信じる気持ち。

※※ 死ネタです。刑事ものです。











「容疑者は……、お前の、同僚だ……。」


とある事件が起きた。

刑事殺し。かなり悪い意味で有名な刑事が昨晩未明に殺されたらしい。

その日はいつもいるはずの同僚がいなくて、違和感を覚えていた。

そしたら、1課の人間がいうには、刑事殺しの犯人は、同僚だというのだ。


「……は?……何言ってんだよ。あいつが、あいつがするわけないだろ……?」

「目撃証言があるんだ。死亡推定時刻に、あいつが害者の部屋に入っていくところをみたってやつが。」


嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ。

気づけばそう叫んでいた。


「今すぐに現場に連れていけ。俺が、あいつの、無実を証明する。」


現場にすぐに向かい、証拠を、あいつが無実だという証拠を探した。

でも、出てくる証拠は、全てあいつがやったと証言するものばかり。

無実の証明ではなく、有罪の証明になるような証拠ばかり。


とりあえず、面会しよう。

頼み込めば、許可がもらえた。

何日頭に見たアイツは少しやつれていた。連日の取り調べで疲れているのだろう。


「先輩……。」

「大丈夫か?……なわけないか。」

「……俺は、やってないです。」

「わかっえる。だから、証拠を探してる。……あの日のことを、俺にも教えてくれ。」


話によると、呼び出されて話をして帰った。それだけらしい。

何の話かは教えてくれなかったが。


「……ありがとう。もう少し、探してみる。」

「お願い、します……。」


面会を終え部屋を出る。

胸が痛い。

いくら探しても、出てくる証拠は、有罪を決定するものばかり。

むしろ、どんどん色濃くなっていく。

どうして、どうして……。



数日後、また面会に訪れる。


「おつかれさま。」

「……お疲れ様です。どうですか?捜査の方は。」

「………………なぁ、お前さん、本当に、やってないんだよな?」

「……先輩まで、俺を疑うんですか?」

「違う!!そういうわけじゃない!!ただ……、調べても調べても、お前が殺したっていう証拠しか、出てこないんだよ……。」

「そんな……、そんなわけないです!!!!!俺があの人を殺すわけがない!!!そんな理由どこにもないんですよ!!!信じてくださいよ!!!先輩!!!!!!」

「信じてる!!!!!!信じてるさ!!!!!だけどっ……!…………またくる。」


俺は信じている。

あいつはやってない。そんなことするやつじゃないと。




数日後、あいつが留置所の中で自殺したと聞いた。

そばには遺書があったそうだ。


『先輩に、信じてもらえないのがつらいです。』


ただ一言、そう書いてあったそうだ。



その何日かあとに、真犯人が捕まった。

あいつは、犯人じゃなかった。



「ごめんっ……ごめんょぉ……っ、犯人、俺の手で、つかまえられなくて……。お前のっ、無実を、証明できなくてっ……。」

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