第6話

美優の世代の子供達はすごく恵まれているらしい。母親いわく、自分達の時は大人は何も助けてはくれなかった、と。行き過ぎは駄目だけれど、部活で体罰は多少はあったし、学校では先生が絶対的存在で、保護者が教育方針に文句を言うなんて事も滅多になかった。大学の卒業式は母親しか来ない事が普通だったし、就職では学生課は頼りにならず「資料を見て自分で探して」なんて当たり前のように言われ放置された、と。それに比べると今は体罰なんてあれば親が黙っちゃいないし、教育方針にも保護者達はすぐに文句を言う。大学の卒業式は夫婦出席が今や主流で、就活生の保護者向け就職活動セミナーに親が殺到する、そうだ。

母親のお説教はいつも美優の耳を通り抜ける。恵まれていると言われても、私達子供がそうしてくれと頼んだわけではない。母親の子供時代に生きていなかった(姉と冗談で、その時は天国から下界を見てたよねとかある意味死んでたよねと言い合う)ので比べようも分かりようもない。

ただ、言われて見れば、「学校の先生」に母親が言うような怖い大人がいた覚えがない。現在通う中学校の先生達だって、皆すごく優しい。いじめがないよう何かと気を使ってくれて、交友関係がうまくいかないようになればクラスを別にまでしてくれるし、三年生からは進路相談にもしょっちゅう乗ってくれる。タメ口で話しても怒られないし大人の友人ができたみたいで嬉しい。

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