2、


 風の強い日は家の中に避難しなければならない。

 柔らかな葉に混じって、大量の小枝が降ってくるからだ。

 家の中からのぞいていれば、風の音に連れ添ってばきばきと荒々しい音が響いてくる。家の屋根や壁にあたるたび、僕は否応なしに 身を縮ませた。

 何日も何日も強風が続くと僕らは家から出られない。

 だけど僕らは悲観的にはならない。

 数日経って風がやめば、暖炉にくべる薪が拾い放題になる。




 僕らとは言ったが、実はこの森の下に住んでいるのは、まだ声変わりもしていないこの僕と、一羽のおしゃべりなトリと、なにかとカタカタ蓋を鳴らすティーポットだけなのだ。

「君らにとっても暖房は必要不可欠なものなんだから、たまには手伝ってくれればいいのに」

 僕は両手いっぱいに枝を抱えて同居人たちに訴えた。

 ティーポットはからだを振るわせ何か言いたげで、おしゃべりなトリは地に落ちた枝よりも、いまだ木にしがみついている真っ赤な実にご執心なようで、張りのあるまあるい実に頭部をうずめるようにしてその味を味わっていた。そもそも僕の声が届いているかどうかも不確かだった。

 まあいつものことか、と僕は枝を拾う。

 頭上の森がまたどこかに去って行くまで、僕らはそんな日常を何度も何度も繰り返すのだ。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る