷物を取りに向かっていた。


そんな中、金髪で胸がデカイ女性と中学生の女の子と出会う。


「あれ?憐だ!」


「憐にぃやっほー!」


1人は夢来乃叔母さんで、もう1人はなんと……夢来乃叔母さんの娘の命歌めいかだ。


この世界では、夢来乃叔母さんが27歳の時に娘を産んでいるらしく命歌は現在13歳だ。

俺とは10歳離れていて本当は従兄弟の関係だけど妹の様な存在だ。


因みに夢来乃叔母さんは母さん家……俺からしたら実家から近いマンションに住んでいる。

なので、結構な頻度で母さんに会いに来てる。

と、言うより……



「憐にぃは本当に未来乃叔母さんソックリで羨ましいなぁ〜」

と、命歌が目を輝かせる。


「ほんとアンタは未来乃の事好きね…」

呆れるように夢来乃叔母さんが呟く。


「だって未来乃叔母さんは、あんなに綺麗で可愛くて!理想のお姉さんって感じなんだもん!」


「なにをー!?私の方が未来乃より若いし美しいんだから!」


「お母さんより未来乃叔母さんの方が美人だよ!」


「憐はどっちの味方だ!?」


「はっ?俺!?いきなり振るなよ…」


「憐にぃは未来乃叔母さんの事自慢じゃないの?」


「いや、母さんだしなぁ…そんな風に見た事なんて…」


「えぇー!!!贅沢!!!ウチのお母さんなんてこれだよ!?」


「メイ!これとは何だー!?って言うより憐は私の事好きだもんねー?」


「えっ!?俺を巻き込むのやめてくれよ…」



…と、まあこのように命歌が母さんのファンで基本的に命歌が母さんに会いたいみたいだ。

そんなこんなで家に着く。


「ただいま〜」

「未来乃叔母さん〜〜」


{ドタバタ}と家に着くなり母さんに会いに行く命歌



「ほんとあの子未来乃の事好きよね…」

呆れるように夢来乃叔母さんは呟いた。


「嫉妬?」

俺はふいに問いかける


「そんなんじゃないわよ」


「でもまあ俺は夢来乃叔母さん好きだよ」



この言葉に嘘はなかった。

俺からしたら夢来乃叔母さんは叔母と言うより天使ゆらのんで、その頃の名残みたいな物があって…



「あら、嬉しい事言ってくれるのね」


「てか、夢来乃叔母さんは男の好きだもんね」


「んぐっ!?それは内緒でしょ!?」


「ははは」


そんなやりとりをしながら俺は2階の自分の部屋に向かった。

一応ちょくちょく実家に帰る事は考えていたので、ベッドや机とかはそのままにしてある。

ポスターやフィギュアなんかは持って行ったけど。



「ここが女の子3人をフッた伝説のお部屋ですか」

付いて来た夢来乃叔母さんが言った。



「いつまで引っ張るんだよ!?」



2027年のあの日、あの時下には夢来乃叔母さんが居た。

沙織と華の言い合いは下まで聞こえていたらしく喧嘩してると思った夢来乃叔母さんは、部屋の扉で聞き耳を立てていたらしい。


まあ、つまり俺の告白が思いっきり聞かれてたって事だ!!

おかげで、5年経った今でも俺の部屋に入る度にその話をされる。



「そー言えば来週よね?結婚式」

ふいに夢来乃叔母さんが口を開く。


華との新居の方に持って行く物を纏めながら

「うん」

と、俺は返事をした。



「に、してもさー。なんでこの年なの?前から2032年に式を挙げるって言ってたよね?2032年に拘る理由は?」



「お金を貯めるためさ」


「嘘ね」


「んぐ…」



今から2年前の2030年に華の両親に挨拶に行った日の事。

華には言っていたのだが、華の両親にはそこで初めて2032年に式を挙げる予定と説明した。


「色々お金も掛かるだろうし婚約すぐに式を挙げろとは言わないけどよ?2032年ってなんでだい?憐ちゃん」

華のおじさん……お義父さんにそう突っ込まれた。


まあ、そりゃそうだろうよ。

式はまだ未定です。なら分かる。

でも2032年って断言したって事は2032年に何かあるんだと思うのは当然だ。


俺はその時


「幸せを見せてやりたい奴が居るんです」


そう答えた。


「幸せを見せてやりたい…??」


「どこまで行っても自分は不幸だと思ってる奴が居るんです。ソイツは色々なせんたくを間違ってきた馬鹿な奴です。その結果、自分は幸せにはなれないと……なっちゃいけないと決めつけてたんです。」


