第17話 旅立ち

 翌日、ゴウが火星に到着した。ゴウは、疲れを見せない。「出発するぞ」と、号令をかけてきた。グリーンは、作戦変更を受けて、すでに帰国の途についている。三人と一台は、赤道オアシスの自由宇宙港に急いだ。そこには、グラッパの連中がいっぱい押しかけていた。

 アウトローたちは、ゴウの仕事が速いことを知っている。帰ってきたのなら出航だと集まってきた。ホーガンは、コモドールファミリーを火星で捕まえられなかった。ナオミやアリスには、何もしていないと涼しい顔をしている。船員のボウイが、「努力を認めてもらいやしょう」と、進言するのに、「そんなカッコ悪いこと出来るか」と、譲らない。ラインは、急に働き者になった。実力の足りなさを痛感したからだ。グワンユウは、昔の覇気を取り戻していた。仕事を依頼したアリスに「断ってもいいのよ。これは、何でも屋の仕事だもの」と、心配されが、「いいんだ」としかいわない。しかしその目は、生き返ったような目をしている。


 みんなが見送りに来る中、三人は足早にスバルに急いだ。ゴウは、三人と一台を見て、なかなか様になってるじゃないかと思った。

「マーク、すまんが2人を頼む」

 そういいながらこそこそマークの傍に来た。そして、「ところでアリスはどこだ」と、耳打ちした。ゴウは、この10日の間にも、一度火星にもどり、再度アリスにアタックして振られている。そのときは、浮遊石で、ぶん投げられていた。

「あの一団の一番後ろです。えーっと、申し訳ないんですが、ゴウさん、ひそひそ話をしても、ナオミに筒ぬけなんで、よろしく」

「ワハハハハハ。いいんだよ。このほうが雰囲気出るだろ。ブロック憶えたのかナオミちゃんワハハハハハ」と、急に態度が、オープンになった。

「そうだ、ナオミが、これもってろ。通信アイテムだ。オレも使える。ケレスに着いたら連絡くれ、オレは、3日ほど先に行っている」

 ゴウは、ナオミに通信アイテムの、ベル2ndを渡した。ケレスではメイムと呼ばれている。

「オリジナルを持っているやつが聞こうと思ったら、通信を傍受できるから、難しい話はするな。いいな」

「了解です」

 ナオミはさっきの会話も聞こえたので、ちょっと嬉しくなった。マークは、ナオミが何時聞いていて、何時聞いていないのか分からないので、何時も通りでいいかと開き直っていた。

 三人がシャトルに乗り込もうとすると、ナオミに声援が飛んだ。

「ナオミちゃーん、無事帰って来いよー」

「何でも屋、やりてー俺らを手伝ってくれー」と、ボウイが本音

「うるせい」と、ホーガンに殴られる。

「せんちょう・・」

「ガハハハハハ俺の話も聞けー」

 どうせオレとおんなじだよと、思うボウイ

「ナオミちゃん、俺等となんでも屋をやろう」

「気をつけろー」と、ラインのクルー、ホセもケレスを知り、真剣に声をかける。ラインは、がっくりうなだれている。

「船長、これからですぜ」

「ヨッシャーおれもがんばるぜ」立ち直りの早い船長さんだ。

 キンダダとアマンダ夫妻もいる。グワンユウは、アリスと一番後ろで見送り、ナオミを一瞥したら、いなくなった。

 ナオミは、手を振って答えた。初めての仕事。未知の宇宙。魔法世界。ナオミはどきどきでいっぱいになった。

 O3Pと名付けたシャトルは、静かに浮き上がり、音もなく空中高く一直線に宇宙を目指す。地上2000メートル付近で、やっとパルスイオンエンジンに火が灯る。そして地上5000メートル。メインエンジンのプラズマエンジンが始動され、7000メートルで、ドオンと急加速した。火星はあっという間に小さな星になった。火星から3万キロにある小惑星に隠していたスバルにシャトルを繋いで、乗り換え、本格的な航海が始まった。スバルのスピ度はどんどん上がり、その加速で、加速重力が艦内を襲う。ナオミは、ある程度、加速Gに慣れようと艦橋で頑張っていたが、無理は禁物と、重力ダンパー室に戻っていった。

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