第一話 魔方陣があらぶる

「んあああああああああああああああ!!」


 深夜4時。いやこの時間帯は未明と言うんだったか。

 そんな部屋の中、そんな悲鳴が響きわたった。


「ごめんなさい母上!? こんなダメな娘でごめんなさいいいいいい!!」


 気づけば、消えかけた魔方陣の上にとても可愛いゴスロリ魔王様が居ましたとさ。



 ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇




 俺、琴浦 透馬(ことうら とうま)は必死に頭を捻らせていた。

 どうすればこの可憐な紫色の魔方陣を起動(?)させられるのだろうか。魔方陣の上でダンスでも踊ればいいのだろうか? それとも全裸になり「全裸待機おk! Are you ready? Yeah!」とでも叫べばいいのか? ……こんな変態がするような行為が起動条件だとは思えない。


 この世の中は未知だらけ。

 なぜ魔方陣の作り方がネット上にあるのに起動条件は記載されていないのか。全く持って謎だ。


「もしや……?」


 俺はわかってしまったかもしれない。なぜ起動条件だけが記載されていないか。

 それはつまり「魔方陣は放置していても勝手に起動する」からだ! 嗚呼、ワイ天才かも知らへん。と、Q.E.D.(証明終了)に成功した自分に酔いしれているトウマと魔方陣が起動するのは同じタイミングだった。


 突然、ぎゅいーーーーーーん!!!!! と魔方陣が唸り出す。


「うお!? なにこの怖い音……これはあれか、近年使われるようになった国民に危険を知らすjアラートさんですか!?」


 顔が引きつったまま音の根源を探す。

 見つけた、たぶんこれだ。


 「魔方陣さん……マジですか。嬉しいっすけど、この状況でそれはおいしくないっす」


 少し放っておけば音は鳴りやむか? この考えに行きついたが、いつまで経っても音は鳴りやまない。茫然と立っている事しかできていない。

 さすがに一階の寝室に居る家族たちに気づかれると予想した俺は魔方陣を急いで消しにかかった。


「やばいやばい、さすがにこれはヤバイ……! ていうか魔方陣の起動ってチョークで描いた線を消すだけで止めれんのか!? こんな危険な状況に陥るとかG〇〇gle先生は言ってなかったぞ……!」


 そんな呑気なことを言えるのは今だけだと、これは本当にヤバイと、そう悟り始めるトウマ。


 だが、頭の中ではよくわからない感情が行き来していた。「楽しい」「とても楽しい」「すごく楽しい」決して自分にM属性はないと思っていたがそれは違ったようだ。こんな状況が楽しく感じる……ひさしぶりだこの感じ、これを世間では高潮感というのだろうか。


 そんな感情に感動していた故に、手の作業が止まっていた。意識が現実に戻ってきた時には遅かった。自室の扉の向こう、一階へと続く階段から足音が聞こえてきたのだ。魔方陣の方をチラリと見ると月の光を反射していたはずの魔方陣が自身で光を放っていた、ちなみに音は近所迷惑と騒がれ隣人に文句を言われるレベル。


「…………ッ!?」


 ――――――終わった、完膚なきまでに母に殴られる未来が見える。


 こんな無垢な俺がそんなひどい未来を歩んでもいいのだろうか。アンサー、いいわけないだろう!? 自問自答、俺は再度頭を働かせる。未来を変える方法……それはなんだろうか。


「そんなのあるわけねーだろ死ねよォォ………………ぉ…………お……?」


 気づけば、俺の隣にかわいいかわいい幼女さんが居ました。


「は?」


「え、ちょまっへ……ふぁ…………?」


「おかああああああさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁっぁああああごめんなさいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい! 許してください……なんでもしますからぁ…………!!」


「え? いまなんでもするって……じゃなくて! 君誰!?」


「ひぃ、ひっく……ごめんなちゃい。グスッ」


 魔方陣の上で泣きながら絶叫する幼女……? 状況がわからない、わかりたくもない! そしてもう一つ把握したくないものがあr―――――――――。


「あんた!うるさいわよ!!」


 ガチャ、なんて生易しい開閉音ではなく「ドガチャギギグガァン!」という物騒音をさせながらドアをえげつない速度で開ける母。そしてドアの開閉音よりもひどい怒鳴り声がセットで部屋に響く。そこに俺の言い訳が参戦する、こうかばつぐんを期待してこうげき!!


「まって母さんごめんね俺のパソコンからイヤホンが抜けてたみたいなんだこれは事故! 自己でしたんじゃなくて事故ったの!! ごめん気を付ける!!」


「は、はぁ? 全く気を付けなさいよ……」


 こうかばつぐん。計画通り……ッ! 俺は床にノートパソコンを急遽広げて寝転がりイヤホンを装着して撃退体制に入っていた。母さんは眠気もあったせいか、魔法陣には気づかずすんなり撃退できた。……んで今夜最大の問題は――――――、


「む、ん……ここはどこ…………?」


 こいつである。

 突如、魔法陣の上に召喚されたこのゴスロリ黒髪サイドテールロリータ……変な属性多すぎてまともに目を向けれないでござる……デュフフフ。にしてもいきなりすぎてビックリした。改めて考えてみたんだがこれは異世界転移が目の前で行われた……でいいのか? そもそも異世界から来たのかどうなのか、いやたぶん絶対異世界だこんなこと現実で起きるわけがない。いやここは現実だけど。とりあえず話しかけてみよう、物語の始まりはおしゃべりからだよね!


 そしてトウマは勇気を振り絞り、得体の知れない幼女に話しかけた。


「お、お嬢ちゃん……!ぼぼっぼくとおは、お話しない?」

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