第40話 酷い1日

世の中の男は、痴女行為に常に気を引き締めている。男が素肌をなるべく隠して袴と羽織で露出を減らすし、襟会わせもなるべく閉める。

周りの女は獣だ。

もし、襟が弛かったり、めんどくさいと袴をつけず、着物のままで表に出たら、岡っ引きに取っ捕まって、説教をされたあげく、職権を使ったエロい取り調べを受ける事になる。


その日は、鉄之助も、うっかり袴をつけず長着に帯を閉めたラフな格好で京都の町中を歩いてしまっていた。

「今日は用事もない。昼は何をたべようかな」

そんな事を考えながら、京都の町中を歩いていると、

「そこのお方。待ちぃな」

不意に目の前に一人の女がを寄ってきた。

年の頃は若い。20よりも下の女性だった。

(うーん。若いね。現代ならJDだよね)

「何ですか?」

「何ですか?やあらへん、何て格好で歩いとるん。そんな助平な格好で歩いて襲われ待ちかいな?」

「別に助平じゃ……」

「十分助平や。胸元も緩いし、袴もはいてへん。さっきから、脚が……脚がチラチラ見えてんねん。誘ってんのかいな?」

女は顔が真っ赤で、鉄之助の足元を脇目にチラチラ見ていた。

「はぁ?勝手に見ているんでしょ!キモい」

「……キモい?」

「気持ち悪いってことですよ」

「なんやて!うちのどこが気持ち悪いねん」

「目線がキモい」

「うっ」

「馴れ馴れしく話しかけてくるのがキモい」

「ぐっ……ううぅ」

相手が鉄之助の口撃を受けて泣き始めた。

「もう近寄ってこないでください」

そこまで言って反対方向へ方向転換したときだ。

「ぁぁぁ!」

後ろの女は、鉄之助を後ろから蹴りつけた。

「うふぉ!」

前に倒れる。その上、女が鉄之助の上に乗り掛かって来た。

「許さへん。うちは善意で注意したったんやどぉ!。それをキモいやとぉ!?いくら男やからって許さへんからな!」

「なにするんですか!」

「お前を捕まえて、説教や!公序良俗に反してる罪でな!」

「嘘ぉ!」

「もう遅いでぇ!腕は縛ったぁ。おらぁ!さっさと立つんや!」

「痛ぁ……」

「お前何て助平なこえで泣いとんねん……!」

鉄之助はただ後ろに手が廻るときに痛くて声をあげただけだった。

しかし、女と周りの女達には違って聞こえた。

「男の声……助平過ぎる……!」

「アカン。股にくるわぁ……」

「確かに、袴も着けんと足首あんなに見せて……あれは男が悪いわ……でも、ええ声してるぅ……」

「これ以上抵抗するなよ。後は見廻り組の詰所できくわ」

(仕方ない。この女よりも、周りがヤバそうだ。従うか)

「わかりました!わかりましたから、お尻押し付けるのやめてください」

最後に軽くやり返す。

「……ウッサイ! 立てや!」

こうして、鉄之助はたまたま警邏をしていた京都見廻り組の女に捕まることになった。


2


京都見廻組は、幕臣によって結成された京都の治安維持組織で構成員は旗本の次女、三女が多いそんなところだった。

(あんなところに、見廻り組がいるなんてきいてないぞ……でも、新撰組に捕まるよりはいいか)

鉄之助はいまは和室に通され、袴を着けて座っていた。

(尋問は庭先とか、拷問部屋につれていかれると思ったんだけど、まぁいいか)

襖の向こうで足音がした。

「京都見廻り組、武居久よ。入っても?」

「いいですよ」

鉄之助が答えると、黒長羽織に黒の着物のロングヘアスタイルの女性が部屋に入ってきた。

「京都見廻り組 武居久と申す。お名前は」

「大室鉄之助です」

「大室殿。そなた、長着だけで通りを歩いておったそうな。まことですかですか?」

「誠です」

「なぜ?」

「気が緩かったんですかね。まぁ大丈夫かなって……」

「そなたのように、太ってもおらず、良いからだの男が、あのような場所で薄着でいるとだな……その大変に危険だと言うことはわかっておるか?」

(ん……? 良いからだって言ったか)

