第16話

そのとき、1人の女が屋敷の中から姿を現した。

おぼつかない足取り。


その場にいた誰もが、嫌な予感を感じていたかもしれない。



「貴方が赤鬼だったのね…殺してやる!!」




そう言って鋭利な刃物を持ち、私の元へ飛びかかってきた女がいた。


着物は側の女房よりも綺麗。

もしかすると彼女は藤原の姫かもしれない。


しかし突然のことに、女房が止めに入るが間に合わ無かった。


そのまま勢いよくお腹を刺され、血が服に滲み出す。

私は彼女を抑えつつも、脚から地面へ崩れ落ちた。



「落ち着いて…っ」


「よくも私の顔を!!」




酷く興奮する女性。


私は薄れる意識の中で、彼女の顔を見た。

前髪で隠れていたが、右上のおでこの部分が赤く、爛れていた。



「よくも私の……!! 私の……!!」



私は最後の力を振り絞って、彼女の頬を撫でて声を出した。



「貴女は…充分…綺麗、ですよ……」




今日はなんて…ついてない日なんだよ。

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