第16話
美優が力なくうなだれると、先生は明るい声で励ました。
「鈴木さん、自信を持ちなさい。あなたはAクラスなんだよ。内緒だけどね、ここではAクラスの子って少ないの。みんなトーキョーに行っちゃうからね。・・・だから逆に言えば、もし鈴木さんがここに残ってくれれば特別待遇だよ」
「中学、すごく楽しいって言ってくれたよね。いじめも何もないって。先生ね、県内なら高校の先生にも知り合いがいっぱいいるの。ここならいつでも助けてあげられる。絶対鈴木さんがご家族の事でからかわれないように全力でサポートするよ。お母さんが来るのが嫌なら、先生が体育祭でも文化祭でも応援に行くよ」
美優は前のめりになった先生から少し後ろへ身体を引いた。
違う。いじめなんて考えた事もなかった。家族の中で自分一人だけが美しくなくて、それがコンプレックスだったのだ。こんな個人的な事、わざわざ友達に言う事もない。写真や家族の顔さえ見られなければ似てるも似てないもそもそもばれやしない。大体家族間が似ていなくてからかわれるなんて事は高校では__。
「それに、」
考え事をしていた美優の思考は、少し声をひそめた先生によって遮られた。
「さっきの話ね、しばらく考えてもらって。でも、どうしても鈴木さんの気が晴れないと言うのなら、先生、DNA鑑定代わりに申請してあげるよ。もちろんお父さん達には言わないよ、約束する。・・・大丈夫だとは思うけど、万一の結果が出たら、カウンセラーでも何でも呼ぶし、先生もいつまでもサポートする。いつでも先生は鈴木さんの味方だから。二人だけの秘密にしようね」
いぶかしげに話を聞いていた美優の表情がみるみる凍り付いてゆく。姉が言っていた。この先生は苦手だったと。トーキョーに進学すると分かった途端冷たくなったからだと。あの時は姉が神経質な性格であるだけで、気にするほどの事でもないと笑い飛ばしたのに。自分は間違ってしまったのか。もしかすると一番相談をしてはいけない相手にしてしまったのか。
だからさ、と先生が明るい声で続ける。
「残留の事、前向きに考えてくれると先生すごく嬉しいなあ」
全く邪気のない顔でにっこり笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます