第49話


「生き物は厄介だな、行動が予測できねー」


 カルダのその言葉は、隼人には痛いほどわかった。

 先ほど、尻尾で不意を突かれ吹き飛ばされたばかりだった。


「ったく、楽にはとはいかねーか」


 カルダは、そう言葉を吐き捨てると、また歩き出すのだった。





 相変わらず彼らは、土の大地を歩いていた。そこには目標物になるようなものも何もなく、ただひたすら歩くしかなかった。


「きりがないな、どこまで行っても土ばかりだ」


 カルダは、何もないその光景にげんなりしていた。何もないと、思考も止まり、考えすら浮かんでこなかった。


「高台でもあれば、周りを見渡せるんだけどね」


「ねーよ、そんなもの」


 すると、相沢は何かを思いついたように手をたたく。


「そうだノーク君、カルダさんに肩車してもらったら?」


「そんなことで……」


「するー、するするー」


 カルダは否定しようとしたけど、ノークの輝くような眼を見て、それを否定するわけにはいかなくなってしまった。

 仕方なくカルダは腰を落とし、ノークを担ぎ上げると、肩車をするのだった。

 その時のノークの楽しそうな顔と言ったらなかった。

 ノークはすっかりはしゃぎ、足をバタバタとさせていた。


「おとなしくしねぇと落とすぞ」


 ノークはカルダのその言葉を聞いているのか聞いていないのか、ほんとに楽しそうだった。

 そして、しばらく経った後だった。


「なんだあれ」


 ノークが前方を指さし、何かを見つけたらしい。


「ん?どうした」


 ノークは、ただ前方を見つめるだけで、それ以上の情報は得られそうになかった。

 仕方なくカルダは、目を凝らして、前方を見据える。

 すると、土が盛り上がり、何かが近づいてきているように見える。


「ソイルワーム」


「まずい、一か所に固まるな!逃げ回れ!」


 その号令に皆が散り散りになり、走り出した時だった。

 そいつは地中から土を巻き上げ、勢いよく飛び出すと、大きな口を広げ、食いつこうとする。

 相沢は間一髪でそれを逃れるのだった。


「立ち止まるな!逃げ回れ!」


 ソイルワームは地中を移動して、突然飛び出すため、予測がつかない。


「このままじゃ体力が持たねぇ」


 カルダは走りながら考える。何か策はないかと、自分が持つのはダガー、隼人の武器は変幻自在と言えど近接用。

 エレガント、それだ。


「相沢!俺がおとりになる、口の中に打ち込め」


 カルダはそう言うと、その場でじっと止まり、神経を研ぎ澄ませる。いつ飛び出してきてもいいように。

 やがて、地を震わせ、それを合図にカルダが飛びのくと、次の瞬間そいつは大口を開けて、姿を現す。

 そして、捕獲に失敗すると、また地中へと帰っていく。


「何してる!相沢!」


「無理よ、照準が合わない」


 ギンッ


 その時だった、後方で、鈍い音が響いたかと思うと、隼人がトンファーをクロスさせ、その大口を防いでいた。


「相沢!急げ!」


 相沢は急いで駆けつけ、隼人の間近に立つと、ソイルワームの口内に近距離射撃をお見舞いする。

 そして、数発打ち込むと、そいつの口の中に火が付き、奇怪な悲鳴を上げると、その場を立ち去って行った。

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