第42話 辞めようと思ったけど

40歳になったので、格闘技は辞めようと思いましたが、イキの良い子が入って来たんですよ。


何故かいつもワールドプロ・レスリングのTシャツを着て練習してる高校生の子で、プロになりたい!と言うので、できる事から教えています。


マススパーが途中にから何故かプロ・レスになったりしますが、わたし怒らない人なんで、いつもプロ・レス技をかけられています。

モチロン分かる範囲内で、相手の持ち上げ方とか教えています。

プロ・レス技だってなんかの時に役立つ時が来るからです。

私に対してだけ力比べやビンタ合戦とか仕掛けてくるのですが、もう休日のお父さん状態で付き合います。


普通この位の歳の子は遊んじゃうので、ジムにはあんまりこ来なかったりするのですが、この子はちゃんと毎日ジムに来て、しかも首相撲の練習をお願いしてくるので、そら胸を貸しちゃいます。

おぢさん嬉しいよ。


ふざけて遊んでるフリしながら、ちゃんと足腰の鍛練とかやるように仕向けています。


趣味でやってるような、目新しいムエタイ技にしか興味を示さない他の奴には絶対教えないのですが、採点ルールに則った試合技術や、リング・ゼネラルシップの事とか、自分のおかれた状況をどうやって把握するかとか、諦めないこと、根性の事、精神状態のコントロールとか、経験に基づいたノウハウを、ソフトにソフトに教え込んでいます。

ガチンコのド付き合いは、優れた手足の振り回し方、技術だけで勝ち残れる話ではないので。

会長がこの子は任せた!と言って私の教え方に何も注文つけてこないので、まぁ承認されているんでしょう。


この子のおかげで、私ももう少しだけ格闘技を続けてみようと思ったので、辞めるのはやめました。

だから、私はこのプロ・レスマニアの子に感謝しておるところです。




補足。

なので、私に敵対的な態度を取る評論家気取りのオッサンが泣きそうな顔をしています(▼∀▼)

こういうのはね、本気で悔しい思いやイテー思いを味わう事から逃げ回ってるうちに年老いてしまった、はじめの一歩が大好きなアホに教えられる事じゃないのです(▼∀▼)

「教える」ってのは、どんなに惨めな思いをしても諦めなかった奴の特権なのです(▼∀▼)ケケケ


私は善意の連鎖を起こしたいと思っています。

それが私の格闘技における最後の挑戦です。

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