武居久の小言はまだ続く。

「はい」

「よろしい。そなたがあのような薄着で歩く事で、町の公序良俗を乱す事になる」

「すみません」

「まぁ……その……悪気は無かったのだろうしな。今回は多めに見てやろう。しかしだ……なんの罰も与えぬまま返すことはできん」

「罰?」

「そうだ。悪い子にはお仕置きが必要だ。わかるか?」

「百叩きの刑とか?」

「そんなことはせんが。私が動いていいというまで動いてはならぬ」

「はぁ」

「理解したな?では、これから公序良俗をみだした罪でお前の体に罰を与える」

武居は立ち上がり、鉄之助の胸元を持っていた扇子で広げて見せた。

「何をするんですか!」

「騒ぐな。お主の体に恥ずかしい思いをさせて、二度と薄着で出歩かない事を教えるのよ」

着物の襟が乱れて、襦袢が丸見えになった。

「……良い胸だなぁ。乳首が透けているわ……フフ」

グリっ

扇子で乳首が押される。

「……ンっ」

つい声がでてしまった。

「助平な声を出すでないわ……! 」

武居久は今度は襦袢を広げて、鉄之助の胸と脇腹を撫でだした。

「やめてください!」

「まだ罰は終わっていないわ」

(ああ……最高っ。いい腹筋、いいにおい! これはお仕置きよ。いっぱい楽しませて貰うんだから!)

武居の顔は冷たいままだったが、指先は汗ばんで、息が荒くなっている。

「!」

武居の手が袴の横から滑りこんで、鉄之助の棒を撫で回す。

「やめ……!」

さすがにキモいので腰を引くが武居久に組みつかれていてふりほどけない。

「無駄よ。見えるところに跡は残さないわ。袴を着けさせたのは意味があるの」

乳首を指と舌でいじりながら、股間は揉みクチャにされる。

「そんな強くつか……むなぁ」

「動かない事よ?抵抗したら……潰すわ」

顔から血の気が引いた。


3


あのあと十分に玉を握られ脅されたままで体の脇、乳首のほかにも鎖骨、腿、尻など触られまくったあげく袴を着けたままでやっと解放された。

「ひでぇ目にあった……」

レイ○されるのは初めてではないが、ただひたすらに気持ち悪かった。

(護衛はやっぱりいるな)

今日のことは自分のミスだった。あまりにもこの世界を軽く見ていた。その事を再認識させられて暗い気持ちで、宿へとたどりつく。

「鉄さん! どこ行ってたんだい?」

鉄之助を見つけて駆け寄ってきたのは美星だった。

スン……

美星の鼻は、鉄之助の体からする女の匂いにすぐに感ずいた。

良く見ると、着物もよれている。

「鉄さん。まず二階に行こう……」

「はい」

鉄之助は美星に肩を抱かれて二階へと脚を進めていった。


「京都見廻り組……!」

話しを聞いた美星は、いままで見せたこともない怒りを露にしていた。

「確かに、護衛を着けていかなかった、おまけに袴も着けてねぇ鉄さんに非はあるよ。だが!手込めにしたのはがまんならねぇな」

「ええ。気持ち悪かったです。袴を着けて置くべきだった。速く忘れたい」

「ああ……判るよ。今日は疲れたろ?湯屋に行って汚された体をキレイにして寝ちまった方がいい」

「はい」

「悪いが……お玉とロザリィにも話しはさせて貰うよ。鉄さんをまもらにゃあいけねぇ。何、心配しなさんな。鉄さんに手をだしたそのメスは……あたしらがきっちり落とし前を着けてやるさ」

こうして、鉄之助の酷い1日は終わることになった。

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