俺なんて異世界来てもこんなもん

弘前平賀

1章 異世界の始まり

プロローグ

 中途半端なんだ。何もかも。

 普通より少しできるくらいでいつも勘違いをする。

 根拠も碌に無く自分は特別だと思い込む。

 半端な才能と運しか持ち合わせていないくせに。


 知ってたんだ。

 自分が凡人であることは。

 目をそらしていたかったんだ。

 自分が凡人であることから。


 きっと俺が必死だったのは、ただ現実から逃げることで、それ以外のことに本気で向き合ったことなんて無かったんだろう。

 いや、それすら本当に必死だったのかもわからない。

 もうわからなくなってしまった。


 わかってるんだ、子供じみているのは。けど受け入れられないんだ。 

 平凡でいること、普通でいること。 

 特別でないと自分に価値がないような気がするんだ。


 何が悪かった?

 もっと早く現実を受け入れられるくらい大人になっていればよかったのか。

 

 絶望と酒のせいか碌に頭が働かない。

 あてもなく歩き続けてどれだけ経っただろう。気づけば、まったく見覚えのない薄暗い道を歩いている。いっそこのまま闇に溶けて消えてしまえたらいいのに。

 消えたいのに自分で死ぬ勇気もない。今までのようにただ、目の前にある流れに身を任せるだけ。我ながら学習能力が無さ過ぎて嫌になる。


 けど今はいい。もう、いいんだ。

 何も考えず、ただこの退廃的な流れのままに進もう。


 どれくらい歩いただろう。もう酒もそこそこ抜けるだけ歩いたはずだが、頭はいまだに重く、まともに働いてくれそうもない。

 視界は靄がかかったようにぼやけていて、体も鉛のように重い。


 ただ、光が見える。

 

 まるでその光に吸い寄せられるように、俺は歩を進めていく。

 だんだん光は大きく、そして眩しくなっていく。

 気づけば、俺の体は光に包まれていた。

 

 そして、意識だけが、闇に包まれて……。

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