Tale3.メアリーとこわい夢

 もう大丈夫かい、メアリー?

 メアリーにそう訊くおじさんの顔は、とても心配そうです。そんなおじさんを安心させたくて、メアリーは頷きます。


 メアリーは、たまに怖い夢を見ます。

 今日も、その夢を見てしまったのです。あんまり怖かったから、せっかく温かいベッドで眠っていたのに起き出して、泣き出してしまいました。その声を聞きつけて、おじさんも駆けつけてきます。

 そして、メアリーに何があったのかすぐにわかってしまうのです。


 大丈夫かい、メアリー?


 泣き続けているメアリーに、おじさんはいつもそう訊きます。けれど、怖い夢を見てしまった後のメアリーには答えられません。

 それどころか、駆けつけてくれたおじさんが凄く怖い人に見えてしまいます。


 いやだ、こわいっ!

 おうちに帰りたい!


 そう叫んで泣いてしまうメアリーを、おじさんはいつも慰めてくれます。メアリーを泣き止ませようとしているときのおじさんは、いつもの優しくてニコニコしたおじさんではありません。一生懸命、力強く、メアリーが泣き止むまでずっと、ずっと、何度でも。

 ずっとメアリーの傍にいて、メアリーを慰めようと頑張ってくれるのです。


 泣いているうちに、どんどん息が苦しくなっていって。

 そうやってメアリーが泣くのをやめると、おじさんはまた優しい顔に戻って笑いかけてくれます。


 もう大丈夫かい、メアリー?


 メアリーは、おじさんに安心してほしいから頷きます。そうすると、おじさんはやっと安心した顔になって、笑いながらメアリーを抱きしめてくれるのです。おでこにかいた汗が寒い夜でもどこか温かくて、メアリーはちょっと安心します。

 おじさんは、そんなメアリーに囁きます。


 よかったよ、メアリー。

 ありがとう、メアリー。

 大丈夫だよ、メアリー。

 悪い夢なんて、忘れて。

 楽しく一緒に暮らそう。

 大好きだよ、メアリー。


 おじさんの優しい声と言葉で、メアリーの心はいっぱいになります。もう怖い夢なんて見そうにありません。それでも、おじさんはメアリーがまた怖い夢を見ないようにと一緒のベッドに入って、ぎゅっ、と抱きしめてくれるのです。

 耳元に、温かい息がかかって、それと一緒に、眠る前に一緒に食べたケーキの甘い匂いがします。


 おやすみ、メアリー。

 また明日、メアリー。


 メアリーも、そんなおじさんにおやすみを言って、また眠ります。

 今度は、おじさんみたいに優しい夢を見たいな。

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