第三章 ミランダ オブ コボルトイェーガー

第1話

 夜明けとともに一行は宿り場を発つと、日が昇り切る前に峠道を抜けていた。

 灌木は次第に背の高い木々に変わり、それも再び疎らになると目の前が大きく開ける。高台から見渡す大地。その大地は赤茶けて見える。

「あれが大砂漠?」

「そうです」

 眺める可彦にネフリティスは頷く。バルゥもその光景に見入っていた。

「さて、ここでお別れじゃな」

 行商人は告げる。道は二つに分かれていた。

 ひとつは山を下る道。

 もうひとつは再び山へと向かう道。

 可彦たちは山を下る道へ、行商人は山へと向かう道へ。

「ではな」

 行商人はそう告げると道を登っていく。

 可彦たちも道を下り始める。

「あっ」

「どうしました?」

「名前聞いてないや」

「そういえばそうですね」

 可彦と共にネフリティスも振り返る。しかし行商人の姿はすでに見えなかった。

「まぁまた逢うこともあるでしょう」

「そうだね」

「ナニシテル! 早クイクゾ!」

 先を歩くバルゥが振り返ると呼び声を上げる。ふたりは再び道を下り始めた。

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