#23胡蝶の夢

私は君を否定する。

君は私を否定する。


私には君が必要だった。

君を毀した虚構に、私が壊れてしまった。


真理なんて知りたくなかった。

世界は私を否定する? 君は世界? 世界は君?


――私は。

私は私の夢だったのだろうか。

君の夢だったのだろうか。

それとも、世界の夢……?


私は君だったかもしれない。

君は私だったかも。


或いは。

私は世界で世界は君で、君は世界で私は君で――。


全ては蝶の鱗粉が煌めくように夢想じみている。


そして。


私は君を否定する。

世界はおかしい。私が正しい。


――誰もが正しく在ろうとするのに。

――自らは正しいと断言することはできない。


正しさが異なる故に?

万人に共通する正しさは存在しない?


君は規範。正義の番人たる規律。

――それなら、律法は絶対の正義ではなくなる?


信じていた物語。

考えるほどに揺らいでしまう。


私は君を否定する。

君は私を否定する。


私には君が必要だった。

誰かの悪かもしれない、正しい君を。


夢想の中で形作った、世界。

守り人たる、君。


これは私の夢なのか。

誰の夢なのか。


――私は存在しているのか。


……本当に?



蜘蛛の糸のような真理。


探求者は発見する。

望む物語か望まない物語かは、彼次第。


探求者の手にした真理。



――恐らく、君とは相容れない。

でも、これは諦観じゃない。


私は君と衝突しなければならない。

私の配役は、道化かもしれない。


それでも。

私は、私の存在を、私の世界を信じるために。


――私は、ここにいる。




私は決して正しくなどなかった。


――正しくなかったのなら。


同時に、私は絶対悪でもない。




私は紐を弄ぶ。

君を紐解こうと。


私は、この糸を君たちの細い首に絡めはしない。


……信じて。


この存在を信じようとしているように。



ここが夢であっても――*******************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************************

夢物語は、“自分”でしか作れないから。

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