第17話お前誰だよ…?

「私、憐が好きなの!だから私と付き合ってください!!」


薄暗い教室に声が響き渡る。

ここは今は使われてない教室だ。

数年前までは何かの授業で使ってたらしいが、教室を変えた事により空いた場所だ。


朝でもカーテンが閉まっており、そもそもこの教室がある場所に人が寄る事もないので暗闇の部屋なんて言われ畏怖の対象となっていた。


だが実際はただの物置部屋で、特別鍵もかかってない。

なので放課後にこの教室に居るのは特別不思議な事はない。




「…」



それが過去改変の為に巻き戻してさえなければな…。

なんでよりによってこのタイミングに戻ってるんだよ!?

本来ならこの告白を上手く回避しようと意気込んでたのに最初からクライマックスじゃないかよ!?



「……」



俺はなんて言って良いか分からず黙ってしまう。

勿論こんな事いけないのだが、しかしいきなり過ぎるこの状況に頭がついて行かないのだ。



「やっぱり憐は華を選ぶの?」



くっ!計らずともあの日のまま事が進む。

当時の俺もなんて言って良いか分からず黙り込んでしまったんだ。

このままだとあの台詞に繋がる……なんとかしないと!

そう思い口を開いた瞬間



「そっか…それが憐の答えなんだね?」



「さ、沙織!聞いて欲しい事があるんだ!」


「嫌だ!聞きたくない!」



いかん、このままじゃほんとにあのままだ。

あの日を繰り返すだけじゃないか!!

考えろ…考えろ俺!



「俺は沙織の事とも―――」



「――憐は!華が好きなんでしょ!?だったらそう言って!!それ以外の言葉は聞きたくない!」


「華の事は今は関係ないだろ!?今は沙織の事をっ―――」


「――関係ない事ない!!関係ないなんて言わせない!!」



感情的になる沙織をどう宥めれば良いか分からず、どんどんあの日をなぞっていく。



「沙織!落ち着いて聞いてほしい!」


「私は落ち着いてるわよ!で、何を聞いてほしいの?華が好きって言いたいの?私はそれ以外聞かないから!!!」


「だから!今は華は関係なくて!ちゃんと沙織に―――」


「――そんなに華が好きなの?ねえ?憐は華が好きなんだよね?」


「だからっ!俺は沙織にちゃんと伝えたい事がっ!!」



「そう……だったら華に私が憐にレイプされそうになったって言ったらどうする?」



しまった…。

1番回避しなくちゃいけない事なのにご丁寧に誘導しちまった…。

ここで変に誤魔化そうとすると本当に後戻りできなくなる。

かと言って無言も沙織を逆撫でするだけだ。


どうしたら良い?


考えろ俺!この状況どうしたら良いんだ!?




くっ!ダメだ何も出てこない…これ以上はもう…



「そう…また無言なんだね。だったら華にそう言うよ…。これは憐が悪いんだからね」



そう言って沙織は教室を出ようと後ろを振り向く



「いや、それはダメだ。俺が聞いてしまったからな」


その瞬間、入り口から声が響いた。


俺は入り口を見る。

するとそこには―――



「なんでアンタが居るのよ…昏亞」



そう昏亞が居た!

沙織は{ずんずん}と昏亞に近付いていく。



「アンタもしかして付いてきた訳!?てかアンタ私の味方じゃなかったの!?」


「悪いな沙織…。今は、お前の味方が出来ないんだ」


「はぁ!?何よそれ!!私にここまでさせたの誰よ!?アンタが私を囃し立てたんでしょ!??」


「一度はお前の味方したからそれで良いだろ?とにかくお前の為にも今は味方出来ない」


「意味分かんない!もー知らない!!謝っても許さないから!!どいて!!!」



そう言って沙織は教室を出て行った。

俺は何が何やら分からず呆気にとられていた。


「よお、憐。これで許してくれとは言わないけど最悪の事態は免れたな」


そう話しかけてくる昏亞に俺は違和感を感じずには居られなかった。

まるで、この後の世界を知ってるような言い方が引っかかっていたんだ。



「に、してもよぉー!お前凄いな!まさかこんなドンピシャのタイミングに戻るなんてあるのか?」



戻る……?

もしかして俺が過去に戻ってきた事を言ってるのか?

こいつ本当に昏亞か??



「お前誰だよ…?」


その俺の質問に昏亞?は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして黙り込む。

やはり昏亞じゃないのか…?

そんな疑問が過って手に汗が滲む。



「あの天使…えっとゆらのん?だっけ?に何も聞いてないんだな」



ゆらのんを知っている…?

やはりこいつ昏亞じゃない??

得体の知れない人物に自然と構えを取る俺。



「お、おいおい待てよ?そう警戒すんなよ!俺は昏亞だ!だが、お前と同じ未来から来た昏亞だけどな!」



「未来から…きた…??」



こいつは何を言ってるんだ?

そんなんで俺を騙せると思ってるのか??

だってそうだろ?過去に戻れるのは死んだ人物じゃなきゃ駄目なはずだ。

ゆらのんがそう説明していた。

昏亞は死んでなんかいないだろう??



「あぁ、そうだ!未来から来たんだ!お前の手助けを頼まれたんだ。」



確かに凄い助かったけど、そのまま信じて良いのか…?

だが、逆に俺を騙そうとしてるんだとしたら何のメリットがあるんだ?

俺を騙すメリットなんて無い…よな??



「過去に戻れるって事は一度死なないといけないんだが、昏亞は死んじゃいないだろ?」


「いや?死んだよ。俺は一度死んでる」


「はっ!?それは幾ら何でも嘘が過ぎるぞ!!」


「逆に俺が死んでないって何で言い切れるんだ?ずっと関わりなかったのに」


「それは……」



俺は何も言い返せなくなる。

確かにずっと関わってなかったから絶対に死んでないなんて言えない。



「悪い。意地悪が過ぎたな。俺はお前が蜜穂の代わりにトラックに轢かれた後死んだんだ。」



「なん…だって!?」

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