これは信号待ちをしているだけのお話。

いつものように、遅刻ギリギリで学校の目の前の信号を待つ。

今日もやっちゃった。遅刻ギリギリ。てか、信号のせいでこれは遅刻決定だわ。

あーーーー行く気なくした。

帰ろうかな。


「帰るなこら。」

「……げ。」


帰ろうと後ろを向くと、私の真後ろにたっていた男の人に声をかけられた。

性格には、もう三十路の独身彼女なしのうちの担任、谷山先生。

通称たにやん。


「たにやんも遅刻ー?」

「なわけあるか。生徒指導だ。」


なるほど。

生徒指導か。大変だなぁ。

きっと遅刻しかけてる人とかを捕まえるのかな。

私には関係ないね。


「まてまてまてまて。何帰ろうとしてんだお前がいちばんの対象だからな。」


頭掴まれた。

セクハラだ。


「たにやんそれセクハラ。」

「頭掴んだだけだろーが。」

「相手が嫌がったらセクハラなんだよ。」


ってどこかで聞いたことがある気がする。

たぶんだけど。

……まぁ、別にそんなに嫌な訳では無いけど。


「ったくよぉ……。ほら、学校行くぞ。」

「まだ信号赤だし。」

「なげえなここの信号。」

「交通量多いから。」


キーンコーンカーンコーン


あ。チャイムなった。

あーあ、一時限目始まっちゃった。


「げ。遅刻じゃねーか。俺もお前も。」


はぁ。また遅刻。

そろそろこの授業単位落としそう。


「……あ。お前のクラス授業変更て一時限目俺だわ。」

「……先生遅刻とかどーなの。」


でもまぁラッキーかな。

たにやんも遅刻なら私の単位も大丈夫でしょ。


「つか授業変更忘れてたな。昨日まで覚えてたのに。朝生徒指導頼むなよ……あのクソハゲ……」

「……わー、学年担の悪口だー。」

「うるせー、内緒だぞ。」

「……口止め料。」


何かくれないかな。お腹すいたし。

手を差し出してみるも、流石に持ってないかな~。


「ほれ。飴。」

「……なんで持ってんの。」

「腹減るだろ?基本常備してんの。」

「いちごみるく……。きも……。」

「おいこら文句言うなら返せ。」

「もうお口の中」


……これ好きなんだよね。

優しいいちごみるくの味。

たにやんがこんなの持ってるとか意外だわ。


「あ、やっと信号変わった」

「ほれ行くぞ。」

「んー……。」


たにやんが一緒なら、行ってもいいかな。

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