第2章_2 新しい出会い


ノンと再会した


ずっと……会いたいと思う気持ちに支えられて生きてきたような気がする


変わらない笑顔だった


あの頃、彼女の笑顔を守りたいと思った

でも、もう、俺の出る幕はなかった

ノンの穏やかな顔を見て、身体中の力がすーっと抜けていくようだった。


雪に閉ざされた凍りついてた心が溶けていくようだった




彼女との再会を機に俺は以前より、同期や部下とも話すようになってた




「畑野部長、何か変わりましたね」


あっちでも一緒だった部下の武田


「そうかぁ?」


「何かあったんですか?」


「何もねぇよ、それより、昨日の、発注したんだろうな?」


「あー!すいません。すぐ、します。すぐ‼」


「しっかりやれよ。仕事が出来ない男はもてないぞ」


「その辺は大丈夫ですよ。それより、部長の方こそ、結婚とか考えてないんですか?」


コイツ相変わらずずかずか聞いてくんなぁ


「俺はいいんだよ」


「あれですか?忘れられない女がいるとかですか?」


「ごちゃごちゃ、うるさいなぁ」


「やっぱり!俺、勘はするどいんですよね」


「しつこいな、早く電話入れてこい」


「はいっ」



忘れられない女かぁ

確かにいたな


…いた、過去形か


「ふっ」






スポーツブランドは春に新作のショーが開催される


毎年、ショーモデルがステージに立つ


若い男性社員、いやっ、若いやつだけじゃないな、男性社員は皆、鼻の下を伸ばしてる




俺は綺麗に磨かれた女達

プライドが高い女は見てるだけでムカつく


何の興味もなかった




「部長、今年はあの子がトップですよ」


「どうでもいいだろ、きっちり働いてくれりゃあいいんだよ」


武田が言ってたモデル


確かに一際目立つ

ずば抜けてスタイルも良くて美人


でもただ、それだけ


俺には動く人形にしか見えなかった





「望月 理子です。よろしくお願いします」


その人形が挨拶しに来た


「畑野です。こちらこそ、よろしくお願いします」




割りときちんと挨拶出来んだな


その時は、それぐらいにしか思ってなかった



それが…理子との出会い

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