第7話 僕は小心者

私は小心者です。

気性が荒くて好戦的ですが、小心者です。


具体的に言うと、私はヒゲと腕の太いやつを見るとビビります。

「ダメだ。絶対勝てない」とか勝手に心の中で思い込みます。

実際やってみると、別にそれほどでもなかったりしますが、

それでも、あの先入観による心理的圧迫感は相当なものです。


あと、初めてプロテストを受けた時ですね。

けっこう練習しましたよ。キックボクシングが嫌いになるくらい、

ジム行きたくないな、練習したくないなと思うくらいにはチョロっとしました。

そこまでやると、最初は恐れと不安でいっぱいだった心が

ワイはやったる!誰が相手でもかかってこんかい!

みたいな気持ちになります。

一時の感情に過ぎませんが。


そんで、試験会場に行って計量の時にあの分銅を使用するプロ仕様の体重計に乗った時に、

緊張のあまり、目眩がして頭がぐわんぐゎんして、世界が揺れてました。

マジで倒れそうでした。

計量はパスしたものの、

張り切ってバンタム級リミット53.52kgを大幅に下回る52.5kgまで落としていました。

家のヘルスメーターが正確ではなかったので、

少し余分に体重を落としたつもりだったのですけど、いくら何でも落とし過ぎですね。

ちょっと反省しました。


その初回のプロテストは不合格でした。


2回目のプロテストの時です。

やる前に、いちおうは医師による健康チェックみたいなのがあります。

で、医師を前にして、わたくしとても緊張していまして脈拍が異常な数値を示しております。

医者が明らかに怪訝な顔付きになり、私もヤバイと思ったのですが、

どこだかのジムの会長さんが

「ちょっとドキドキしてるだけだよね!大丈夫!緊張するのはみんな同じだからさ!」

とか助け舟を入れてくれて、なんとか私は健康診断をパスしました。


周りの受験生たちは皆平然としており、そんなのは私一人だけでした。

とても恥ずかしかったのを覚えています。


リングに上がって相手と向き合い、相手と目を合わせる瞬間まで

私は恐れを断ち切ることができません。

試合前はみんな怖いんだよ、と先輩に諭されましたが、まぁそうでしょうね。

そうやって男は成長していくもんです。

 


ところで。

最近、関西の方でとあるキックボクシングジムの会長が

監禁暴行・殺人事件に関わって逮捕され、保釈後自殺したというニュースを見ましたが、

14年くらい前にバンコクのイングラムジムにいたアイツですよね?


私の住む地方のキックボクシングジムの会長連中を見てるとマトモな社会性を持った奴はほとんどいないと第4話で書きましたが、

この業界が、ああいう連中を平然とノサばらせて放置している現状を見ている者としては、

こういう事件が起こるのは時間の問題だとは思っていました。

この事件は起こるべくして起こったものです。

「聖職者」というアレが、危ノーマルな変態野郎の隠れ蓑になっているみたいなものです。


キックボクシングは大好きなんですけどね、

関わってる人間はやっぱりおかしい奴が多いです。

私もそのおかしい奴の一人かもしれませんが。

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