お前のせいじゃない

 「...君、坂木君だよね。」


ギュウう........


「い、いてててて!は、離せよおい!ああああああ。」

「さっきから話し聞いてれば、ずっと理不尽なことばっかし言って。君みたいな人、なんていうか知ってる?」

「は、はあ?何なんだよお前...ああ!いたたたたた...!」

「自業自得、もしくは阿呆って言うんだよ。」


 壮亮は胸ぐらから手を離した。握りつぶされていた腕を痛がる。


「お前、俺達のこと全く知らないくせに、何でしゃばって出てきてんだよ。しかも阿呆って...。勝手に人を阿呆って言うんじゃねーよ!!」

「君さ、人をよく嘘つき呼ばわりしといてそんなこといえるよな。小町だって嘘ついてないのに嘘つきって呼ばれてんだぞ?...お前のせいでな。」

「くっそ...てめー。こいつの味方するんだな?来たばっかのくせに。だから琴のくそさがわからねーんだよ。さあ、どけ!町並 樹!!」


 私を助けてくれたのは樹くんだった。壮亮の腕を掴んで、握力で潰したのは彼だった。彼が...私を守ってくれた。


「坂木君...いや、お前ほど自業自得なやつはいないだろう。小町を利用する?人を使ったって結局は失敗するんだよ。それをすべて小町のせいにして...。ハサミでどうしようとした。」

「さっきから自業自得、自業自得って...俺のせいじゃない!俺は...」


バチーーン!!


「!!??」

「おい...お前は自覚ないんだな。自覚がないやつが一番の最低男なんだよ!はっきり言えよ。負けを認めたくない、そんな生ぬるい言葉じゃこの会話を聞いているクラスの全員は納得しないぞ!わかれよ!!特に...特に小町にはしっかりと謝れよ!」


 確実に壮亮が戦意を失っていることがわかる。目に見えてわかる。


「...かわいそうだけど、でも...いいよ?私に謝らなくて。男運が悪い私がいけないんだもんね。」

「いいや、小町は悪くないよ。しかも悪いのは坂木君だけじゃないしね。」

「...守ってくれてありがとう。でもなんで私のために?」

「.........が好きだから。」

「え?なんて言った?」


バタン

「い、樹くん!!!!!」


樹くんはもともと病気のために不登校だった。だからいつか貧血で倒れることも予想はしていた。だが、今だとは...。

 このあと、樹くんは保健室へ、壮亮はみんなに謝った。私には少し頭を下げただけだったが。というわけで15分遅れで授業が始まった。

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