第20話またな、、親友!!!

2026年12月4日

あれから1週間以上が経ち月日は12月を過ぎていた。

外はより一層寒くなり本格的な冬を迎えようとしていた。

俺達は結局2人を連れ出す事は出来なかった。


憐の方は、もう二度と関わりたくないと拒絶され電話にも出ず家に行っても出てこない状態との事。

そして俺の方はと言うと…



「沙織の家行ってみるよ」


毎日は流石に親御さんとかに迷惑がかかると思い2日か3日に一回ぐらいに家に行くようにしていた。



「私達は憐の家に行くよ。最近おばさん忙しいみたいで今日も家に居るか分からないけどね…」



こうして俺達は学校が終わりそれぞれの目的地へ向かった。


「昏亞君…今日も来てくれたのね」


「はい…沙織の部屋にお邪魔しますね」


「私じゃ全然分からないから宜しくね…」



そんな会話をして俺は沙織の部屋に入る。

一応入る前に「入るぞ」と一言入れる。



「また来たんだ…」


「心配だからな」



沙織は見て分かるようにやつれていた。

ご飯食べてないのか?



「それよりご飯食ってんのか?」



「…少しは。」


「ちゃんと食わないとお前ほんとにヤバイぞ?」



「…喉通らないんだからしょうがないじゃない」



髪の毛もボサボサで若干臭う。

風呂入ってないのか…?


「それより憐は出て来たの?」


「いや、まだだ…」


「そう…」


「……」



沈黙が続く。

このままじゃダメだ!何か言わないと!



「なあ?沙織?華も蜜穂も心配してる。学校に来いとは言わない…けど、2人に顔を見せるぐらいはしないか?」



「憐が許してくれないのに私だけ戻るのは違うと思うの」


「そ、そんな事ないさ!どっちが先とか関係な―――」


「――あるの!これは私の責任だから…」


「……」



また無言になってしまう。

何を話せば良いのか、どうしたら良いのか俺は分からないままここに居る。

もう……このまま俺達は戻らないのか…??


そんな事を考えていたら

「ねえ!昏亞?」

と、話しかけられる。


「ん?」


「アンタ私の事好きよね?」


「えっ!?」


「……抱いてよ。もう私、自分が分からないの!なんであんな事になったのだろうって毎日毎日毎日…頭がおかしくなりそう。…だからめちゃくちゃにして?」


そう告げた女の子の顔は一筋の涙を流していた。

こんなに苦しそうなのに俺は何もしてあげれないのか?何も言ってあげれないのか?



「そんな顔をしてる子を抱く趣味はないな」



「今なら好き放題に出来るのに…チャンス逃したね」




それから話は何も進まずその日は帰る事にした。

憐の方も家に誰も居なく家に入れなかったみたいだ。


沙織は間違ってもあんな事を言う奴じゃない。

今思えば、あれは沙織の最後のSOSだったんだと思う。


それから数日後、沙織が自殺したと沙織のおばさんから連絡が入った。

俺達は、突然やってきた不幸にただ悔しがる事しか出来なかった―――










「その後、沙織の部屋から遺書が見つかった。内容は生きてるのが辛いと一言書いてあるだけだった。それから俺達は、なんとなく距離を置くようになりバラバラになったんだ。それでも数ヶ月に何回かは連絡取り合ってたけどな」



昏亞から告げられた俺の知らない物語は、衝撃的な内容だった。

俺が家に引きこもってる時にそんな事が起きていたなんて全く想像も出来てなかった。


俺1人が全部背負い込めば良いとカッコつけてたのに結局は皆を不幸にしていただけなんて…

俺は今更だが、あの日の選択を本当に後悔し始めた。



「なあ?憐?」


「ん?」


「華は、誰かの為に怒ったり泣いたり出来る優しい奴だ。側から見たらヒステリックに見えるかもしれない。でもそれだけ一生懸命なんだ」


「それは分かるよ?」

急に華の話になり疑問が浮かぶ



「ゆらのんから聞いたけど、新しい死については華と言い合いになって…としか聞かされてないだろ?だからその答え合わせって言うかさ?」


「あ、そうか…」


そこまで言われたら流石に分かる。

多分華と言い合いになったのは沙織の件だ。

華の事だ「沙織が死んだのに何幸せそうな顔してんのよ!」なんて言ったと思う。


これは決して恨み言とかじゃなく華の優しさから出た言葉だ。

華は沙織と仲が良かった。

だからこそ、沙織の気持ちを代弁したんだ。


そこで、昏亞の話を思い出す。

昏亞は華に迫られたと言った…多分俺もそうやって迫られたんだと思う。

そして掴まれていた手を離されその反動で……本来昏亞に起きる事が、俺に起きたって事だろう。



「大丈夫だよ。俺は誰も恨んじゃいないよ」


「そうか。なら良かった。それと!」


「ん?」


「お前の事だ。沙織が死んだ事に今更ながら後悔始めてると思うが!思い上がるなよ?お前1人の行動が、この結果をうんだわけじゃないんだからな?……これは俺達5人の選んだ結果だ。だから―――」


「――分かったよ。俺"達"の罪だ。」



だからもう俺は俺を責めない。

誰も責めない。

誰が悪いとかそんなんじゃないんだ。

俺達は皆等しく頑張った。頑張った結果が、これだとしてもそれを後悔する事はやめよう。

じゃないと未だに一人で後悔してる子も自分を許せなくなってしまう。



「それに!この世界では、その悲劇は回避されたんだ。ハッピーエンドだろ?」

そう言って右目ウインクをする昏亞


「そう…だな。これでハッピーエンドだ!」

俺も右目ウインクで返す。


「じゃ、そろそろ行くわ。俺は来世を楽しむよ」


「そうか…本来の歴史のお前は死んでるんだよな…」


「そんな悲しい顔すんなって!お前の手に入れた未来では生きてんだからさ!」


「でも…」



すると昏亞の体が光り出した。


「ーったくよ!ならこう言えば良いか?」


「え?」


「またな親友!!」


「あぁ…またな、、親友!!!」



光に消えて行く親友の顔は、とても晴れやかな笑顔をしていた。

そして光が収まったと思ったら昏亞は{バタッ}とその場に倒れ込んだ。


「昏亞大丈夫か!?」


そう言って昏亞の元に駆け寄ろうとした瞬間、自分の体も光り出した。


そうか…もうこれで俺が死ぬ運命は回避出来たんだ。

次目が覚めたら生き返ってるって事だよな?


思えば本当に色々あったな…。

俺の人生は間違いだらけだったけど、最後には親友とも会えたんだ…悪い事だけじゃないな。


なあ?昏亞…

お前はきっと思った事を口に出しただけなんだよな?

でもそれが本当に嬉しかったんだ。


俺達の罪と言いながらも俺はどこか皆に後ろめたさがあった。

だからお前に"親友"って言われて全部許されたような気がして……


俺は流れてくる涙を服で拭った。


本当に助かったよ。ありがとな親友―――



――光に包まれていた少年はその場で倒れ込むのだった。




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