「だから俺は過去の自分そいつに見せつけてやりたいんです。23歳の俺お前と同じ年齢の俺はこんなにも幸せなんだと…」



最後までおじさん……お義父さんは首を傾げていたが、熱意だけは伝わった様で「まあ、2人の問題だし!野暮な事聞いたよごめんよ」と言ってくれた。



「それより夢来乃叔母さんは再婚とかしないの?」

俺は話を変えた。


「はっ??再婚なんかするもんか!もう男なんて信用しねー!」



夢来乃叔母さんは、命歌を産んでぐらいの時に浮気をされていた。

それを理由に離婚して無事シンママの仲間入りを果たしていた。



「てか!なんでウチの家系の女はこうも男運ないのかねー?私の最初の彼氏なんてさー一回一晩過ごしたら「セックスってこんなもんなんだ」って言ってそれでお別れよ??ほんと意味分かんなくない?私は何か?お前が卒業したかっただけに付き合わされた馬鹿な女か?!」


「しかも次に付き合った男は凄いマザコンで、何かある度に「母さんが母さんが…」って!お前はママの人形かよ!ってな!それだけにとどまらず次に付き合った男は…」



こうなると止まらないので{うん、うん}と相槌だけうちながら俺は自分の作業をする。

いよいよ来週か……そう胸に期待を膨らませるのだった。




そして一週間後、結婚式当日


「それでは余興の時間です!先ずは新郎新婦共に友達である高野鳥昏亞さんとその後輩達による歌とダンスです!」

その司会者の言葉の後に会場のステージに昏亞と数名の人が壇上した。


昏亞含め昏亞の後輩達は女装をしていた。

その光景を見て色んな所から笑いが起きる。

そして音楽が鳴り出した。



「昏亞この日に向けていっぱい練習したんだって」

隣に座る華がそう言ってきた。


「に、してもアイドル曲の選択よwダンスキレッキレだな」


「男が男の歌歌っても面白くないって言ってたらしいわよ。蜜穂曰く」


「ほんと馬鹿だな」


そんなやりとりをしつつ昏亞達のパフォーマンスに目を奪われていた。



「それでは続きまして…こちらも新郎新婦共にお友達である百合乃蜜穂さん美羽野沙織さん水原雫さん3名によるコントです!」


司会者の言葉の後に3人がステージに上がる。


3人はトリオ芸人のネタを完コピして披露していた。

元ネタが元ネタなだけに大爆笑を巻き起こしていた。

しかも若干モノマネも入っててそれが馬鹿面白かった。


そんなこんなで余興は終わり華の親への手紙が始まった。



「お父さんお母さんへ…」


華の手紙の内容とリンクするかのように会場の液晶に華の選んだ写真が映し出されていた。

俺も当日楽しみにしたかったので、その写真選びには付き合ってなく

俺自身も懐かしさで一杯になっていた。


そんなこんなで式は終わりを迎え俺達は2次会を終え3次会として俺ん家に集まっていた。



「結婚おめでとう!かんぱーい」


家には、蜜穂と沙織と昏亞と雫が来ていた。

2次会では居酒屋を貸し切り色んな人達と馬鹿騒ぎして3次会では仲の良いメンバーで集まったと言う訳だ。

因みにヨモさんは、明日も仕事だからと家に帰っていった。



「に、してもよー余興だけどお前ら打ち合わせしてたな?!」


「あぁー分かっちゃった?本来私達が歌って踊ろうとしたんだよねー」


「そそそ!んで俺がモノマネしようとしたんだけど、それじゃ面白みがねーって事で!」


「私達がコントしましたー!」


「急な変更だったけど、後輩達が集まってくれてさー!あの形になった訳よ」



そんな馬鹿な会話で俺達は盛り上がっていた。


なあ?見てるか?過去の俺…

ちょっと努力すれば、こんなにも幸せになれるんだぞ。


今の人生は最悪だと思うか?クソゲーだと思うか?

それを変えるための努力はしたか?それを受け入れる勇気はあったか?


俺はそれをしてこなかった。

ただただ現実から逃げていた。

逃げる事は決して悪い事じゃない。

でも逃げるばかりじゃ何も進まない。


だから一歩…そう、一歩で良いんだ。

その一歩さえ踏めればきっと何かが変わるから…だから…だから…


過去の自分おまえはもう前を向いて未来に進んでくれ――


―――過去に囚われないでくれ。それが今俺が過去の自分おまえに言える最後の言葉だ。


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