第26話 ゴルさんとDVD

 スパイ仕事の助手をしている。上司の正しい名称はなく、助手の自分でさえ「ゴルさん」と呼んだ。だって「ボス」なんて似合わなさそうな気の抜けている外観だから。それ以外はきっちりスパイだし、こちらもスパイの助手を務めている。どんな指示も逆らわずに遂行するのが助手の基本中の基本だ。

 仕事が仕事なだけに、逆に狙われることも多く、今日はあやしいDVDが届いた。ゴルさんの指示に従ってディスクを入れたら

 むいーん

 DVD本体の左下部分が顔を出した。出てきた部分を押し戻したら

 むいーん

 上蓋が手前に飛び出してきた。

 上蓋を押し入れると、DVD本体が吐き出された。

 だめだこりゃ。

「ゴルさん」

「なんだ」

「DVD観られないかもしれません」

「…そうか。爆弾が仕掛けられているんだろう」

 このDVD、爆弾なんだ。

「どうしますか」

「なんとか入れろ」

「ラジャ」

 ゴルさんがやってよ、という言葉を飲み込んでDVDを押し込んだら、今度はコンセント部分が出っぱる。順番でもあるのかな。爆弾はやっかいなものだけど、それよりパズルは苦手だ。


 ここで目が覚めた。

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