第5話

今日はアキがこの家に来て3回目の日曜日。

先週は仕事に追われほとんど休日を満喫出来ていなかったが今日こそは遊び倒すと決めていた。

「白石さん、ほんとにすみません」

「仕方ないわよ、今週テストなんでしょ」

アキがまさかのテストということで今日は1日アキの勉強を見ることにした。

「いいんですよ?別に遊びに行っても」

先週忙しかった私に気を使っているのだろう。

「いいのよ、勉強見るの嫌いじゃないし」

「…………ありがとうございます」

「あなた今確実に私が勉強出来るかを疑ったでしょ」

「違いますよ、うちの学校それなりの進学校なのでテスト前は凄いギスギスしてるんですよ」

どこの学校でもあることだが進学校なら尚更であろう。

「なのでテスト勉強を誰かとしたことが無くて凄く白石さんと勉強出来て嬉しいんですよ」

「どうしてそこで顔を赤らめるの……」

「こういうこと言うの結構恥ずかしいんですよ!」

(惚れたんじゃないのか)

惚れればこのまま家事をずっと任せられたのに。

(……って!それって私とアキが……)

「白石さん?どうしたんですか?」

「うるさい!早く勉強始めるよ!」

「え?ちょっ……ええ?」


「……すみません白石さんここの問3なんですけど」

「そこはyに8じゃなくて5を代入すれば出てくると思う」

私は国語や英語は壊滅的だが数学はかなり得意でアキにも自信を持って教えられる。

「アキはちょっとした計算ミスとかがかなり目立つな」

「………」

「どうしたんだ?いきなり黙って」

「関係ないことかもしれませんけど、ちょっと白石さんの高校時代が気になって……」

(お前は私の彼氏か……)

「気になるなら参考書の巻末の小テストで私よりもいい点取ったら話してあげるよ」

(さすがに食いつかないと思うんだが)

「やります!やらせてください!」

ここまで来たら無しにはできなく小テストをコピーし30分間のテストに臨んだ。


~30分後~

「終わったぁー」

大人げなく得意な数学で挑み手応えはかなりあった。

「採点しましょうか」

白石42点

アキ41点

かなり難しい小テストだったがお互いにかなりの高得点をマークした。

「ぎりぎり私の勝ちだな」

特に話したくない理由は無かったが、ここは大人としての意地を見せたかった。

「かなり競り合いましたが負けは負けです」

「そんなに悲しそうな顔するなよ、そこまでして私の昔の話聞きたいのかよ……」

「僕、気になります!」

「別にそんな面白い話でもないんだがなぁ……話が終わったら勉強しろよ?」

(高校2年生の中頃からでいいか)

その頃私にはすごく仲のいい友達がいた。

「おはようミキ」

「おはよ!いや~昨日ね凄い面白い映画見てさ」

彼女の名前はミキという。サバサバとした性格で私はもちろん、男女共に凄く人気があった。

お昼になるといつも2人でこっそり屋上に忍び込んでお昼ご飯を食べていたの。

「ミキ、今日も宮村先輩見える?」

「……うん」

当時彼女はひとつ上の先輩の宮村先輩に好意を寄せていたの。ミキはいつも頼られる方の立場だったからそのことを知ってる私はよく相談に乗ったの。

毎日のように2人で屋上に行き校庭の宮村先輩をミキは眺めていた。

「いつまでも気持ち隠してないでいつかは告白するのよ?」

「うん。だからあなたもいつか作家になるのよ」

いつかは彼女も恋を叶えて、この2人の時間が無くなるのかなって思ってた。

でも考えていたよりもずっと早く終わりを迎えようとしていた。

「………」

「ミキ、今日はどうしたの?さっきから私が喋ってばかりでミキ全然喋ってくれない」

「………ごめんね、何でもないから」

「ミキ!私には嘘つくのやめて!」

いつも私もそして彼女も自分の腹を割って話をしていたからこそ出た言葉だった。

「……ごめんね」

彼女は大粒の涙を流し始めた。

「実は、来月の初めには私転校するの」

「え?」

急に身体の力が抜けていく感じがした。

「そんな!いきなり過ぎるよ!」

彼女の話を聞くと転校の話は随分と前から決まっていてできるだけ引き伸ばしていたという。

「だったら、宮村先輩はどうするのよ!?」

「諦めるしかないよ」

私はミキが中学の頃から宮村先輩のことをずっと好きだからこの高校に追いかけてきたことも知っていたからこそその言葉の重たさが理解出来た。

「そんなのって……あんまりだよ」

その後は2人で昼食も取らずに泣きじゃくっていた。




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